病んでる僕は、

【改訂前】始まり

花坂学園

山奥にある、辺りにそぐわない、洋風な大きな建物の前に、黒髪の、比較的小柄な少年が佇んでいた。
少年の足元には大きなスーツケースとリュックが置かれている。

その建物の前には「私立花坂学園」と掘られた石碑があり、その少年の持つ荷物の量からして、転校生だと伺えた。

しかし、今は5月7日。
こんな時期に転校生、何か変わった事情があるのだろうか。

するといつの間にか、まるで聖女のような容姿をした、それでいて柔らかく低い声の青年が現れた。
「お待たせしました。あなたが転校生の東屋 夜霧(ｱｽﾞﾏﾔﾖｷﾞﾘ)さんですか？」
「…そうです。」
その青年は少年の返事を聞くと、速やかに無駄のない動きでリモコンらしきものを取り出しボタンを押した。
ピッピッピッピッ
ウィーーーン
門が開く。

「どうぞお入りください。」
「はい。」

「私はここ、花坂学園の副会長をしている田無南月(ﾀﾅｼﾅﾂﾞｷ)と申します」
にこり、と効果音の着きそうな笑顔であるが夜霧と呼ばれた少年は全く持って興味が無いのかチラッと見ただけですぐに目を逸らした。
「…よろしくお願いします。」