病んでる僕は、

蒼紫

文字の大きさ
上 下
53 / 76
【改訂前】なんて面倒くさい…

何も起こらないのが一番

しおりを挟む
「夜霧くん、楽しみだねぇ」
隣に立っていた加奈川くんがふいに声をかけてきた。
ちなみに加奈川くんは鬼ごっこを知っていたみたいだ。
やったことは無いけど知識として知っていたらしい。

「…楽しみ、なんですかね」
正直に言えば、面倒くさい。
走るのは疲れるし、逃げる側になって捕まるのが一番楽……、いや、それだと体育館にずっと待機か。つまらないな。
鬼になって校内を散策しようか。

「初めての鬼ごっこになるからねぇ。みんなも生徒会役員達を捕まえるって意気込んでたねぇ。」

何か楽しい事が起こりそうだ。

手に取るように、そんなことを考えているのが分かる。

「僕は、何も起こらないのが一番だと思いますけどね…」
そう呟くとびっくりしたようにこちらを凝視する加奈川くん。

「あれ?声に出してた?」
「顔に書いてました」
「うっそぉ!?」
ぺたぺたと自分の顔を触る。
…比喩なんだけど。

「では、各クラスにくじの入った箱を配布してあります。白を引いた人は舞台下の箱まで鉢巻きを取りに来てください。」
そう副会長の声でアナウンスが入ると体育館内が騒めきだす。

「はーい、1Aの皆、僕の所まで来てくださーい!」
学級委員長から招集がかかった。
「それじゃ、行こっかぁ」
「…えぇ」

一人一人並んだ順にくじを引いていく。
その度に歓喜の声や悲鳴などが上がる。

「うわぁ!僕逃げだったぁ!会長様捕まえたかったのにぃ…」
「やった!俺鬼だ!」
「なっ、に、逃げる側だとっ…!?これじゃぁ、王道くん達を観察できないじゃねーか!」
「うわぁ、やった!僕鬼だ!」

前から思ってたけど、王道ってなんなんだ?
「王道って何なんだろうねぇ?」
加奈川くんも同じことを考えていたみたいだ。
「僕もよく分かりません」
「だよねぇ。」

そろそろ僕達の番だ。

僕が前に出ると何故か委員長が躊躇いだ。
そんな姿を一瞥してくじを引く。

「…鬼か。」
「あ、あの、えっと引いたものはあちらに…」
「そう…。」
何をそんなに怖がることがあるのか。
暴力など振ってないし、威圧的な態度を取ったつもりも無い。
まぁ、いっか。
僕には関係ないし。

しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

嫌われΩは愛を知る

BL / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:14

俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

BL / 連載中 24h.ポイント:6,497pt お気に入り:1,715

きっと世界は美しい

BL / 完結 24h.ポイント:3,826pt お気に入り:132

心からの愛してる

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,322

願わくば一輪の花束を

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:469pt お気に入り:7

追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:319pt お気に入り:4,033

処理中です...