上 下
50 / 221
章なしって設定できないの?~イワツキからサカドへ

第50話 勇者魔法の鍵を買う

しおりを挟む
 サカドの街の北西区画に着いた俺。
 ここにあるふたつの建物のうち、どちらかが鍵屋だろうと、当たりをつける。


 片方の建物から、ユミコが出てきた。
 鉢合わせする俺に、驚くユミコ。
「ゆ、ユウタ。どうしてここに?」
「鍵屋を探して、色々と。
 ユミコこそ、ここで何してたの?」
「そ、それは、」
 と言ってユミコの目が泳ぐ。
「ま、別にいっか。」
 この建物に入れば、分かる事だし。

 そんな俺を、ユミコは邪魔をする。
「か、鍵屋は隣りよ。こっちじゃないわ。」
 ユミコの声は、少し震えている。
「えー、こっちも確かめなくちゃ。」
 俺がそう言うと、ユミコはプルプル首をふる。
「駄目、入らないで、お願い。」
 ユミコは涙声だ。

「ごめん。」
 俺はひと言そう言うと、その建物をあきらめる。

 ユミコは何かを隠してる。
 だけど、それを問いただす様な真似は、したくなかった。

 俺は魔法の鍵を売ってると思しき建物に入る。
「おやおや、珍しいね、ここに誰か来るなんて。」
 店のカウンターの向こうに、ひとりの婆さんがいた。
「あの、ここは鍵屋ですか?」
 看板も何も無いので、ここが何の店だかは分からない。
 だけど、お店のカウンターはあるので、何かの店である事は、間違いない。

「ああ、ここは魔法の鍵屋だよ。買ってくかい?
 いっこ80円だよ。」

 おお、ついに発見したぞ、魔法の鍵屋。
 魔法の鍵は、ひもを通す穴があった。
 一本のひもで、八本の魔法の鍵を束ねる事が出来た。
 つまり、魔法の鍵の持てる上限は、八本となる。
 当然俺は、上限の八本を購入。
 俺はほくほく顔で、鍵屋を後にする。
 したら、ユミコと再び、鉢合わせる訳で。

「で、そこの建物は、なんなわけ?」
 俺はさりげなく聞いてみる。
「ご、ごめんなさい、ユウタ。」
 ユミコは、なぜか突然謝る。
「え?」
「ほら、私の銀の笛、聞かせてあげるって、約束したでしょ。」
 ああ、そんな事もあったなあ。
 ぶち込む隙が無くて、そのまま放置だったよ。

「でも、死体が握ってた笛なんて、ばっちくて吹けないから。
 だから新しく作ってもらおうと、思ったんだけど、」
 ここでユミコは、言葉をつまらせる。
 ああ、作ってもらえなかったのか。と俺は理解する。

「それなら、もういいよ。」
 何話も忘れてた事を、今さらぶち込む必要ないだろ。
「じゃあここは、笛職人の家だったんだね。」
 と俺が聞くと、ユミコは首をふる。

「ここはアケミの家。」
「アケミ?」
「そう、勇者ウラワとパーティを組んだ、イソノアケミ。
 そのアケミの子孫の家よ。」
「へー、俺も会ってみたいな。」

 ユミコは首をふる。
「私、嫌われてたみたい。
 とっくの昔に、引き払ったみたい。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

きんぎょ転生〜金魚と一緒に異世界転生してしまったのでとりあえず金魚増やします〜

荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
貧乏男爵令嬢アカリアはある日、前世を思い出した。 金魚すくい大会の帰りに車に轢かれた記憶が蘇ると同時に、自分の傍に漂う存在に気づく。 この世界には存在しないはずの――金魚に。 「私の『スキル』って金魚出すだけ!?なにこれ金魚の呪い!?」 これは「きんぎょ創造」の『スキル』を与えられた少女が、魚を鑑賞する文化のない世界に金魚を広めて貧乏脱出しようと奮闘する物語である。 ふんわり設定の異世界きんぎょファンタジー。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

《氷結》少女の英雄譚

leny
ファンタジー
少女、ソフィアは魔物に襲われている所を王国最強の10人の1人の槍士によって救われる。 その出来事をきっかけに少女は憧れを抱き決意する。 「私も、あの人の様に色々な人々を救える槍士になりたい…!」 目覚めた《氷結》の能力と、槍士の男に育てられ鍛えられた少女は人々を救うために旅立つ。 やがて《氷結の槍姫》と呼ばれる少女は、人々を助けて救う為に旅立つ――― ※小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

そして、アドレーヌは眠る。

緋島礼桜
ファンタジー
長く続いた大戦、それにより腐りきった大地と生命を『奇跡の力』で蘇らせ終戦へと導いた女王――アドレーヌ・エナ・リンクス。 彼女はその偉業と引き換えに長い眠りについてしまいました。彼女を称え、崇め、祀った人々は彼女の名が付けられた新たな王国を創りました。 眠り続けるアドレーヌ。そこに生きる者たちによって受け継がれていく物語―――そして、辿りつく真実と結末。 これは、およそ千年続いたアドレーヌ王国の、始まりと終わりの物語です。 *あらすじ* ~第一篇~ かつての大戦により鉄くずと化し投棄された負の遺産『兵器』を回収する者たち―――狩人(ハンター)。 それを生業とし、娘と共に旅をするアーサガ・トルトはその活躍ぶりから『漆黒の弾丸』と呼ばれていた。 そんな彼はとある噂を切っ掛けに、想い人と娘の絆が揺れ動くことになる―――。 ~第二篇~ アドレーヌ女王の血を継ぐ王族エミレス・ノト・リンクス王女は王国東方の街ノーテルの屋敷で暮らしていた。 中肉中背、そばかすに見た目も地味…そんな引け目から人前を避けてきた彼女はある日、とある男性と出会う。 それが、彼女の過去と未来に関わる大切な恋愛となっていく―――。 ~第三篇~ かつての反乱により一斉排除の対象とされ、長い年月虐げられ続けているイニム…ネフ族。 『ネフ狩り』と呼ばれる駆逐行為は隠れ里にて暮らしていた青年キ・シエの全てを奪っていった。 愛する者、腕、両目を失った彼は名も一族の誇りすらも捨て、復讐に呑まれていく―――。 ~第四篇~ 最南端の村で暮らすソラはいつものように兄のお使いに王都へ行った帰り、謎の男二人組に襲われる。 辛くも通りすがりの旅人に助けられるが、その男もまた全身黒尽くめに口紅を塗った奇抜な出で立ちで…。 この出会いをきっかけに彼女の日常は一変し歴史を覆すような大事件へと巻き込まれていく―――。 * *2020年まで某サイトで投稿していたものですがサイト閉鎖に伴い、加筆修正して完結を目標に再投稿したいと思います。 *他小説家になろう、アルファポリスでも投稿しています。 *毎週、火・金曜日に更新を予定しています。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢は攻略対象のもふもふ従者に溺愛されます

かずきりり
ファンタジー
「レティシア・ミゼラ公爵令嬢!お前との婚約を破棄する!」 この一言で蘇った前世の記憶。 乙女ゲームの世界だと気が付いた時には、既に遅く、婚約破棄を宣言された後だった。 だけど……ゲームとたった一つだけ違うという事に気が付く。 それは、隠しルートである聖獣が断罪の場に居ない事。 ただ一つ されど一つ それだけでシナリオ回避出来るのではと思う反面、前世の影響と記憶のお陰で、貴族令嬢らしからぬ一歩を進みだす。 獣人を差別するこの世界で、獣人である従者と一緒に。 前世の記憶を取り戻した以上、貴族令嬢なんて重苦しいだけ! 一般庶民は自由に生きます! そんな悪役令嬢と反対にヒロイン達は………… -------------------- ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

処理中です...