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Episode4 京子

269 オーバードーズ

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「敵の大将、ちょっと慎重すぎない? 冷静ってのとは程遠いけどさ。次期長官だなんて持てはやされて、本来の自分を押さえつけてる感じかな」

 桃也とうやとの戦闘を避けて、暗闇の中を移動してきた。気配をひそめて辿り着いたのは、巨大なショッピングセンターの裏手だ。

「総攻撃を仕掛けて来るかも、ってちょっと期待したんだけどな。彼も色々考えてるみたいだね」
「それが上に立つ人間の覚悟ってものだろ?」
「ヒデはあっちを擁護ようごする気?」
「常識の話をしてるんだよ」

 建物の向こう側では大人数での戦闘が繰り広げられていて、気配や音が鳴り止まない。
 さっき忍がくりぬいた穴の真後ろは、砕けたコンクリートやら建物の残骸が方々まで散らばっていた。ズンと足元をきしませる衝撃に、欠片かけらがバラバラと音を立てて降って来る。

初動しょどうで終わらせても良かったんじゃないのか?」
「そんなの勿体もったいないよ。折角ここを使わせてもらってるんだから、更地さらちになるまで頑張って貰わないと」
「そんなの、俺かお前が暴走させれば一瞬だろ」
「お楽しみは最後に取っておくものなんだよ」

 落ち合う約束をしていた訳じゃないが、松本がここにいる事に気付いた。
 松本は建物の隙間から見える戦場を、ぼんやりと静観している。キーダーだった彼が、アルガスに対して何らかの感情を抱いているのは事実だろう。

 丸くくりぬかれた壁の向こうで、白い光がパァンと炸裂した。数では圧倒的にホルスこちらが優位だが、即席の能力者ばかりでは時間稼ぎにもならない。

「今、人が吹っ飛ばされたね」

 屋上に溜まっていた気配が宙を降下していくのが分かって、忍は「愉快だ」と顔をほころばせた。

「ノーマルに力を与えるなんて、豚に真珠って事なのかもしれないね」
「今更何言ってんだよ。忍、お前は何がしたいんだ?」
「俺は一人でみじめに死にたくないだけだよ」
「道連れかよ」

 松本は絶句して「お前らしいな」と眉をしかめる。

「褒めてくれるの?」
「褒めてねぇよ」

 松本から若干の気配がにじみ出ている。敵に気付かれるのも時間の問題だろう。

「バーサーカーの彼はまだこっち来てないみたいだけど、ヒデも温存しとくつもり?」
「ずっと待ってなんかいらんねぇよ」
「だろうね」

 直前で飲んだ5錠の効果は絶大だ。松本をここで大人しくなんて、させてはくれない。
 能力者にとって、戦いは本能だ。

「そろそろだな」

 爛々らんらんと見開いた瞳を血走らせて、松本は「じゃあな」と忍へ手を振った。

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