病んでる僕は、

蒼紫

文字の大きさ
上 下
46 / 76
【改訂前】うるさい

生贄交代〜夜霧side〜

しおりを挟む
教室に戻ると毬藻やその他大勢から好奇の目を向けられた。
黒板に文字を書いていた先生に一礼し席に着くと何処か疲れたようにおかえり、と口を動かす加奈川くん。

どうしたの?と言うように目を向けると分かってるだろ、と睨まれる。
ああ、毬藻か。


その後、4時間授業を受けて分かった。
これは疲れる。

毬藻は授業などどうでもいいようで加奈川くんに媚を売るように話しかけている。
その声がデカい。
発表してる生徒の声も遮るから子鹿のような顔の少年が涙目でプルプル震えていた。

今日は加奈川くんが生贄だ。
最初はなんとか僕を巻き込もうとしていたが保険医によって大袈裟に巻かれた包帯をチラつかせると悔しそうに引き下がってくれた。
その点では保健医に感謝だ。

どうせ今日は授業にならないだろう。

ヘッドホンを付けて机に突っ伏し、そのまま寝ることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

4時間目終了のチャイムが鳴り、身体を起こして加奈川くんの方を見てぎょっとする。

どうやら彼にとってかなりの地獄の4時間だったみたいだ。
生気のない顔で恨めしそうに僕を見ている。

しかし、すぐに顔を明るくさせ、僕に話しかける。

「夜霧くん、手を怪我してたら色々不便だよねぇ?一緒に食堂行こっかぁ」
悪魔の笑みとはこういうものを言うのではないか。
「…御勝手に。」

そう答えると何故か怪我した方とは反対側の手を握られた。
ぎっちりと。

ひっ、となんとも失礼な悲鳴が起こる。

「あっ!翼とお前!なんで手繋いでんだよ!」
「チッ」
…舌打ち聞こえてるよ。
呆れながらもどうすることも出来ず視線をぼんやりとうろつかせていると急に外が騒がしくなった。

ん?

怪訝そうに加奈川くんと顔を見合わす。

静かにドアを開けて入ってきたのはあの無口の男だった。

「書記様っ!?」
「なんでここに!?」
「素敵…!」

あの人書記だったんだ。

ざわざわと騒がしいなか書記さんは僕達の方に近付く。
「あず…や」

僕?
「何ですか?…あ、先程はありがとうございました。」
「だいじょ、ぶ。…い、しょ…しょくど、行こ?」

はぁ…。

「別に、こっち来てからまだリスカやってないし、今日のはたまたまで自分でやったわけじゃないし、監視しなくても大丈夫ですよ」
「ま、だ…?」
僕は何か言っただろうか。
書記さんの目付きが険しいものに変わる。

「また…やる、つも…?」
「…多分。」
「…めっ!」
この男、思ったよりも手が早いみたいだ。
置いてあったノートで僕の頭を軽く叩く。
酷い。

面倒臭いので加奈川くんに手を引かれ、書記さんに見つめられながら食堂に向かった。


勿論、いつも以上に周囲からの殺気を感じたし、書記さんがいることで困惑したような視線も混じっていた。


ああ、そうそう。
毬藻はクラスの別の美形二人と知り合ったらしく仲良さそうに、というよりかは強引に引きずられて───恐らく加奈川くんや僕と関わらせたくないのだろう───教室を出ていった。

しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

ちょろぽよくんはお友達が欲しい

日月ゆの
BL
ふわふわ栗毛色の髪にどんぐりお目々に小さいお鼻と小さいお口。 おまけに性格は皆が心配になるほどぽよぽよしている。 詩音くん。 「えっ?僕とお友達になってくれるのぉ?」 「えへっ!うれしいっ!」 『黒もじゃアフロに瓶底メガネ』と明らかなアンチ系転入生と隣の席になったちょろぽよくんのお友達いっぱいつくりたい高校生活はどうなる?! 「いや……、俺はちょろくねぇよ?ケツの穴なんか掘らせる訳ないだろ。こんなくそガキ共によ!」 表紙はPicrewの「こあくまめーかー😈2nd」で作成しました。

気まぐれ先生の学園生活

海下
BL
これは主人公 成瀬 澪が愛おしまれ可愛がられる。 そんな、物語である。 澪の帝紀生時代もいつか書きたいと思ってます、なんて。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー

Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。 家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。 2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。 ──もう逃がさないから。 誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。 事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。 少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。 生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。 ***** 青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。 ※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。 表紙は友人のkouma.作です♪

眺めるほうが好きなんだ

チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w 顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…! そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!? てな感じの巻き込まれくんでーす♪

処理中です...