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Episode3 龍之介
79 渾身の一発を
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「お前、そんなに戦いたいなら龍之介と戦ってみないか?」
「リュウ……と?」
突然の提案に、銀次が怪訝な表情を滲ませる。
驚愕する龍之介を無視して、修司は話を続けた。
「このまま終わりじゃ気が済まねえんだろ? だったら腕試しさせてやるって事。具合が悪いなら、断ってくれて構わないぜ?」
「ちょっと待って下さい、修司さん! 俺が銀次と戦うってどういうことですか?」
思わず腕を掴んだ龍之介に、修司は何か企んだような笑い顔を向ける。
「お前に花持たせてやるって約束したじゃん。向こうも戦いたいみたいだし、フィフティフィフティなんじゃねぇの?」
「た、確かに言ってましたけど……」
朱羽のピンチに飛び出す覚悟はある。けれど、朱羽も修司ですらピンピンした状況で突然戦えと言われても、心の準備が追い付かない。
まったりとした空気に途切れていた緊張を必死にかき集めて、龍之介はその相手を見た。
いつも近くに居る友人の顔がそこにある。彼は本当に敵なのだろうか。
ガイアたちの戦いが終わったと言われた今、銀次の得た力だけが行き場を失って彼の手中で燻ぶっていた。
銀次が重苦しい顔で「あの」と口を開く。少し休んだせいか、顔色が回復しているように見えた。
「俺、龍之介相手に負けるとは思いませんよ?」
「なら決まりだ。龍之介が勝ったら大人しく負けを認めて手を引く事」
「龍之介が勝ったら、ですね」
「あぁ。手加減なしで全力で来いよ。ドーピングしてるお前より、きっと龍之介は強いぜ」
「修司さん、挑発しないで下さい! 秘策でもあるんですか?」
「あるから言ってんだろ?」
どこにそんな勝算があるのか、龍之介にはさっぱり分からない。
自信あり気な修司に不安を覚えながら、龍之介は仕方なくさすまたを握り締めた。
銀次と戦うつもりなんてないけれど、修司は『殺せ』と言っているわけではなく、あくまで腕試しのようなものだ。
それでも勝率なんてほんの僅かだろうが、頑なに『嫌だ』と否定する気もない。
「やってやろうか……」
「ねぇ修司くん、二人に何させるつもり?」
朱羽が納得のいかない顔で、戦いを始めようとする二人を交互に見つめる。修司がそっと耳打ちすると、彼女は「へぇ」と眉を上げた。
改めて修司は龍之介にその戦いの説明をする。
「お前の武器は、そのさすまたなんだろ? だったらそれで勝って来い」
「勝って来いって。本気ですか? これで戦えるんですか?」
「お前の気持ち次第だと思うけど? やめるか?」
「いえ──銀次がやる気なら、俺だって本気で行きます」
龍之介は勇んだ。
修司の言う作戦とはどういうものなのか。昼間の戦いで偶然起こした光を、もう一度出せという事なのだろうか。
あれをまたタイミング良く起こせるとは思わない。
けれどそんな龍之介の不安など気にもせず、修司はさすまたの柄の高い位置を右手で掴んだ。左手には何か小さな紙が握られていて、細かく書かれた文字にじっと目を走らせている。
「それは──?」
「龍之介、朱羽さんにいいとこ見せてやれよ。お前ならできるって、綾斗さんがもしもの為に用意してくれた秘策だ。試してみたいって思うだろ?」
「綾斗さんの秘策って……内容によりますよ?」
「いいから、黙って聞け」
戸惑う龍之介に、修司が早口に説明する。
ガイアが鉄の竿に光を貼りつけて戦うように、龍之介のさすまたも光を宿していく。
「綾斗さんが言うには、このさすまたにはキーダーの力を溜めることができるらしい。けどノーマルが使うには容量が少なくて連動も弱い。チャンスは一回、渾身の一発だぞ?」
「は、はい」
「俺も初めてだから、よそ見しないで真っすぐに突っ込めよ? お前が殺られそうになったら、俺と朱羽さんで助けるからさ」
「行くぞ」と囁いた修司に「はい」と答えて、タイミングを合わせて地面を蹴った。
「面白い」と銀次の笑った声が耳に届いて、龍之介は一心不乱にさすまたを振り上げる。
バリバリと鳴って現れた光の感触は、朱羽を庇った時と同じだった。
「銀次ぃ!」
「龍之介ぇえええ!!!!!」
正面から突っ込んださすまたの攻撃を避けて、姿勢を低くした銀次の手が光を地面に走らせる。
キンと音を立てて向かってくる光に、龍之介は数歩の助走で飛び上がり直撃を避けた。そこから間髪入れずにキラキラと光るさすまたを頭上へと掲げ、銀次目掛けて振り下ろす。
けれどその瞬間に捉えた相手の表情に、直撃の寸前で腕を引いた。
銀次の目が力なく閉じて、立ち上がろうとした足がそのまま崩れたからだ。
力の連続使用が、身体へのダメージを増長させた原因だ。
「銀次!」
急に覇気を失って地面に倒れた銀次に、龍之介が攻撃の手を止めて駆け寄った。
「リュウ……と?」
突然の提案に、銀次が怪訝な表情を滲ませる。
驚愕する龍之介を無視して、修司は話を続けた。
「このまま終わりじゃ気が済まねえんだろ? だったら腕試しさせてやるって事。具合が悪いなら、断ってくれて構わないぜ?」
「ちょっと待って下さい、修司さん! 俺が銀次と戦うってどういうことですか?」
思わず腕を掴んだ龍之介に、修司は何か企んだような笑い顔を向ける。
「お前に花持たせてやるって約束したじゃん。向こうも戦いたいみたいだし、フィフティフィフティなんじゃねぇの?」
「た、確かに言ってましたけど……」
朱羽のピンチに飛び出す覚悟はある。けれど、朱羽も修司ですらピンピンした状況で突然戦えと言われても、心の準備が追い付かない。
まったりとした空気に途切れていた緊張を必死にかき集めて、龍之介はその相手を見た。
いつも近くに居る友人の顔がそこにある。彼は本当に敵なのだろうか。
ガイアたちの戦いが終わったと言われた今、銀次の得た力だけが行き場を失って彼の手中で燻ぶっていた。
銀次が重苦しい顔で「あの」と口を開く。少し休んだせいか、顔色が回復しているように見えた。
「俺、龍之介相手に負けるとは思いませんよ?」
「なら決まりだ。龍之介が勝ったら大人しく負けを認めて手を引く事」
「龍之介が勝ったら、ですね」
「あぁ。手加減なしで全力で来いよ。ドーピングしてるお前より、きっと龍之介は強いぜ」
「修司さん、挑発しないで下さい! 秘策でもあるんですか?」
「あるから言ってんだろ?」
どこにそんな勝算があるのか、龍之介にはさっぱり分からない。
自信あり気な修司に不安を覚えながら、龍之介は仕方なくさすまたを握り締めた。
銀次と戦うつもりなんてないけれど、修司は『殺せ』と言っているわけではなく、あくまで腕試しのようなものだ。
それでも勝率なんてほんの僅かだろうが、頑なに『嫌だ』と否定する気もない。
「やってやろうか……」
「ねぇ修司くん、二人に何させるつもり?」
朱羽が納得のいかない顔で、戦いを始めようとする二人を交互に見つめる。修司がそっと耳打ちすると、彼女は「へぇ」と眉を上げた。
改めて修司は龍之介にその戦いの説明をする。
「お前の武器は、そのさすまたなんだろ? だったらそれで勝って来い」
「勝って来いって。本気ですか? これで戦えるんですか?」
「お前の気持ち次第だと思うけど? やめるか?」
「いえ──銀次がやる気なら、俺だって本気で行きます」
龍之介は勇んだ。
修司の言う作戦とはどういうものなのか。昼間の戦いで偶然起こした光を、もう一度出せという事なのだろうか。
あれをまたタイミング良く起こせるとは思わない。
けれどそんな龍之介の不安など気にもせず、修司はさすまたの柄の高い位置を右手で掴んだ。左手には何か小さな紙が握られていて、細かく書かれた文字にじっと目を走らせている。
「それは──?」
「龍之介、朱羽さんにいいとこ見せてやれよ。お前ならできるって、綾斗さんがもしもの為に用意してくれた秘策だ。試してみたいって思うだろ?」
「綾斗さんの秘策って……内容によりますよ?」
「いいから、黙って聞け」
戸惑う龍之介に、修司が早口に説明する。
ガイアが鉄の竿に光を貼りつけて戦うように、龍之介のさすまたも光を宿していく。
「綾斗さんが言うには、このさすまたにはキーダーの力を溜めることができるらしい。けどノーマルが使うには容量が少なくて連動も弱い。チャンスは一回、渾身の一発だぞ?」
「は、はい」
「俺も初めてだから、よそ見しないで真っすぐに突っ込めよ? お前が殺られそうになったら、俺と朱羽さんで助けるからさ」
「行くぞ」と囁いた修司に「はい」と答えて、タイミングを合わせて地面を蹴った。
「面白い」と銀次の笑った声が耳に届いて、龍之介は一心不乱にさすまたを振り上げる。
バリバリと鳴って現れた光の感触は、朱羽を庇った時と同じだった。
「銀次ぃ!」
「龍之介ぇえええ!!!!!」
正面から突っ込んださすまたの攻撃を避けて、姿勢を低くした銀次の手が光を地面に走らせる。
キンと音を立てて向かってくる光に、龍之介は数歩の助走で飛び上がり直撃を避けた。そこから間髪入れずにキラキラと光るさすまたを頭上へと掲げ、銀次目掛けて振り下ろす。
けれどその瞬間に捉えた相手の表情に、直撃の寸前で腕を引いた。
銀次の目が力なく閉じて、立ち上がろうとした足がそのまま崩れたからだ。
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「銀次!」
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