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Episode4 京子
2 大胆な提案
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「もっと一緒に居たいと思うなら、見送りの時に電車とかヘリに一緒に飛び乗れば良いんじゃないかしら」
「えぇ? それって事前に切符買っておいてって事?」
「そんなの後からどうにでもなるわよ。電車でもヘリでも、勢いが大事じゃない?」
どうしたらもっと桃也と一緒に居られるのか──そんな京子の質問に、朱羽は大胆な提案をくれる。
「勢いでそんなことしても困らせちゃうよ。仕事だってあるし……」
モグモグとナポリタンを食べてアイスティーを流したところで、朱羽はフォークを掴んだ人差し指を京子にビシリと突き付けた。
「それが京子の覚悟なんじゃない?」
「……やめてよ」
「何かを手に入れたいなら、他の何かを諦める覚悟も必要よ?」
頭では分かっているつもりでも、その選択を選ぼうとは思わない。
「私にキーダーを辞めろって事?」
「それも手段の一つじゃないかしら。まぁ、迷う位ならしない方が良いと思うけど」
桃也がサードになったら、今以上に会えなくなる。
それは、サードが監察よりも機密事項の多い仕事だからだ。キーダーである以上、京子は自分の担当を離れるわけにはいかない。
桃也の側に居たい気持ちと、今の自分を捨てられない感情がせめぎ合って、いまだに答えを出せずにいる。
「私、高望みしてるかな?」
「そんなことないわよ。仕事と恋愛の両立って条件だけなら、無意識に叶えられてる人なんていっぱいいるもの。それだけの事なのに……どうして難しくなっちゃうのかしらね」
「桃也はね、ずっとキーダーになりたかったんだって。キーダーとして出来る事を何でもしたいって言ってた。私はそれを応援したい。その気持ちは、多分これからもずっと変わらないと思うんだ」
ほんの少しの再会を喜べたのは、いつ頃までだったろう。
最近会える事を少し辛く感じてしまうのは、自分が彼の枷になってるんじゃないかと思うからだ。
それをボヤくと朱羽は急に真面目な顔をして、
「私は耐えろなんて言わないわよ? どんな結果になっても京子の気持ちを応援するわ」
「朱羽……」
「踏ん張るのなんて私だけで十分」
「朱羽はずっとマサさんが好きだったんでしょ? 寂しくなかったの?」
「私はあの人の恋人じゃないもの。勝率の低い片思いって、焦らない分結構余裕なのよ。けど京子は違うでしょ?」
「…………」
「桃也くんは頑張ってるって言うけど、京子だって頑張ってるじゃない。だから、二人はちゃんともう一歩ずつ踏み込まなきゃ。京子が桃也くんを取るなら、さっきの話もアリだと思うわ」
朱羽の言葉は、嫌なくらい胸に刺さる。
俯いたままの京子の胸元に人差し指を伸ばして、朱羽が「それ」と言いながら、ちょんと突いた。
「私がプレゼントしたネックレス。気に言って貰えたなら嬉しいわ」
二年前の誕生日前日に、桃也の家族が眠る墓地で彼女にプレゼントされた赤い石のネックレスだ。
「ルビーは勝利を呼ぶ石よ」
「そうなんだ。たまに付けてるよ、ありがとう」
そして今日は桃也からの指輪は付けていない。
「ところで病院行ってきたんでしょ? どうだったの?」
「うん、もう大分良いって」
「なら良かった」
京子は怪我した側頭部を押さえて見せる。
夏に起きたガイアとの戦闘で頭を打ち、半月に一度ほど経過観察として病院に通っている。あの時は他の検査を加えて一週間入院したが、桃也は一度も見舞いには来なかった。
勿論仕事が忙しいのは重々承知しているが、電話で声を聞いたのさえ一回きりだった。
今のままずっとこんな状況が続くのだろうか。
「彼の元へ『飛び乗り大作戦』よ。考えてみる?」
彼を追って電車に飛び乗るのも、彼の側に居る手段──心が小さく揺さぶられた気がして、京子はぎゅっと胸元を掴んだ。
「えぇ? それって事前に切符買っておいてって事?」
「そんなの後からどうにでもなるわよ。電車でもヘリでも、勢いが大事じゃない?」
どうしたらもっと桃也と一緒に居られるのか──そんな京子の質問に、朱羽は大胆な提案をくれる。
「勢いでそんなことしても困らせちゃうよ。仕事だってあるし……」
モグモグとナポリタンを食べてアイスティーを流したところで、朱羽はフォークを掴んだ人差し指を京子にビシリと突き付けた。
「それが京子の覚悟なんじゃない?」
「……やめてよ」
「何かを手に入れたいなら、他の何かを諦める覚悟も必要よ?」
頭では分かっているつもりでも、その選択を選ぼうとは思わない。
「私にキーダーを辞めろって事?」
「それも手段の一つじゃないかしら。まぁ、迷う位ならしない方が良いと思うけど」
桃也がサードになったら、今以上に会えなくなる。
それは、サードが監察よりも機密事項の多い仕事だからだ。キーダーである以上、京子は自分の担当を離れるわけにはいかない。
桃也の側に居たい気持ちと、今の自分を捨てられない感情がせめぎ合って、いまだに答えを出せずにいる。
「私、高望みしてるかな?」
「そんなことないわよ。仕事と恋愛の両立って条件だけなら、無意識に叶えられてる人なんていっぱいいるもの。それだけの事なのに……どうして難しくなっちゃうのかしらね」
「桃也はね、ずっとキーダーになりたかったんだって。キーダーとして出来る事を何でもしたいって言ってた。私はそれを応援したい。その気持ちは、多分これからもずっと変わらないと思うんだ」
ほんの少しの再会を喜べたのは、いつ頃までだったろう。
最近会える事を少し辛く感じてしまうのは、自分が彼の枷になってるんじゃないかと思うからだ。
それをボヤくと朱羽は急に真面目な顔をして、
「私は耐えろなんて言わないわよ? どんな結果になっても京子の気持ちを応援するわ」
「朱羽……」
「踏ん張るのなんて私だけで十分」
「朱羽はずっとマサさんが好きだったんでしょ? 寂しくなかったの?」
「私はあの人の恋人じゃないもの。勝率の低い片思いって、焦らない分結構余裕なのよ。けど京子は違うでしょ?」
「…………」
「桃也くんは頑張ってるって言うけど、京子だって頑張ってるじゃない。だから、二人はちゃんともう一歩ずつ踏み込まなきゃ。京子が桃也くんを取るなら、さっきの話もアリだと思うわ」
朱羽の言葉は、嫌なくらい胸に刺さる。
俯いたままの京子の胸元に人差し指を伸ばして、朱羽が「それ」と言いながら、ちょんと突いた。
「私がプレゼントしたネックレス。気に言って貰えたなら嬉しいわ」
二年前の誕生日前日に、桃也の家族が眠る墓地で彼女にプレゼントされた赤い石のネックレスだ。
「ルビーは勝利を呼ぶ石よ」
「そうなんだ。たまに付けてるよ、ありがとう」
そして今日は桃也からの指輪は付けていない。
「ところで病院行ってきたんでしょ? どうだったの?」
「うん、もう大分良いって」
「なら良かった」
京子は怪我した側頭部を押さえて見せる。
夏に起きたガイアとの戦闘で頭を打ち、半月に一度ほど経過観察として病院に通っている。あの時は他の検査を加えて一週間入院したが、桃也は一度も見舞いには来なかった。
勿論仕事が忙しいのは重々承知しているが、電話で声を聞いたのさえ一回きりだった。
今のままずっとこんな状況が続くのだろうか。
「彼の元へ『飛び乗り大作戦』よ。考えてみる?」
彼を追って電車に飛び乗るのも、彼の側に居る手段──心が小さく揺さぶられた気がして、京子はぎゅっと胸元を掴んだ。
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