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Episode4 京子
14 最高の提案
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「田母神君、桃也君の所へ行っても構わないよ」
桃也と一緒に居る方法をアルガス長官である誠から提案されて、京子は戸惑ってしまう。彼の言葉を有難いと思うが、素直に受け入れることができなかった。
「それは、どういう意味ですか?」
「言葉のままだよ。彼が私の後を継ぐのはまだ先だとしても、サードに入れば今よりずっと忙しくなるだろう。だから君が彼の側に居たいと思うなら、そうしても構わない。ただ、サードの仕事は監察よりも制限が多いから、君も今までと同じようにという訳にはいかないけれどね」
「私にトールになれって事ですか?」
『飛び乗り大作戦』をしようとした時、確かに心の中でその覚悟があったのは事実だ。けれど作戦が失敗した今、勢いは失速している。
桃也の事情は関係なくキーダーを辞めろと言われた気がして、京子はぎゅっと膝を握り締めて押し黙った。
「力を失うのが嫌ならば、銀環を付けたままでもいい。どこかの支部へという訳にはいかないけどね」
特例措置は、朱羽と似た待遇だ。
彼女を否定するわけではないが、名ばかりのキーダーになりたいとは思わない。
「キーダーを一人失うのは、アルガスにとって大きな損失だ。けど、これは君の人生だろう? 君が決めればいいよ」
「長官……」
「桃也君を後継者にするのも私の希望に過ぎないからね。実際に未来がどうなるかなんて分からないよ」
「桃也は嫌だなんて言わないと思います」
「なら嬉しいね。キーダーが長官になれば、ノーマルの私がしてこなかった現場での任務もできるだろう。外交も入ってくるはずだ」
「海外……ってことですか」
桃也は帰国子女だ。本人は小さい頃の話だと言いながらも、英会話はマスターしている。
海外にあるアルガスのような施設は日本より開放的で、トップも能力者だという。今まで閉鎖的だった日本がそこに加わっていくというのか。
たちまち遠い世界に入り込んでしまった感覚を覚えてしまう。
「桃也は知ってるんですか?」
「まだ言ってないよ。少しずつ話して行こうと思う。だから君も黙っていて欲しい」
「……わかりました」
サードになりたいと言った桃也は、未来がそれだけではないとも言っていた。
誠の思いを知らず、彼はどの選択をするのだろうか。
もし桃也が誠の望むような道を選んで、自分もその側に居る事ができるなら──
「長官の奥さんは、今何をしているんですか?」
「うちのワイフは、今日は友人とランチをしに行くと言っていたよ。彼女も私より年上で、定年まで福岡で中学の教師をしていたんだ」
「……だから長官は向こうの支部に行ってるんですか」
「私の我儘だよ。家も向こうにある」
知らなかった。
穏やかに笑う誠を見て、幸せそうだと素直に思う。
彼に甘えて桃也の側に居る事を選べば、命を張って戦う事もなく、同じような未来が待ち受けているのかもしれない。
──『俺に凡人になれって言うのか?』
それなのに、こんな時に蘇るのは平野の言葉だ。
トールになってあのバーを続けることが彼にとって一番の選択だと、京子は思っていた。けれど、彼はそれを選ばなかったのだ。
今ならばあの時の平野の気持ちがわかる。
「長官、私……折角ですが、お断りさせていただきます。彼の事は、私なりにできる事を考えてみようと思います」
「本当にいいのかい?」
「……はい」
桃也と会えない寂しさに耐えられず自分から彼の元へ行こうと思った筈なのに、いざそれを叶えようと言われて「はい」と頷くことができなかった。
彼を諦める理由ができたと思ってしまったのも事実だ。
けれど──
桃也と一緒に居る方法をアルガス長官である誠から提案されて、京子は戸惑ってしまう。彼の言葉を有難いと思うが、素直に受け入れることができなかった。
「それは、どういう意味ですか?」
「言葉のままだよ。彼が私の後を継ぐのはまだ先だとしても、サードに入れば今よりずっと忙しくなるだろう。だから君が彼の側に居たいと思うなら、そうしても構わない。ただ、サードの仕事は監察よりも制限が多いから、君も今までと同じようにという訳にはいかないけれどね」
「私にトールになれって事ですか?」
『飛び乗り大作戦』をしようとした時、確かに心の中でその覚悟があったのは事実だ。けれど作戦が失敗した今、勢いは失速している。
桃也の事情は関係なくキーダーを辞めろと言われた気がして、京子はぎゅっと膝を握り締めて押し黙った。
「力を失うのが嫌ならば、銀環を付けたままでもいい。どこかの支部へという訳にはいかないけどね」
特例措置は、朱羽と似た待遇だ。
彼女を否定するわけではないが、名ばかりのキーダーになりたいとは思わない。
「キーダーを一人失うのは、アルガスにとって大きな損失だ。けど、これは君の人生だろう? 君が決めればいいよ」
「長官……」
「桃也君を後継者にするのも私の希望に過ぎないからね。実際に未来がどうなるかなんて分からないよ」
「桃也は嫌だなんて言わないと思います」
「なら嬉しいね。キーダーが長官になれば、ノーマルの私がしてこなかった現場での任務もできるだろう。外交も入ってくるはずだ」
「海外……ってことですか」
桃也は帰国子女だ。本人は小さい頃の話だと言いながらも、英会話はマスターしている。
海外にあるアルガスのような施設は日本より開放的で、トップも能力者だという。今まで閉鎖的だった日本がそこに加わっていくというのか。
たちまち遠い世界に入り込んでしまった感覚を覚えてしまう。
「桃也は知ってるんですか?」
「まだ言ってないよ。少しずつ話して行こうと思う。だから君も黙っていて欲しい」
「……わかりました」
サードになりたいと言った桃也は、未来がそれだけではないとも言っていた。
誠の思いを知らず、彼はどの選択をするのだろうか。
もし桃也が誠の望むような道を選んで、自分もその側に居る事ができるなら──
「長官の奥さんは、今何をしているんですか?」
「うちのワイフは、今日は友人とランチをしに行くと言っていたよ。彼女も私より年上で、定年まで福岡で中学の教師をしていたんだ」
「……だから長官は向こうの支部に行ってるんですか」
「私の我儘だよ。家も向こうにある」
知らなかった。
穏やかに笑う誠を見て、幸せそうだと素直に思う。
彼に甘えて桃也の側に居る事を選べば、命を張って戦う事もなく、同じような未来が待ち受けているのかもしれない。
──『俺に凡人になれって言うのか?』
それなのに、こんな時に蘇るのは平野の言葉だ。
トールになってあのバーを続けることが彼にとって一番の選択だと、京子は思っていた。けれど、彼はそれを選ばなかったのだ。
今ならばあの時の平野の気持ちがわかる。
「長官、私……折角ですが、お断りさせていただきます。彼の事は、私なりにできる事を考えてみようと思います」
「本当にいいのかい?」
「……はい」
桃也と会えない寂しさに耐えられず自分から彼の元へ行こうと思った筈なのに、いざそれを叶えようと言われて「はい」と頷くことができなかった。
彼を諦める理由ができたと思ってしまったのも事実だ。
けれど──
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