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028. 霞光の夢幻
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―――あたたかい。
大きくて優しい手。
よく顔は見えないけれど、私に首飾りをかけてくれている。
――うしろ?
光。光が見える。
どこか冷たくて、眩しくて優しい光。
不思議な光。
これはなに――?
……あれ?
優しい手の人がいない。
どこ?
どこ……どこにいったの……?
―――みんな。
―――。
………。
どうやら眠ってしまっていたようだ。
柔らかな寝床、そしていつの間にか暖かな布が掛けられている。
「う……ん……。」
横のまま伸びをする。
「うん? すまない、起こしたか?」
荷物整理を終え、扉の方から歩いてくるラウル。
手には飲み物を二つ持っている。
目の横を涙が流れていることに気付き、慌てて顔を拭う。
――何の夢を見ていたかは覚えていない。
「ううん、だいじょうぶ……。
アシュリィは……?」
「さすがに帰ったさ。
そろそろ夕飯時も終わる。
寝起きだと辛いかもしれないが、食事は済ませたいところだな。」
そういうと、一つの小さい器をリリナに手渡す。
「果実水。
少しくらいは飲んでおいた方がいいだろう。」
寝起きで喉が渇いている。
「ありがと……。」
目をしぱしぱとさせながら器を受け取り、口に運ぶ。
まず一口。
匂いはあまりしない。
が、爽やかな甘みとほんの少しの酸味で口が潤っていく。
「……おいしっ。」
どうやらお気に召したらしい。
一口飲んでは笑顔になり、一口飲んでは美味しそうに息をつく。
「飲み終えたら下の階で食事だ。
聞いてみたらまだやっているそうだったからな。」
食事と聞いてお腹に手を当ててみる。
そういえば朝食の干し肉以降、途中途中で木の実を口にしたくらいだ。
意識すると段々空腹が露わになってくる。
「お腹すいた……。」
そう言うと残りの果実水をくぴくぴと喉に流し込んでいく。
「あまり急がなくてもいいぞ。」
と諫めるラウルを余所に綺麗に飲み干し、
寝床から降りて器を机の上に置く。
髪を撫でるように押さえ、衣服を叩いて皺を伸ばし、
いそいそと身だしなみを整えている。
寝床に座り、獣人用の注ぎ口付きの器で果実水を飲んでいるラウル。
ふと、座っている寝床の縁に指先を乗せ、
目から上の頭を覗かせているリリナと目が合う。
きらきらと上目遣いで何かを訴えている。
「……行くとしよう。」
飲みかけの器を机の上に置き、共に階下へと向かう。
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