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047. 朝方の街路
しおりを挟む暖かい日差しが町並みを明るく彩り、
各所の店先は人の話し声で賑わいを見せ始めている。
宿屋の扉の脇には巨躯の狼の獣人と、あどけない小さな少女が
朝の清々しい空気を堪能している。
両腕をぐっと伸ばし、大口を開けて欠伸をしているリリナ。
柔らかな光が緩やかに覚醒を促してくれる。
――キイィ。
宿屋の扉が開き、中から興奮冷めやらぬ猫の半人が慌てて出てきた。
「――ごめんっ!
はっ……! ふぅ……。
お待たせ……っ!」
何かをやり切った表情をしながら合流するアシュリィ。
どことなく誇らしげだ。
「いや……気にするな。」
特段悪い気はしないものの、
どういう表情をすれば良いのか分からず
困惑しながら返事をしてしまう。
そして、リリナの歩調に合うようにゆっくりと先導をしていくラウル。
――
三叉路の真中の道を少し進む。
入口から来た道だ。
進行方向を逆にすることでまた違った景色が目に入ってくる。
遠くの方には、この町に来る前に登った大きな丘が見えている。
きっと番小屋では、今も気の良い馬の獣人がのんびりと仕事を全うしていることだろう。
― 明日、ここを出発しなくてはな……。
ふと、後ろをついてくるリリナを見る。
その視線に気付き、にこりと笑顔で見上げてくる。
「……っ。」
言葉が詰まるが、ふっと息を漏らし微笑みながらこう尋ねる。
「そういえば、このまま遺物屋に行くが良かったか?」
「いぶつや!
昨日言ってたお店!」
思っていたよりも興味があったらしい。
急に興奮し始め、すぐ横を歩いていたアシュリィの手を握り
ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
急に手を握られて驚いた様子のアシュリィだったが、
握られていない方の手を自分の頬に当て、
悦に入っているようだ。
――少し歩き……。
宿屋へ来る途中に見つけた遺物屋に辿り着く。
扉の上には質素な看板があり、
店の中を見ることができるように透明の樹脂で窓が作られている。
木造建築で年季の入っているような店構えだが、
木そのものを遺物などで修復しているのか
所々、木と木の繋ぎ目が無くなっている。
よくよく見ると薄ら光沢があり、質感すら変化しているようだ。
「……。」
苦虫を嚙み潰したような顔をしているアシュリィ。
「ん? 何かあるのか?
てっきり『星の道』関連だから喜ぶものかと思っていたが。」
「う~……遺物屋そのものは良いんだけどね……。
ここのご主人がちょっと……ね……。」
目を細くし、悩んでいる。
「何だったら俺一人で用事を済ませてくる。
この辺でリリナと待っていてもらえるか?」
「あ~…うんっ。それなら喜んでっ。」
顔が急にぱっと明るくなる。
そうと決まればという勢いでリリナの方を向くと。
「……いぶつや……行かないの……?」
手を握ったまま、寂しそうな困り眉でこちらを見上げているリリナ。
とても行きたそうな気持ちが伝わってくるが、
半面、無理強いをさせたくないという優しさがアシュリィを突き動かす。
「ううん!! 行こっか!! 行きたいな!!!」
「ほんとっ!?」
それを聞いたリリナが眩しい笑顔をアシュリィに向ける。
「くっ……!」
思わずリリナから顔を反らし、
辛そうな、嬉しそうな難しい表情をしている。
無意識なのか、尻尾をリリナの体にぽふん、ぽふんと当てている。
リリナはリリナでそれが構われているようで嬉しいらしい。
――その傍らにはアシュリィに同情の優しい眼差しを向けるラウルの姿があった。
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