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ローザ姫救出編

第109話 勇者お姫様抱っこする

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 カスカベの宿屋で、お姫様の威厳を取り戻したローザ。
 このままお城に凱旋すれば、大盛り上がり間違いなし。
 なのにローザもユミコも、動こうとはしない。


「あのねユウタ。こういう時は、お姫様をだっこするものでしょ。」
「はあ?」
 なんかユミコが、俺をマナー知らずなヤツだと言ってくる。
「いやいや、もうくじいた足も、治ってんだろ?
 なんでだっこするんだよ。」

 ローザを海底洞窟からだっこしてきたのは、ローザが足をくじいたからだ。
 なんでまただっこするんだよ?

「ごめんなさい、ローザ。ユウタが常識知らずで。」
 なぜかユミコが、ローザに謝っている。
 ほんと、意味分からん。
 ここ最近のユミコとローザの行動は、俺の理解を超えている。

「ひ、姫である私が、のこのこ歩いて行ける訳ないだろう。
 ここは、勇者であるおまえが、私を、だ、だっこするのが常識だろう。」
 照れながら言ってくるローザが、かわいすぎる。
「わ、分かったよ!」
「きゃ。」
 俺はちょっと乱暴に、ローザをだきあげる。

「な、何してるのよ、ユウタ。」
「何って、だっこだけど?」
 ローザをだっこしろって言うからだっこしたのに、なぜかユミコが文句言ってくる。

「普通はお姫様抱っこでしょ。」
「はあ?」
「わ、私もドラゴンさんのかたきのおまえに、お、お姫様抱っこなんてされたくない。
 で、でも、仕方ないだろ。」
 顔を赤らめるローザが、かわいすぎる!

 おかしい。
 なぜローザの一挙手一投足に、ドギマギさせられるんだ?
 俺はロリコンじゃない。
 やはりユミコの仕業か?
 俺に魅了呪文でもかけやがったのか?

 俺がユミコに視線を向けると、ユミコはニヤりとほくそえむ。
 やっぱりユミコの仕業か!何考えてんだよ、こいつ!

「な、何をしている。は、早くお姫様抱っこを、し、しないか。」
「あ、うん。」
 ローザに急かされ、俺はお姫様抱っこする。
 顔を赤らめたローザは、俺の視線を避けるように、俺の胸に顔を埋める。
 くそ、ユミコの魅了呪文のせいだとしても、かわいすぎる!

「はあ、やっとオオミヤ城に行けるわね。」
 なぜかユミコがため息をつく。
 いやいや、ため息つきたいのは、こっちだよ。

「夕べはお楽しみでしたね。」
 宿屋をチェックアウトしようとしたら、宿屋の亭主が言ってきた。
 はあ?何も楽しめなかったんだが?

「おい。」
 俺が文句を言う前に、ローザが亭主をにらむ。
「変な事を言いふらしてみろ。
 そんな事したら、オオミヤ城主の名の下、おまえを死罪に処す。」
「ひい、お、お許しください。」
 ローザの言葉に、亭主は震え上がる。

 ローザの物騒な発言も、なぜか胸のすく思いだった。
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