上 下
106 / 221
ローザ姫救出編

第106話 勇者姫の匂いをかぐ

しおりを挟む
 海底洞窟でドラゴンを倒した後、その場でグダってしまったが、ようやく動く事が出来た。


 俺はローザをだっこしたまま、海底洞窟をぬける。
 海底洞窟内では、魔物に遭遇する事はなかった。

「くくく、いよいよだわ。
 魔物との戦闘で、私が邪魔して殺してあげるわ。覚悟なさい。」
 ローザは小声でつぶやく。
 俺に聞かれてないと思ってるので、俺はあえて突っ込まない。
 俺が死んでも、勇者専用の転移蘇生の儀式だかで、俺は甦る事を知らんのか?
 その場合、残されたローザは、どうなるのだろう?

 まあいっか。
「ホーリーバリア。」
 俺は破邪呪文を唱える。
 これで俺よりレベルの低い魔物は、襲ってはこれない。
 俺はそのまま、オオミヤ城を目指す。

 一般の成人男性は、一時間で四キロは歩くと言う。
 だがレベルの上がった今の俺は、同じ時間でその五倍は歩ける。
 しかし、今はローザをだっこしている。
 いつものように歩く訳にもいかない。

「おかしい。なんで魔物が襲ってこないの?」
 オオミヤ城が近づくにつれ、ローザは焦りだす。
「ああ、安全に帰れて、よかったな。ローザ。」
 俺はローザに笑顔を向ける。
「そ、そうね。ユウタ。」
 ローザも愛想笑いを浮かべ、俺に答える。

 ローザは破邪呪文を知らんのか?
 まあ、ここら辺の魔物相手なら、ローザをだっこしたままでも、軽く蹴散らせるが。

「お、見えてきたぞ。オオミヤ城。」
「ま、待ってユウタ。」
 オオミヤ城に向かう俺の足を、ローザが止める。

 たくぅ、ここら辺の魔物が、俺を倒せるとでも思ってるのか?

「こ、このままお城に帰ったら、ローザ姫は汚くて臭いって噂されるわ。」
「そうか?」くんくん。
 俺はローザの匂いをかいでみる。

「きゃ、いきなり何するのよ、ユウタのえっちぃ。」
「な、何やってるのよ、ユウタ。」
 俺はローザに嫌がられ、ユミコに注意される。

「いや、別に臭くないけど。」
 俺は責められるのは心外だ。

「はあ、ユウタがお風呂に入ったのって、何日前よ。」
 なぜかユミコが、ため息混じりに尋ねてくる。

「そういや、いつ以来だ?」
 確かチチブに行く前にレベル上げしてたけど、その時に宿屋に泊まって以来だよな。
 あれ?
 三十話近く、風呂に入ってないのか?

 俺が狼狽するのに、ユミコは気づいたようだ。

「はあ、つまりユウタは臭いって事。
 臭いユウタの鼻では、匂いなんて分からないものよ。」
「そ、そうなのか。」
 ユミコの言葉に、俺は少なからずショックを受ける。
 それはローザも同じらしい。

「そんな。私は臭いユウタにしがみついてるって事なの?
 汚された。ドラゴンさんのかたきであるこいつに。
 こいつは絶対殺す。私の生涯をかけても、絶対殺してやる。」

 ローザは俺にしがみついたまま、ぶつくさ言ってる。
 とりあえず聞かなかった事にして、カスカベの街の宿屋に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約していないのに婚約破棄された私のその後

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「アドリエンヌ・カントルーブ伯爵令嬢! 突然ですまないが、婚約を解消していただきたい! 何故なら俺は……男が好きなんだぁああああああ‼」  ルヴェシウス侯爵家のパーティーで、アドリーヌ・カンブリーヴ伯爵令嬢は、突然別人の名前で婚約破棄を宣言され、とんでもないカミングアウトをされた。  勘違いで婚約破棄を宣言してきたのは、ルヴェシウス侯爵家の嫡男フェヴァン。  そのあと、フェヴァンとルヴェシウス侯爵夫妻から丁重に詫びを受けてその日は家に帰ったものの、どうやら、パーティーでの婚約破棄騒動は瞬く間に社交界の噂になってしまったらしい。  一夜明けて、アドリーヌには「男に負けた伯爵令嬢」というとんでもない異名がくっついていた。  頭を抱えるものの、平平凡凡な伯爵家の次女に良縁が来るはずもなく……。  このままだったら嫁かず後家か修道女か、はたまた年の離れた男寡の後妻に収まるのが関の山だろうと諦めていたので、噂が鎮まるまで領地でのんびりと暮らそうかと荷物をまとめていたら、数日後、婚約破棄宣言をしてくれた元凶フェヴァンがやった来た。  そして「結婚してください」とプロポーズ。どうやら彼は、アドリーヌにおかしな噂が経ってしまったことへの責任を感じており、本当の婚約者との婚約破棄がまとまった直後にアドリーヌの元にやって来たらしい。 「わたし、責任と結婚はしません」  アドリーヌはきっぱりと断るも、フェヴァンは諦めてくれなくて……。  

鈴蘭の魔女の代替り

拝詩ルルー
ファンタジー
⭐︎旧タイトル:レイの異世界管理者生活 〜チート魔女になったので、この世界を思いっきり堪能する所存です〜 「あなたには私の世界に来て、私の代わりに管理者をやってもらいたいの」 鈴蘭の魔女リリスに誘われ、レイが召喚された異世界は、不思議で美しい世界だった。 大樹ユグドラを世界の中心に抱き、人間だけでなく、エルフやドワーフ、妖精や精霊、魔物など不思議な生き物たちが生きる世界。 この世界は、個人が人生を思い思いに自由に過ごして全うする「プレイヤー」と、愛をもって世界システムを管理・運営していく「管理者」の二つに分かれた世界だった。 リリスに子供の姿に戻されたレイは、管理者の一員となって、世界の運営に携わっていく。 おとぎ話のような世界の中で、時に旅しては世界の美しさに感動し、世界の不思議に触れては驚かされ、時に任務や管理者の不条理に悩み、周りの優しさに助けられる……レイと仲間達が少しずつ成長してく物語。 ※ストーリーはコツコツ、マイペース進行です。 ※主人公成長中のため、恋愛パートは気長にお待ちくださいm(_ _)m

私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど
恋愛
ずっと腹違いの妹の方を優遇されて、生きてきた公爵令嬢セシリア。 正直不満はあるものの、もうすぐ結婚して家を出るということもあり、耐えていた。 でも、ある日…… 「お前の人生を妹に譲ってくれないか?」 と、両親に言われて? 当然セシリアは反発するが、無理やり体を押さえつけられ────妹と中身を入れ替えられてしまった! この仕打ちには、さすがのセシリアも激怒! でも、自分の話を信じてくれる者は居らず……何も出来ない。 そして、とうとう……自分に成り代わった妹が結婚準備のため、婚約者の家へ行ってしまった。 ────嗚呼、もう終わりだ……。 セシリアは全てに絶望し、希望を失うものの……数日後、婚約者のヴィンセントがこっそり屋敷を訪ねてきて? 「あぁ、やっぱり────君がセシリアなんだね。会いたかったよ」 一瞬で正体を見抜いたヴィンセントに、セシリアは動揺。 でも、凄く嬉しかった。 その後、セシリアは全ての事情を説明し、状況打破の協力を要請。 もちろん、ヴィンセントは快諾。 「僕の全ては君のためにあるんだから、遠慮せず使ってよ」 セシリアのことを誰よりも愛しているヴィンセントは、彼女のため舞台を整える。 ────セシリアをこんな目に遭わせた者達は地獄へ落とす、と胸に決めて。 これは姉妹の入れ替わりから始まる、報復と破滅の物語。 ■小説家になろう様にて、先行公開中■ ■2024/01/30 タイトル変更しました■ →旧タイトル:偽物に騙されないでください。本物は私です

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

転生悪役令息、雌落ちエンドを回避したら溺愛された?!~執着系義兄は特に重症です~悪役令息脱出奮闘記

めがねあざらし
BL
BLゲーム『ノエル』。 美麗なスチルと演技力抜群な声優陣で人気のゲームである。 そしてなんの因果かそんなゲームの中に悪役令息リアムとして転生してしまった、主人公の『俺』。 右を向いても左を向いても行き着く先は雌落ちエンド。 果たしてこの絶望的なエンドフラグを回避できるのか──……?! ※タイトル変更(2024/11/15)

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

処理中です...