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Episode4 京子

224 英雄の帰還

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 ホルスとの戦いに備えた会議だと言われたが、それ以外の詳細は何も聞かされていない。

「誰か来てるかな?」

 本部に常駐する4人以外にキーダーの出席者は居るだろうか──もしもの可能性に、京子は苦い顔を隠せない。今回の戦いの管轄かんかつであるアルガス本部には、少なくともあと4人のキーダーが登録されているのだ。

「まさか……ね」

 色々な感情が一気に押し寄せて来るが、そこにひたっている余裕はない。
 「恐らく」と言い掛けた綾斗の声をさえぎるように、4人の背後に別の足音と気配が現れた。

「わぁ、お疲れ様です!」

 先に振り返って挨拶するのは修司しゅうじだ。続く綾斗も「お久しぶりです」と頭を下げる。その口調で相手が誰か分かって、京子はホッと安堵あんどしつつ相手を確認した。

「爺、久しぶり!」
「お疲れ様です、大舎卿だいしゃきょう

 うやうやしく頭を下げる美弦みつるは、興奮気味に声を弾ませる。
 見慣れた白髪頭にきっちりとタイを結んだ制服姿で現れたのは、日本を隕石の落下から救いアルガス解放のいしずえとなった英雄、成沢勘爾なりさわかんじこと大舎卿だ。やよいの葬儀の時、本部に来ていた彼と美弦や修司は会っているが、京子と綾斗は一年以上ぶりの再会だ。
 大舎卿は「おぅ」と満足げに笑む。

「爺、いよいよ復帰するの? 爺が居てくれると頼もしいよ」
「調子の良い事を言いおって。ジジイは隠居いんきょして欲しいんじゃなかったのか?」
「それも否定するわけじゃないけど、こんな事があるとやっぱり……ね」

 浩一郎と彰人あきひとの襲撃後、大舎卿は『有給休暇を消化する』という名目で本部の仕事を離れた。桃也とうやと同じサードの肩書を持つ彼は裏で色々動いていたらしいが、その動向は不明だ。

「こんな老いぼれ当てにするな。ワシは自由にやらせてもらうからな?」
「それでも構わないよ。けど、無理はしないでね」
「そういうところじゃぞ」

 大舎卿は呆れたように鼻を鳴らして、会議室の中へ入っていく。先客はいなかった。

「今日はこの5人でって事なのかな?」
「とりあえず適当に座って支度じゃ」
「はぁい」

 どうやら彼は事情を知っているらしい。
 えてホワイトボードの前は避けて、4人はコの字に並んだ机についた。
 京子が妙な緊張を走らせながら持参したコーヒーを流し込むと、向かいの席で修司がプシュリと炭酸水のキャップを開ける。

 全員の回線がサーバーに繋がったところで、パソコンのカメラが一斉に起動しモニターに7つの顔が並んだ。予想を裏切らない展開に、京子はマウスを持つ手にぐっと力を込める。
 4人と大舎卿、それに彰人と桃也だ。二人は来ないだろうと都合よく考えていたが、オンラインとなれば話は別だ。

『集まったな』

 スピーカーから発された桃也の声が、無音の会議室に響く。
 今日の議長は次期アルガス長官と言われる高峰たかみね桃也らしい。少し前に動画でその顔を見ていたが、彼と実際に話をするのはやよいの葬儀以来だ。その前、となると年末に別れた時になってしまう。

 キーダーとしてアルガスに残る事を選んだ以上、こんな日が来るのは覚悟していたつもりだ。むしろ半年以上の間なかったのが不思議なくらいとも言える。
 複雑な気持ちを抑えてモニターからそっと目を逸らすと、今度は彼の横に顔を並べた彰人が「宜しくお願いします」と挨拶した。

 この7人が同時に顔を合わせるのは初めてかもしれない。
 京子一人が気まずい空気をまとったまま、桃也が『始めます』と皆に声を掛けた。





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