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Episode4 京子
240 先に行く4人
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ホルスから宣戦布告のFAXが届いた日の夕方、桃也が久志を連れてヘリコプターで本部に帰還した。あまり見ない組み合わせだ。
一報を受けた時、既に帰国していた桃也は北陸に居たらしい。戦いへ向けて技術部との申し合わせをする為だ。参戦を表明しているマサは、ギリギリまで向こうに居るという。
来て早々にデスクルームに集まったが、桃也は挨拶も早々に済ませ他の用事で出て行ってしまった。
「とりあえずこれで行こうと思うから、読んでおいて下さい」
そんな言葉とともに、丁寧に破かれた一枚のノートを置いていく。ヘリの中で書いたのか、走り書きのような字がびっしりと埋められていた。
「作戦メモ……?」
側に居た修司が紙を受け取って、読みにくい字を解読していく。
横浜の戦いでは事前にホルスから連絡が来ていて、お互いに準備期間が設けられていた。アイドルグループ・ジャスティのプロデューサーである近藤武雄を間に挟んでいた事もあり、何度か連絡も取り合った上での決行だった。
しかし今回は向こうからの一方的なFAXのみで、日付以外の情報は何もない。7日は明後日だが、もし0時を指すなら明日の夜中という事になる。
桃也の紙には、そんな予告への言及が書かれていた。
もし直接本部へ急襲が仕掛けられたら、全力で迎撃する──それは納得できたが、そうではなかった場合を想定した彼の判断に戸惑ってしまう。
先日の会議でも決まっていた事だが、戦闘が外になる場合、キーダーを数人本部へ残すという作戦だ。先発隊のメンバーが4人書かれていて、そこに京子の名前があった。
☆
桃也の作戦メモに一通り目を通し、各々が訓練へ戻る。
久志は作業が終わらないと言って、綾斗を連れて本部にある技術部の部屋へ行っていた。
京子は暫く動いた後、少し休憩をと壁際でスポーツドリンクをガブ飲みしながら、戻って来た大舎卿を「お疲れ様」と迎える。『好きなように戦う』と言った彼も、他のメンバーとの実戦を重ねていた。
今、ホールの中央では修司と美弦が本気の模擬バトルを繰り広げている。さっき大舎卿と戦って歯が立たなかった修司も、連戦の疲れなど見せずモチベーションを上げていた。
そんな二人を見守りながら、京子は横でバスタオルを被る大舎卿にそっと胸の内を吐き出す。
「あの作戦で良いのかな?」
「さっきのか? 小僧が決めたんじゃろ? ワシらは従うだけじゃよ」
「まぁ、そうなんだけどね」
「誰が行っても戦える。ワシらはそれだけの訓練をしてきたんじゃろ? ただ、戦いは強さが全てじゃない。何が功を奏するかも分からんからの」
「みんな強くなったよね」
「お前はババアみたいな事言うようになったな」
ほくそ笑む大舎卿に、京子は「やめて」と声を上ずらせる。ほんの数年前まで、ここは彼と二人きりだったのに、今はもう後輩だらけになっていた。
「仕方ないでしょ」
「まぁな。とりあえず今回の件は小僧が考えて出した答えじゃろ? 綾斗が入っていない事だって、納得してるんじゃろ?」
「……うん」
「導火線をぶら下げたアイツを先に消耗させる訳にはいかんからな」
松本がどう出て来るかは不明だが、持久力のないバーサーカーはギリギリまで温存させておきたい。
色々と頭を巡らせる京子に、大舎卿は「バレバレじゃよ」と笑った。だろうな、と自分でも分かっている。
「選ばれたメンバーの中に、小僧が入っているから嫌なんじゃろ?」
「──そうだよ」
メンバーを見た瞬間、正直やり辛いと思ってしまった。
本部の迎撃態勢は万全とまでは行かないまでも、きちんと準備してある。忍がアルガス奇襲を選べばいい──そんな事を考えてしまった。
先発隊に選ばれたのは、京子に桃也、それに彰人と修司の4人だった。
一報を受けた時、既に帰国していた桃也は北陸に居たらしい。戦いへ向けて技術部との申し合わせをする為だ。参戦を表明しているマサは、ギリギリまで向こうに居るという。
来て早々にデスクルームに集まったが、桃也は挨拶も早々に済ませ他の用事で出て行ってしまった。
「とりあえずこれで行こうと思うから、読んでおいて下さい」
そんな言葉とともに、丁寧に破かれた一枚のノートを置いていく。ヘリの中で書いたのか、走り書きのような字がびっしりと埋められていた。
「作戦メモ……?」
側に居た修司が紙を受け取って、読みにくい字を解読していく。
横浜の戦いでは事前にホルスから連絡が来ていて、お互いに準備期間が設けられていた。アイドルグループ・ジャスティのプロデューサーである近藤武雄を間に挟んでいた事もあり、何度か連絡も取り合った上での決行だった。
しかし今回は向こうからの一方的なFAXのみで、日付以外の情報は何もない。7日は明後日だが、もし0時を指すなら明日の夜中という事になる。
桃也の紙には、そんな予告への言及が書かれていた。
もし直接本部へ急襲が仕掛けられたら、全力で迎撃する──それは納得できたが、そうではなかった場合を想定した彼の判断に戸惑ってしまう。
先日の会議でも決まっていた事だが、戦闘が外になる場合、キーダーを数人本部へ残すという作戦だ。先発隊のメンバーが4人書かれていて、そこに京子の名前があった。
☆
桃也の作戦メモに一通り目を通し、各々が訓練へ戻る。
久志は作業が終わらないと言って、綾斗を連れて本部にある技術部の部屋へ行っていた。
京子は暫く動いた後、少し休憩をと壁際でスポーツドリンクをガブ飲みしながら、戻って来た大舎卿を「お疲れ様」と迎える。『好きなように戦う』と言った彼も、他のメンバーとの実戦を重ねていた。
今、ホールの中央では修司と美弦が本気の模擬バトルを繰り広げている。さっき大舎卿と戦って歯が立たなかった修司も、連戦の疲れなど見せずモチベーションを上げていた。
そんな二人を見守りながら、京子は横でバスタオルを被る大舎卿にそっと胸の内を吐き出す。
「あの作戦で良いのかな?」
「さっきのか? 小僧が決めたんじゃろ? ワシらは従うだけじゃよ」
「まぁ、そうなんだけどね」
「誰が行っても戦える。ワシらはそれだけの訓練をしてきたんじゃろ? ただ、戦いは強さが全てじゃない。何が功を奏するかも分からんからの」
「みんな強くなったよね」
「お前はババアみたいな事言うようになったな」
ほくそ笑む大舎卿に、京子は「やめて」と声を上ずらせる。ほんの数年前まで、ここは彼と二人きりだったのに、今はもう後輩だらけになっていた。
「仕方ないでしょ」
「まぁな。とりあえず今回の件は小僧が考えて出した答えじゃろ? 綾斗が入っていない事だって、納得してるんじゃろ?」
「……うん」
「導火線をぶら下げたアイツを先に消耗させる訳にはいかんからな」
松本がどう出て来るかは不明だが、持久力のないバーサーカーはギリギリまで温存させておきたい。
色々と頭を巡らせる京子に、大舎卿は「バレバレじゃよ」と笑った。だろうな、と自分でも分かっている。
「選ばれたメンバーの中に、小僧が入っているから嫌なんじゃろ?」
「──そうだよ」
メンバーを見た瞬間、正直やり辛いと思ってしまった。
本部の迎撃態勢は万全とまでは行かないまでも、きちんと準備してある。忍がアルガス奇襲を選べばいい──そんな事を考えてしまった。
先発隊に選ばれたのは、京子に桃也、それに彰人と修司の4人だった。
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