【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第7章

7-12 避けていた領域

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 自宅へ着くと、10時を過ぎていた。

 いつものように明里が迎えてくれた。
「おかえりなさい」

 ……何かいつもと違う。
 思いつめたような表情だ。

「どうした」
 私は声をかけたが、明里は返さない。
 こんな明里は、初めてである。

 ただ事ではない。
 私は、椅子に腰かけた。
 沈黙が続く。

 しばらくすると、明里が私に言った。
「お話しがあります」

 ……まずい。
 私の直感が伝える。
「……はい」

 緊張が走った。
 この話、対応を誤ると、取り返しがつかない。

「私、おじさんの、何でしょう」
 明里は、今まで避けていた領域に踏み込んできた。
 そう、その事は、暗黙のうちに、お互い触れない事にしていた。
 はっきりさせてしまうと、その先が見通せないからだ。

「私、このままおじさんを待ち続けて……いいの?」
 ここで言う『待ち続けて』とは、私の帰りではない。
 この先、おじさんと一緒になれるでしょうか? という意味だ。

 怖いはずだ。
 私の答え1つで、明里の明日が変わる。
 相当悩んだあげく、踏み込んだ事が伺える。

 私は、答えた。
「それは、明里が卒業するまで、待ってくれと約束したはずだ」

 私の答えに、明里は下を向いて返した。
「このまま……待ち続けるの……出来そうにありません」

 私は、一呼吸置いて訊ねた。
「……なぜ?」

「だって私、おじさんから信じられるもの、何も持っていません!」
 訴えるような口調だった。

 そう、私は明里に対して、将来を約束するもの、何も与えていない。
 ……体の関係も含めて。

 それは、私が明里を信用していないからだ。
 いや、まだ子供だからと言った方が正しい。
 若い頃は、将来を見通せない。
 気の迷いかもしれない。
 本当に、私と生涯を共に過ごせるのか?

 明里は怯えた表情で……目に涙を溜めている。
 大きな覚悟が見て取れる。

 私は無言のまま席を立ち、自分の部屋に入った。
 リビングから、声を殺した泣き声が聞こえてくる。
 拒絶された……そう受け止められたのか。

 私は引き出しから封筒を取り出し、リビングに戻った。
 明里は、戻って来た私に驚いた表情だった。

 私は、その封筒を明里に渡して言った。
「これを明里に預ける」

 明里は封筒を受け取り、中から1枚の紙を取り出した。
 その紙は、私の名前を書いた婚姻届け。
 そして、記した届出日は、今から4年後の3月31日。
 明里が大学を卒業する年である。

 明里は震える手でその紙を掴みながら声を殺さずに泣いた。
 おそらく、この様な泣き方、幼少の頃にはなかったのだろう。
 常に自分を抑えながら、生きてきたような娘だ。

 私は、知らず知らずの内、明里に甘えていたのだろう。
 そして、明里を追い詰めていたのかもしれない。

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 次回:(第7章 最終話)ダメーッ!
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