【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

文字の大きさ
上 下
87 / 88
第8章

8-03 約束の日

しおりを挟む
 私が赴任して2年が過ぎ、明里は現在、大学3年になった。

 明里の大学は3年になるとゼミが始まり、4年から入る研究室を選ぶ為に、各研究室をまわる。
 明里はそこで、大変興味を引く研究室に出会い、その研究室に入る事を強く望んだ。

・・・・・・

 そして明里は4年になった。
 明里の3年間の総合成績は、上位30%との事。
 大学院への推薦入試資格は、上位50%との事で、このまま大学院へ進学する事が出来るだろう。

 この総合成績は、ぎりぎりの成績で入学出来た明里にとって、1年の成績が足を引っ張っている。
 3年の成績だけを見れば、上位5%に位置している。
 よく頑張りましたと言ってあげたい。

 そして明里は念願の研究室に入る事が出来た。
 しかしここで、想定外の問題が起きた。
 明里はこの研究室で、このまま大学院へ進む事を望んでいた。
 しかし、その研究室の担当教授は今年一杯で、来年度からは自分の出身であるK大学へ籍を移すとの事である。

 明里は担当教授に相談した。
 するとその教授から、1つの提案がなされた。
「私が籍を移すK大学の大学院を受験してみませんか」

 明里は、ネットのビデオ通話で私に伝えてきた。
 他大学の大学院を受験するとなれば、今の大学の推薦資格は失う事になる。
 私は、慌てた。
 そして強く反対した。

「せっかく推薦で大学院へ進めるのだから」
「……」
「何処か他に、興味持てそうな別の研究室……ないの?」
 ……明里は、感情のない目を私に向けている。

 そう、私は気付いてしまった。
 これは、私の嫉妬だ。
 明里の心が、明里の研究室の教授に向いている。
 明里が……奪われる。

「もうすぐ、私の赴任も終了して、東京へ戻れるから」
「……」
 明里は、何も返さなかった。

・・・・・・

 そして明里は、K大学の大学院を受験した。
 K大学といえば、日本を代表する関西の大学である。
 大学院一般入試の試験勉強等してこなかったはずだ。

 しかし明里は合格した。
 大学院の入試は、大学の入試と大きく異なる。
 これは、研究室担当教授の裁量権によるものかもしれない。

 以前、明里の生活を支援していた頃、決して私は明里を閉じ込めていた訳ではない。
 しかし明里にしてみれば、自分は籠の中の鳥で、籠の外へ出たら経済的に生きていけない。

 だが、義父からお金を返された今、明里にとっての籠は消え去り、自由に好きな所へ飛んでいける。
 明里は大学卒業と共に私のマンションを出て、K大学の関西へ引っ越した。

 私は有給休暇を申請して、私のマンションに帰った。
 室内は、綺麗に整っていた。
 明里に提供していた部屋を開けた。
 その部屋には……何も無かった。

 以前明里が言っていた。
『私が帰って来ても、この部屋は、このままだよね』
 これは、あの時の明里が怯えていた景色なのだろう。

 明里がK大学の院試を受けると言った時、賛成し、応援するべきであった。
 私はいつも大切な所で間違える。

 ……いや、どちらにしても、明里は出ていっただろう。
 同じ事だ。
 そう自分に言い聞かせた。

 あれから4年が経った。
 約束の日。
 それは、明里が卒業する年の3月31日。

 婚姻届けは……出されなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:(最終話) 夢の終わり
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...