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01 噂の編入生

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 その日、ルフェニラ魔術学園にちょっとした珍しいニュースが入ってきた。魔術学校の中でも最難関と名高い我らがルフェニラに、編入生がやってきたという噂だった。
 転入生ではなく、編入生が、だ。ルフェニラは六年制の学園であり、中等部三年間、高等部三年間といったカリキュラムを組んでいる。基本的に入学試験は中等部のみしか受け付けておらず、高等部に外部試験を設けてはいるが合格定員は少ない。設立から千年の歴史を持つルフェニラは、名門としての格と高水準な教育を保つため、無闇に生徒数を増やすことを嫌っていたのだ。
 そのため、外部入学者はもとより、他校からの転入生を受け入れることも異例だった。ましてや、他校を退学した生徒が、我らがルフェニラに編入してくるなんてあり得ない。大半の生徒はそう考えていた。
 しかし、現実はいつだって凡人の想像を超える。学園側は編入生を、しかもよりによって就学経験の無い生徒を受け入れたそうだ。
 この事実にルフェニラの生徒は大盛り上がり。やれ学園長の隠し子だ愛人だ、実はやんごとなき身分のお方だ、いやいや裏社会の大物が学園を強請って編入させたなど、面白おかしい憶測があちこちに飛び交った。
 彼らにとって真実はどうでも良い。ただ、退屈を紛らわすおもちゃが欲しいだけ。だからこそ生徒達は、突飛な噂話も冗談として受け取り、娯楽の一つとして消費する。
 どんな奴かと楽しみにする者、下卑た妄想をする者、下らないと鼻で笑う者——それぞれ思い思いに、子供達は与えられたおもちゃで遊ぶのだ。
 だが、そんな彼らにも共通点があった。口にせずとも、皆、心の中で無意識に思っていた。

 ——その編入生は、きっと只者ではない。もしかしたら将来、魔導師になるような逸材かもしれない、と。

 何の根拠もない、漠然とした共通認識。憶測と呼ぶにはお粗末で、願望にしては自信に満ちている。子供の勘、とでも言うべきか。
 妄言に近いそれはしかし、意外にも的外れではなかった。
 生徒達の考えは、当たらずといえども遠からず。ただ一人真実を知る学園長のみが、彼らの噂を笑って誤魔化すのであった。

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