43 / 76
【改訂前】うるさい
屋上
しおりを挟む
まあ、保健室に行くつもりはさらさら無い。
包帯はいつも常備してるから。
まさか、こんなに早くこの鍵を使うことになるなんて思わなかった。
父さんからもらった黒いカードを眺める。
『何かあったらこの鍵を使いなさい』
生徒会以外入れないらしい。
ということは生徒会役員がいるかもしれなくて、それで色々バレたら面倒くさい。
だけどまあその時はその時だ。
何とかなるだろう。
やっと階段を登り終え、白い扉が見えた。
カードをかざすとピピッという電子音と共に扉が開く。
ドアの先は、屋上だった。
風が心地良い。
木がそよそよと揺れる音が、時折聞こえる鳥のさえずりが、静寂が、心地良かった。
「あ、こんなことしてる暇無いか…」
パーカーの裏のポケットから包帯を取り出す。
実はこの黒いパーカー、リバーシブルなのだ。
慣れた手つきでくるくると手に巻き付ける。
いつもと比べ物にならない血の量だ。
一度拭いたのに包帯はすっかり赤く染っている。
ぽけーっとまた眺め、そっと手を床に落とし、目をつぶる。
ここは案外いい場所かもしれない。
キィッ
はっと目を開けて慌てて立つとその弾みで何かが音を立てて落ちる。
カランッ
その音で誰かが近付いてきた。
どうすることも出来ずに突っ立っていると、そこに無口な男が近付いてきた。
あ、この前の。
そう思いながらただ見つめているとその男もこちらに気付いた。
しかしすぐに驚いたように近付いてきて、僕の手をとった。
下に落ちたものを見て、目付きが鋭くなる。
「ここ、で…なに、して、た」
ああ、怖い怖い。
「何もしてない。包帯を巻いてただけだし、そのカッターはたまたま落ちただけです」
肩を竦めて答えるとその態度にイラッとしたのかさらに目付きが険しいものになる。
「その…け、が…なに…?」
「…別に、なんでもないです。」
そう、何でもないよ。
フィッと目を逸らして答えると何を思ったのか僕の腕を引っ張って何処かに連れていこうとする。
「何処に行くんですか。」
負けじと踏ん張ると僕を一瞥してから今度はヒョイッと首元を掴んだ。
これじゃあまるで子猫だ。
「ほけ、室…行く」
「…別に大丈夫ですよ、包帯巻いたので」
「そんな、の…めっ!」
いや、別に貴方が心配する事でもないだろうし…。
でもまあ、首根っこを掴まれてるわけだから抵抗も出来ず、ズルズルと保健室まで連行されてしまった。
包帯はいつも常備してるから。
まさか、こんなに早くこの鍵を使うことになるなんて思わなかった。
父さんからもらった黒いカードを眺める。
『何かあったらこの鍵を使いなさい』
生徒会以外入れないらしい。
ということは生徒会役員がいるかもしれなくて、それで色々バレたら面倒くさい。
だけどまあその時はその時だ。
何とかなるだろう。
やっと階段を登り終え、白い扉が見えた。
カードをかざすとピピッという電子音と共に扉が開く。
ドアの先は、屋上だった。
風が心地良い。
木がそよそよと揺れる音が、時折聞こえる鳥のさえずりが、静寂が、心地良かった。
「あ、こんなことしてる暇無いか…」
パーカーの裏のポケットから包帯を取り出す。
実はこの黒いパーカー、リバーシブルなのだ。
慣れた手つきでくるくると手に巻き付ける。
いつもと比べ物にならない血の量だ。
一度拭いたのに包帯はすっかり赤く染っている。
ぽけーっとまた眺め、そっと手を床に落とし、目をつぶる。
ここは案外いい場所かもしれない。
キィッ
はっと目を開けて慌てて立つとその弾みで何かが音を立てて落ちる。
カランッ
その音で誰かが近付いてきた。
どうすることも出来ずに突っ立っていると、そこに無口な男が近付いてきた。
あ、この前の。
そう思いながらただ見つめているとその男もこちらに気付いた。
しかしすぐに驚いたように近付いてきて、僕の手をとった。
下に落ちたものを見て、目付きが鋭くなる。
「ここ、で…なに、して、た」
ああ、怖い怖い。
「何もしてない。包帯を巻いてただけだし、そのカッターはたまたま落ちただけです」
肩を竦めて答えるとその態度にイラッとしたのかさらに目付きが険しいものになる。
「その…け、が…なに…?」
「…別に、なんでもないです。」
そう、何でもないよ。
フィッと目を逸らして答えると何を思ったのか僕の腕を引っ張って何処かに連れていこうとする。
「何処に行くんですか。」
負けじと踏ん張ると僕を一瞥してから今度はヒョイッと首元を掴んだ。
これじゃあまるで子猫だ。
「ほけ、室…行く」
「…別に大丈夫ですよ、包帯巻いたので」
「そんな、の…めっ!」
いや、別に貴方が心配する事でもないだろうし…。
でもまあ、首根っこを掴まれてるわけだから抵抗も出来ず、ズルズルと保健室まで連行されてしまった。
15
お気に入りに追加
490
あなたにおすすめの小説
秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー
Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。
家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。
2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。
──もう逃がさないから。
誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。
事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。
少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。
生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。
*****
青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。
※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。
表紙は友人のkouma.作です♪

眺めるほうが好きなんだ
チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w
顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…!
そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!?
てな感じの巻き込まれくんでーす♪

お飾りは花だけにしとけ
イケのタコ
BL
王道学園で風紀委員長×生徒会長です
普通の性格なのに俺様と偽る会長に少しの出来事が起きる
平凡な性格で見た目もどこにでもいるような生徒の桃谷。
ある日、学園で一二を争うほどの人気である生徒会ほぼ全員が風紀委員会によって辞めさせられる事態に
次の生徒会は誰になるんだろうかと、生徒全員が考えている中、桃谷の元に理事長の部下と名乗る者が現れ『生徒会長になりませんか』と言われる
当然、桃谷は役者不足だと断るが……
生徒会長になった桃谷が様々な事に巻き込まれていくお話です

最弱伝説俺
京香
BL
元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!
有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?



推しを擁護したくて何が悪い!
人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。
その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。
理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。
そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。
「凛に危害を加えるやつは許さない。」
※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。
※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。

BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる