【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第8章

8-04(最終話)夢の終わり

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 私が明里に婚姻届けを渡した時、4年後を約束した。

 この約束、私から反故にする事は出来ないが、明里から反故にする事は出来る。
 フェアーでない約束事であるが、私が自ら行った。

 そこには、1つの想いが私にはあった。
 私は明里を信じたい。
 そう、あれは、祈りのようなものだった。

 明里との別居が始まってから、私はどこで間違えたのだろう。
 日を追うごとに、明里の頭の中が、別の事に支配されていくのを感じた。

 私は、それを黙って見ていた。
 私は明里を信じている。
 ただ、それだけを自分に言い聞かせて。

 だが、明里が院試を受けると言った時、私は反対した。
 明里が奪われる。
 明里の心が、私から離れていく……。

 明里を責めてはいけない。
 そういった思いから、私から連絡はしなかった。
 今の私には、明里を追いかける気持ちも湧いてこない。
 私はつくづく……ダメダメである。

 ベランダに出た。
 外は暗くなり始めた。
 そう、以前ここで、流れ星を見つける為、二人で星空を見ていた。
 最初の流れ星を私と見たいと言って、合宿を途中で引き返してきたと言っていた。

 部屋に入り、電気をつけないままリビングの椅子に座った。
 このテーブルで、明里と向かい合って受験勉強をした。
 私の話しを、興味深く聞いていた。
 ……いいだった。

 これは、夢をみてしまった結果だろう。

 外は暗くなり、私の部屋は真っ暗になった。
 ……あかりが……きえた。

 ・・・・・・

 3年の予定としての赴任であったが、仕事が一段落していない。
 それと東京へ戻る目的がなくなってしまった。
 私は赴任の延長を受諾した。

 ・・・・・・

 それから2年が経ち、仕事も一段落した事で、私は東京の研究所へ戻る事となった。
 第3研であった私の所属は、第1研へ異動となった。
 そして、主幹の肩書きが与えられた。

 しかし、明里と別れてからの私は、何もかもが色あせて見える。
 胸に大きな穴が空いてしまったようだ。
 改めて明里の存在の大きさを思い知らされた。

 会社の窓から満開の桜が見える。
 冬が終わり新たな季節の始まりを伝えてくれる。

 明里と別れて3度目の季節が始まった。
 自分の気持ちを立て直さなければいけない。
 今年も自分自身に言い聞かせる。

 会社も今日から新年度となる。
 第1研で、年度始めの集会が行われた。
 碧が新入社員の1人と話しをしている。
「今後とも、よろしくお願い致します」

 ……この声?
 新入社員の女性は私に振り向いた。

 ……なんで……ここに?

 明里は笑顔を向けて私に言った。
「やっとここまで来れました」
 ……

 私は大きく息を吐いた。
 私は……返す言葉が見つからなかった。

【 完 】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 【家出少女に生活支援】に、最後までお付き合い頂きまして、
 本当にありがとうございました。

 その後のお話しは、別タイトルとなっております。
 その小説のタイトルは【婚姻届の行方】です。

 また、この小説に出て来たおじさんの元婚約者、
 裕子さんを主人公としたスピンオフ小説になりますが、
 タイトルは【至福のひと時】です。

 合わせてお読み頂ければ嬉しいです。
 今後とも、お付き合い頂けますよう、お願い致します m(_ _)m
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