女子中学生と魔法使い

青村砂希

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第8章

08-04 世界中から恨まれても

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 その後、みんなとの話し合いによって、アノンさんに拘束の必要は無いとの判断から、私たちと同じ一室をアノンさんにも利用してもらう事となった。

 私は先ほど、アノンさんに酷い事を言ってしまった。
 アノンさんは、危険なウイルスのワクチンを開発しただけだ。
 しかしそのワクチンが完成した事で、そのウイルスが兵器として利用されてしまった。

 そう、それは、私も同じだ。
 私が電磁パルス砲を完成させた事で、戦端が開かれた。

 私が犯した過ちで、数十万人が死んだ?
 この過ち、どうやってつぐなえばいい?
 なんか、もう、頭の中が真っ白だ。

 ・・・・・・

 アノンさんとの話しの後、私は何をしていたのか覚えていない。
 ただ、頭の中が、ふわふわしている。

 寝る時間になったので、ベッドに入り、横になった。
 なんだか眠れそうにない。

 お酒でも飲もうと、食堂へ向かった。
 薄暗い食堂に……誰かいる。

 アノンさんだ。
 アノンさんは手に果物ナイフを持っている。
 その刃先を自分の首に当て、アノンさんは上を向いた。

 私は音を立てずにアノンさんに近づき、ナイフを持った手を後ろから掴んだ。

 アノンさんはびっくりして振り向いた。
 私はナイフを持ったアノンの手を握り、そのままテーブルに叩きつけた。

 何度も何度も叩きつけた。
 アノンの手から、ナイフがはじけ飛んだ。

 私はそのままアノンを振り回し、横にあった食器棚に叩きつけた。
 大きな音とともに食器棚の扉が開き、中の食器が床に落ちた。

 アノンは、床に崩れた。
 そのアノンを無理やり引き起こし、アノンを抱きしめて声をあげて泣いた。

 なんか、もう、みんな狂ってる。

 私とアノンは膝から崩れ落ちた。

 大きな音に、詩織、それとBMさん達、CMさん達が、駆け付けた。

 その後、私とアノンさんは、別々のリザーブルームに入れられた。
 私のリザーブルームの外で、詩織が心配そうに私を見ていた。

 ・・・・・・

 次の日、CMさんが私のリザーブルームを訪れた。
 一番年配という事で、CMさんが話しに来たようだ。

 最初に私は謝罪した。
「昨日は、大変ご心配、ご迷惑をおかけしました。私は大丈夫です。この部屋から出して下さい。それと、私が責任を持ちますので、アノンさんもリザーブルームから出してあげて下さい。そして、アノンさんと話しをさせて下さい」

 CMさんは、私の目を見て「わかった」と言ってくれた。

 私はアノンさんのリザーブルームに話しをしに行った。

 最初に私は、アノンさんに伝えた。
「あの、ロフテッド軌道の高速飛翔体を撃ち落としたのは、私が造った電磁パルス砲です」
 アノンさんは驚いた。

「私は貴女に『何人殺した』と責めました。しかしそれは、私の犯してしまった過ちから、目を逸らしたかったからなのでしょう。私が造らなければ戦端は開かれなかった。私は貴女以上の過ちを犯してしまった」

 アノンさんは、ただ黙って私を見ている。

 私は話しを続けた。
「それでも私には、世界中の人から恨まれても、守りたい人が居ます」

 アノンさんが割り込んだ。
「その方は、詩織さんですね」

 私は答えた。
「はい」

 そして私はアノンさんに言った。
「貴女も、このシェルターから出たら、世界中の人から恨まれても、守りたい人を見つけて下さい」

 アノンさんは、私の目を見て応えた。
「はい」

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 次回:探索
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