女子中学生との婚約

青村砂希

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第2章

02-02 学校での詩織

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 詩織と一緒に夕食を頂きながら、私は詩織に訊いてみた。
「詩織は学校で、友達とどんな話し、しているの?」

 あまり干渉してはいけないと思っているが、私は詩織の学校生活が気になっていた。
「友達とですか?……私あまり友達と話しをしないんです」
 ……やはり想像通りだ。

「どうしてだろう?」
「友達と話しをすると……嫌われちゃうというか……」
 ……これも想像通りだ。

「ん……なんでだろうねぇ」
「……実は私、クラスで孤立しているんです」
 ……これは、ちょっと想像していたよりも深刻だ。

「……」
「わたし、友達と話しをすると、友達に質問して……それが友達を追い詰めてしまうようで……そんな気持ちは全然無いのに」

 ……真剣に話しをしようとすると、相手を追い詰めてしまう。
 だから無難な内容で話をする。
 日本人特有の、衝突を避ける事が美徳とされている文化だ。
 中学生なら、そうかもしれない。

 ただ詩織にとって、調子を合わせるだけの会話は苦手なのだろう。
 そんな所から、詩織は年上の相手に目を向けるようになってしまったのかもしれない?

「詩織が言われた『話し』は、『議論』になってしまうのでしょう」
「……はい」

「私は議論しても、相手を追い詰める事や、衝突する事はありません」
「……何故ですか?」
 詩織は、不思議な表情を浮べた。

「それは、議論に対する考え方かな」
「考え方?」

「私にとって、議論は討論ではありません。勝ち負けではない。また、相手を論破するものでもありません」
「はい、私もその考えです」

「では、何故衝突してしまうのでしょう」
「そもそも議論とは、お互いが異なった考えだからではないでしょうか」

「そうですね。同じ考えであれば、議論になりません。しかし異なった考えどうしが自分の考えを主張する。だから衝突するのです」
「はい」

「私が行う議論とは、お互いが協力して、より良い答えを『探す』行為です」
「より良い答えを探す行為」

「それには、お互いが向き合うのではなく、お互いが同じ方向へ目を向ける」
「向き合うのではなく……」

「つまり、向ける相手は議論している相手ではなく、神……真理なのです」
「真理」

「先ほどの話に戻りますが、お互いが自分の考えを『主張する』ではなく『説明する』に、なります」
「なるほどです」

「そしてお互いに、相手の考えを理解しましょう」
「でも……相手の考えに理解出来ない事もあります」

「はい。ここで言葉を定義しましょう」
「はい」

「理解と同意は異なる概念と、ここでは定義します」
「理解と同意」

「つまり『理解出来るが、同意出来ない』が、成り立ちます」
「了解しました」

「同意出来なくても、理解は出来ます。まずは、相手の考えを理解する事に勉めましょう。相手の考えを理解しないで反論するのは、不毛ですよね」
「同意です」

「理解した上で、同意出来ない理由を『説明』しましょう」
「なるほどです」

「そこで、注意が必要です。相手の考えを、簡単に理解出来たと思ってはいけません。それは、単に言葉の理解です。そこで、『あなたの考えを、私はこのように理解したが、ズレていないか?』等と、確認しながら議論しましょう。そうする事で、ようやく相手の考えに、自分の理解が近づくのです」
「了解しました」

「そうした議論の中で、『なるほどねー』といった発見があれば、それこそが、議論を行う目的ではないでしょうか」
「はい」

 今日は詩織に、いい話をした。
 詩織から、尊敬の眼差しを感じる。
 どうやら私への想いが、また1ポイント上がったようだ。

 ふっ、ふっ、ふっ……女子中学生……ちょろいもんだ。
 このまま詩織の心を掴んでいれば、詩織は私から離れない。
 4年後、私と詩織が婚姻届けを出す為に、詩織の心を繋ぎ止めて置かなければならない。

 ……その時の私は、詩織の心を掴んでいるつもりだった。
 詩織が向ける熱い眼差しに、私は酔いしれていた。
 その時の私は、気付いていなかった。
 心を奪われているのは……私の方だった。
 私の方が……ちょろかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いやいや、そもそも詩織さんは、令さんの心を盗もうと、熱い眼差しを向けてる訳ではありませんから。
 言わば令さんの一人相撲。
 恥しいですね~

 次回:詩織さんとデート
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