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名所を巡ろう~虹の架け橋から神帝のほこらへ

第60話 勇者己れの非力を呪う

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 神帝のほこらにて、魔王六魔将のひとり、影の騎士を倒した俺。
 ユミコの強化呪文のおかげだ。
 そんなユミコは、ドラゴンと化してゴーストアリンバと戦っている。


「ユミコ!」
 ユミコがその姿を見られたくないと分かってても、俺はユミコの名を叫んでしまう。
 ユミコはゴーストアリンバを殺さないよう、手加減しているのが分かる。
 対してゴーストアリンバは全力全開。
 これではユミコの身体が保たない!

 徐々に弱ってく、ドラゴンのユミコ。
 そう言えば、聞いた事がある。
 伝説の竜化呪文には、致命的な弱点がある事を。
 それは、戦闘が終わるまで、竜化が解けない事。
 そして呪文はいっさい使えなくなる。
 このままだとユミコは、衰弱死してまう!

「ユミコ逃げろ!」
 俺は対ゴーストアリンバ戦に参戦する!
「下がりなさい、ユウタ!」
 ユミコは尻尾を振って俺をふっ飛ばす。
 ユミコが俺にかけた強化呪文は、すでに解けている。
 今の俺では、ゴーストアリンバとは戦えない!

「ちっくしょー!」
 俺は、今ほど俺の非力さを呪った事はない!
 目の前でユミコが死んでいくのを、ただ見ている事しか出来ない!

 くそ。動けよ、俺の身体!
「ヒーリング!」
 俺は思わず回復呪文を唱える。

 そうだ、忘れてたぜ。
 最近回復呪文はユミコに唱えてもらってて、俺自身使う機会が無かったから。
 体力を回復させた俺はユミコに近づき、唱え続ける。
「ヒーリング!
 ヒーリング!
 ヒーリング!」

 しかし、俺のマジックパワーは少ない。
「ヒーリング!
 ヒーリング!
 ヒーリング!」
 マジックパワーのこもらない呪文は、ただの叫び声でしかない。

 こうなったらやくそうの出番だが、今のユミコにやくそうを使うには、口の位置が高すぎる。
 格ゲーキャラでない限り、ジャンプしても届かない。

 俺は騎神のいななきを手に持って、振り回す。
 これがアリンバ関連で、何か役に立つ気がする。
 でも、使い方がわからない!

「ちっくしょー!
 出てこい、サタンマリリン!
 アリンバを元に戻せぇ!」

「ち、このタイミングだと、出ずらいじゃねーか。」
「え?」

 俺の無念の叫びに呼応するかの様に、誰かの声がする。
 ユミコの斜め上の空間が、パリンと音を立てて割れる。
 時空の裂け目に、ひとりの女性が立っている。

 紫色した髪は、軽くウエーブしている。
 両サイドに羽飾りのある兜をかぶり、剣と盾を持っている。
 赤いブーツと赤い手袋を身につけて、両肩の肩パットも赤い。
 そしてこの女性、なぜか赤いビキニ姿だった!
 なんてハレンチな格好してるんだ!

「アケミ?」
 その女性を見て、ドラゴン姿のユミコがつぶやく。
「久しぶりだな、ユミコ。」

 アケミって確か、ユミコと一緒に勇者ウラワと旅した人だよね?
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