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名所を巡ろう~虹の架け橋から神帝のほこらへ

第53話 勇者六魔将から逃げる

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 昔、勇者ウラワが虹の橋をかけたと言う岬で、魔王六魔将のひとり、だいまどうのスズキくんに出くわしてしまった。
 レベル差のありすぎる相手に、俺は逃げれる気がしない。


「ユウタ、逃げるわよ!」
「分かった!」

 海底洞窟で、俺はドラゴンに殺された。
 また死ぬのは、まっぴらだ。
 男ならここで、逃げの一手だ。
 女にはそんな事は、出来はしないだろうが。
 戦闘の間合いに入っていない今なら、逃げられるはず。

 しかし俺は、こけてしまった。
「な、何やってんのよ、ユウタ!」
「くそ。」

 そうは言うが、ユミコさん。
 レベル差がありすぎる相手からは、逃げずらいって。

「いいわ、呪文で逃げましょう。
 トラベル!」
 ユミコは転移呪文を唱えた。
 しかし、何も起きなかった。

 ユミコは戸惑う。
「くくくく、無駄ですよ、お嬢さん。
 魔法封じの結界を、張らせてもらいましたよ。」
 とだいまどうのスズキくんは、ニヤける。

 ハッとしてユミコは、辺りを見渡す。
 俺たちの周りには、スズキくんと同型の魔物が、数体いた。
 どこから出てきたのかは知らんが、おそらくスズキくんと同じく、石像が実体化したのだろう。

 チビデブな体格なこいつらは、スズキくんと同じ、黄色い布をまとっている。
 だけどスズキくんみたいな清潔感は、皆無だった。
 そこが六魔将とやらとの、違いか。
 って、よく見ると、赤い布をまとったヤツもいるな。

「くくくく、お嬢さん、あの世でカトウサに、恨み言のひとつでも言ってやりな。」
 とスズキくんは、にじり寄ってくる。
「く、これくらいの結界、上位の攻撃呪文には効かないんだけど。」
「えー、だったら使ってよ、ユミコさん。」
「バカ。この時代の魔王と戦うのは、あなたでしょ。
 私が出しゃばるのは、駄目なのよ。」
「それで殺されたら、ただのバカじゃん。」

「ユミコ?はて、どっかで聞いたような。」
 スズキくんの動きが、ぴたりと止まる。

 そりゃあ、勇者ウラワと一緒に、魔王と戦ったひとだからな、ユミコは。
 人間の間には伝わってないけど、魔族の間には伝わっているかもしれない。

 だけどユミコの事が、スズキくんにバレたらヤバい気がする。
「なら、これ使って逃げればいーじゃん。」
 俺は転移の翼を取り出す。

「あ。」
 スズキくんは一瞬、ヤバそうな感じをかもし出す。
 だけどすぐに気を取り直す。
「くくくく、そんなアイテムが、通用すると思ってるのかな。」

「ああ、思ってるよ、くくくのく。」
 俺もスズキくんの真似をしてみる。

「ば、ばか、やめろ。
 ここでおまえを取り逃したら、私が魔王様に責められる!」

 うん、そんな事、黙ってればいーのにな。

 俺は左手でユミコを抱き寄せ、右手で転移の翼を空へ放る。
「くぅくくく、また会おう、スズキくん!」

 俺とユミコは、オオミヤ城前に転移した。
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