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Episode4 京子

231 燃える闘争心

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「今言った事、本当なんですか?」

 いつから彼はそこに居たのか。
 呆然ぼうぜんと立ち尽くす修司しゅうじに、京子と美弦みつるは息を呑む。
 綾斗あやと彰人あきひとが、アルガスで収監中の安藤りつの所へ行った。京子にとってそれは軽い嫉妬と無事を心配する程度の事だけれど、修司にとっては重さが違う。

 安藤律はホルスの幹部だ。そして彼女が居たからこそ、修司が今アルガスに居ると言っても過言かごんではないだろう。
 律は監察かんさつの管理下に置かれていて、京子たち一般のキーダーには彼女の居場所さえ知らされていない。昨日の会議で律の名前を聞いただけで動揺していた修司は、きっと今の話を聞いて自分も行きたいと思うだろう。

「綾斗がそう言ってたよ。彰人くんが提案してくれたらしいけど、私もそれ以上の事は分からないの。今日中には戻れるだろうって事だけど、場所も全然見当がつかないよ」
「そう……ですか」
「仕事でしょ」

 モヤモヤとした気持ちを溜め込もうとする修司に、美弦がピシャリとその一言を突き付けた。

「分かってるよ」

 投げやりに返事する修司の顔に、ぐっと力が籠る。

「分かってるんだ……あの人は敵だし、会った所で俺がどうにかできる相手じゃない。ただ──居たんだと思ってさ」
「居たって何よ」
「存在してたんだなって……」

 ボソリと吐き出した心境に、京子は「そうだね」とうなずいた。
 アルガス内でもトップシークレット扱いの彼女と接触すると聞かされて、その存在が途端に現実味を増してくる。それは京子も同じだった。
 修司はスッキリしない表情のまま、緩く握った右手で口元を押さえつける。

「上は、あの女をどうするつもりかしら。ホルスが彼女の奪還だっかんに動いているかもしれないんですよね?」
「ホルスはトールの力を欲している。実際にできるかどうかは別として、仲間だった彼女を駒にしたいって考えるのは自然な事だよね」
「アルガスから脱獄できるなんて考えたくない……」
「そうは思うけど、想定くらいはしておかないとね」

 ヒートアップしそうになる美弦に、京子が首を振る。
 物理的に拘束はしているが、律の意識はまだホルスにあるだろう。

 再び安藤律と戦う事になるのだろうか。
 横浜で戦った時は、五分五分だった気がする。あれから一年以上が過ぎて、少しは差をつけることが出来ただろうか。

「あの女が出て来るなら、私はやりますよ。絶対に!」

 困惑する京子と修司の横で、美弦がわなわなと闘争心を燃やしていた。



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