【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第7章

7-10 私にだって、プライドがある

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 新たな1週間が始まった。
 我々が社員寮を利用して、泊まり込んで仕事している事が、噂になっていた。

 社員寮の利用と毎晩の深夜宴会、……もとい、深夜の検討会議のお陰で、プロジェクトの見通しが立ってきた。
 今後、碧の立てた内容で進めていく。
 もう1度、全体会議を開く必要があるだろう。

 その時、このプロジェクトの統括、スコッチの主任が、私と打合せをしたいと言ってきた。
 私は、予約した会議室で、彼と向き合う。

 最初に彼が切り出した。
「今回のプロジェクトで、私は統括を降りようと思う」
 しばらく沈黙が続いた。
 そう、今回のプロジェクト、私はポンコツだが、彼は私同様にダメダメである。

 いや、正しくいうと今回のプロジェクト、碧以外、深いところへは、誰も手が出せない。

 私は言った。
「このプロジェクトが失敗した時、その責任を取る為に貴方は居るのです」
「……」
「まあ、私も副統括という事で、ただで済むとは思っていませんが」
「……すまない」

「大丈夫ですよ。何と言っても、水瀬碧が監督ですから」
「……」
「このプロジェクト、成功させれば貴方の業績です。ですから、絶対に成功させましょう」

 彼は私に聞いた。
「私は、どうしたらいい」
 私は答えた。
「私の下に就いて下さい」

 しばらく沈黙が続いた後、彼は答えた。
「了解した」

 その答えを聞いて、私は確信した。
 彼にとって、今回のプロジェックトからの評価等、眼中にないのだろう。
 成功させる為なら、何でもする。
 彼から見て、格下である私の下に就いてでも。
 ……このプライド、私は好きだ。

 彼は、自分も社員寮の利用を申請すると言い出した。
 私は、それに対して反対した。
「プロジェクトの統括である貴方は、全体を見なければいけません。 それに、貴方が申請すれば、このプロジェクトに参加している人の多くが申請するでしょう。 今の時点で、それは良い流れに繋がらないと思います」
「……そうかもしれない」

「今回のプロジェクト、深いところは碧以外、誰も手が出せない。 しかし、このままでは困ります。 碧の基礎検討が一段落したら、勉強会を開きましょう。 そして、今後はもっと密に、貴方と情報の共有を図りたい」

 このような話し合いのもとで、ストロベリーとスコッチのメンバーとは、1日1回、合同で打合せを行う事となった。

 それ以降、話がスムーズに進む。
 このプロジェクトに参加している人達の認識が変わったのだ。
 碧とスコッチ主任との関係が復活した。

 第3研である碧の指示は、スコッチ主任とコンセンサスが取れている。
 それは、彼らにとって安心して受ける事の出来る指示となった。

 私は、言ってみれば、お飾りの副統括である。
 私にだって、プライドがある。
 ここは1つ、プロジェクト成功の為、

 ・・・・・・

 しかし、ストロベリーのメンバーは、それを許さなかった。
 事ある度に、私をアピールしてくれる。
 千広さんなんか、私を見下す第1研の研究員に対して、『なんなんですか、あなた達は……』と、言い放ったらしい。

 千広さ~ん、人それぞれ、役割分担ありますから、私の見下され役を壊さないで下さ~い。

 すると、リーダー君が怖い顔して言った。
「見下され役は私が担当しますから、主任には、もっとやるべき事、あるでしょう」

 ……ん~、こそ~っと、バレていたようだ。〔←やっぱし!〕

 だが、見下され役、リーダー君では務まらない。
 この大勢で進めるプロジェクト、全体をうまく回す為には、私のような上に居ながら、残念な人間が必要なのですよ。
 時として、プロジェクトの足を引っ張るような……。

・・・・・・

 日曜の昼過ぎ、自宅へ帰ると、明里は切ない表情で迎えてくれた。
 明里と一緒に、夕食を頂いた。

 そして、月曜の朝、明里は会社に向かう私に声を掛けた。
「おじさん、本当に……体を壊さないようにね」
「ああ、ありがとう」

 明里は、私を心配してくれている。
 私は、その言葉に甘えていた。
 大切な事を見落としていた。

 ……心配しなければいけないのは、私の方だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 おじさんの頭の中の真ん中にあるもの。
 それは、野心であり、夢であり、男のロマンであり……。
 はい、嘘です。ごめんなさい。
 おじさんの頭の中の真ん中にあるもの……それは、お花畑です。

 次回:実に嘆かわしい
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