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ユミコ争奪編

第38話 勇者強力な呪文を見る

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 ユミコ争奪戦で俺と戦った女性四人組に、魔王と戦う意志は無かった。
 そこでユミコは会場に集まった全員に、改めてその意志を問うが、それに応えたのは、俺ひとりだけだった。


 ユミコは、争奪戦に参加してる五人の所へ向かう。
 この闘武場のすぐ横で、俺たち以外の五人は観戦していた。

 近づくユミコに三人ばかし、怯えた表情を見せる。
「ねえ、あなた達は、魔王と戦う意志あるんだよね。」
「ひっ」
 無表情で問うユミコに、三人ばかし怯える。
「あるよぉ、あるある。あるに決まってんじゃん。」
 だけどひとりだけ、饒舌に語り出した。

「じゃあ、なんで手を上げなかったの?」
「あー、悪りー悪りー、上げ忘れちまってたよ。」
 とそいつは両手を上げる。

「ちょっと、もうやめましょうよ。」
 そいつの仲間らしき男が、小声でたしなめる。
「ばか野郎、もうちょっとで、このねーちゃんとイチャイチャ出来るんだぞ。」
 そいつも小声で答える。
「でもこの人ヤバいですって。
 見た事ない、強力な呪文使ってますよ。」
「強力っつても、回復系だけだろ。
 俺たちの腕力で、普通に押さえつければいーだろ。」
「そ、それはそうですが。」
「おまえにも、楽しませてやるからさ、な。」
「たくぅ、しょうがないですね。」

「ふーん、魔王倒す気ないんだ。」
「わ!」
 そいつらの会話は、普通に丸聞こえだった。

「くそ、おまえはおとなしく、俺たちとパーティ組めばいーんだよ!」
 そいつはユミコに手を伸ばす。

 パシっ。
「いてっ。」
 ユミコは持ってる杖で、そいつの手をはたく。

「くそ、このアマぁ、こっちがした手に出てりゃあ、いい気になりやがって。
 ここで公開凌辱してやろうか?あー?」
「はあ。」
 本性剥き出したそいつに対して、ユミコは思わずため息をつく。

「くっ、なめやがって。おいみんな、やっちまうぞ。」
「おー。」
 五人の男達は、一致団結してユミコに襲いかかる。

 なるほど、俺と対戦した女性四人組の気持ちが、今ならよく分かる。
 こんなヤツらと、ユミコを組ませる訳には、いかねーな。
 つか、俺もこいつらと同類と思われてた訳?
 それはそれで、ショックだぞ。

「ぴかぴーか。」
 ユミコは中級の電撃呪文を唱える。
 五人の男どもは、瀕死状態だ。

「バシトラベル!」
 ユミコは強制転移呪文を唱える。
 五人の男どもは、どこか遠くへと飛ばされた。

 五人をノシたユミコが、闘武場の端から戻ってくる。
「ひっ。」
 俺のそばに居る四人組の女性達が、一斉に怯えだす。

 まあ、無理もないか。
 魔王と戦う意志のない者の末路を、見せつけられたんだからな。
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