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第6章
6-17 (第6章 最終話)私が原因ですね
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機材を研究室に持ち帰ると、リーダー君が言った。
「主任、デモ成功を祝して、打ち上げしましょう」
「ああ、みんな予定大丈夫かな」
「大丈夫です」
「OKです」
「行きましょう」
「参加させて下さい」
「じゃあ、打ち上げ開始時刻と場所を決めて、私の携帯に送ってくれる」
「はい」
「今度は〇〇にしましょうよ~」
「いや~ここはどうですかぁ?」
・・・・・・
私は、部長室を尋ねた。
すると、さっき高速化の質問をした第2研の男が居た。
彼は、私を見るなり、
「先ほどは、お疲れ様でした」と、私に挨拶し、
「では、私はこれで」と言って部屋を出た。
私は、部長に訊ねた。
「彼は、どういった要件でここへ来られているのですか? 以前もここでお見受けしましたが」
しばらく沈黙が続き、部長が話し始めた。
「デモ、ご苦労。成功だよ」
「……はい」
「今後、このプロジェクトは、第2研の彼のチームに引き継いでもらう」
「えっ……」
なんとなく、嫌な予感がしていたが、これは想定していなかった。
「……どういった事なのですか」
「事の発端は、水瀬君だ」
「……はあ?」
「第1研で、大きなプロジェクトの準備が進められている。これは、水瀬君が第1研に籍を置いていた時から、水面下で進められていた」
「……だから第1研は、何が何でも水瀬さんを手放したくなかったのですね」
「このプロジェクトは、彼女の参加が大前提と考えているらしい」
「……」
「それで、今の君の3Dプリンターの開発を終了させて、君達のチームはこの新しいプロジェクトに本腰いれてほしいとの事だ」
「……いや~カラー化に向けて、みんな喜ぶと思っていたのですが」
「実はこの3Dプリンター、今回のデモを終えて、第3研の開発部から事業部へ移管させる方向で話は進んでいた。しかし丁度その時、3色試薬が完成した。 そうなると、3Dカラープリンターが可能になる。 そこで、もう一度見直しが入った。 この3Dプリンターを引き継げそうな所、という事で、さっきの第2研の彼のチームが選ばれた」
私は、大きく息を吐いた。
「そうですか」
「ただ、彼は難色を示していた。 解決困難な問題を、いくつも想定していたようだ。 そこで、今回のデモを見て、受けるかどうか決めさせてほしいとの申し出があった。 そして先ほど、正式に快諾の旨を伝えに来てくれた」
「……そうですか」
「という訳で、今週中に、彼のチームへの引き継ぎ作業を終わらせてほしい。 来週から新しいプロジェクトが正式に動き出す」
「……はぁ~……私には……選択の余地……ないのですね」
「君が水瀬君を受け入れると言った時点で、それはもう、無い」
「……はぁ~」
「いいか、君にとって部下は戦力だ。 君は今、莫大な戦力を収めている。 この事を忘れてはいけない」
「……はぁ~」
「……」
「……失礼します」
私は、うな垂れたポーズを部長に見せつけながら、部長の部屋を出た。
スマホを見ると、打ち上げ開始時刻と場所のメールが届いていた。
「早く来て下さい! みんな待ってま~す!」
よし!
この事をみんなに伝えるのは明日にして、今日はみんなで、ぱ~っと飲もう。
そう決めた。
打ち上げのお店に着くと、みんな既に始まっていた。
リーダー君が仕切っている。
「え~では、デモ成功を祝って、主任からひと言頂きましょう」
みんな静まり返った。
「みなさん、お疲れ様でした。 優秀な皆さんが集まると、大抵の事はなんとかなるんだな~という事を、改めて思いました。 これからもよろしくお願いします。 という事で、みなさん、乾杯しましょう。……今日の成功を祝って、カンバーイ」
「カンパーイ」
パチパチパチと拍手を頂いた。
第1研所属の千広も、今ではすっかりなじんでいる。
良かった。
リーダー君は、相変わらず綾乃に絡んでいる。
インテリ君は……あれ? 千広さんねらい?
その時、碧が私の横に来て、お酌しながら小声で話しをしてきた。
「お疲れ様です」
「碧さんこそ、お疲れ様です」
「主任」
「はい」
「何かありましたね」
「……いや」
「……私が原因ですね」
なるほど、碧はだいたい、情報を掴んでいるようだ。
私は、小さく息を吐いて言った。
「貴女を第1研から奪い取ろうと決めた時、その覚悟は出来ています」
……
碧は上目遣いで私を睨み、大きな声で私に言った。
「しゅにん、またわたしをくどこうとしているー」
一斉にみんな、こっちを向いた。
「「え゛ーーーっ!」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本話までが、第6章となります。
ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
第6章は、おじさんの仕事の具体的な内容に、多くの読者さまが離れてしまいました。〔←面白くないぞー!〕
そこで次回からは、おじさんの仕事も、ふわっとした内容にとどめました。
どうか、これからも、お付き合い下さい m(_ _)m
明里さんの学祭が始まりました。
おじさんは、明里さんのネコ耳メイドさんの装いを見に行きたいようです。
しかし、おじさんが1人で見に行く……これは恥しい。
チキンおじさんには、その開き直りが無いようです。
次回:明里の学祭
「主任、デモ成功を祝して、打ち上げしましょう」
「ああ、みんな予定大丈夫かな」
「大丈夫です」
「OKです」
「行きましょう」
「参加させて下さい」
「じゃあ、打ち上げ開始時刻と場所を決めて、私の携帯に送ってくれる」
「はい」
「今度は〇〇にしましょうよ~」
「いや~ここはどうですかぁ?」
・・・・・・
私は、部長室を尋ねた。
すると、さっき高速化の質問をした第2研の男が居た。
彼は、私を見るなり、
「先ほどは、お疲れ様でした」と、私に挨拶し、
「では、私はこれで」と言って部屋を出た。
私は、部長に訊ねた。
「彼は、どういった要件でここへ来られているのですか? 以前もここでお見受けしましたが」
しばらく沈黙が続き、部長が話し始めた。
「デモ、ご苦労。成功だよ」
「……はい」
「今後、このプロジェクトは、第2研の彼のチームに引き継いでもらう」
「えっ……」
なんとなく、嫌な予感がしていたが、これは想定していなかった。
「……どういった事なのですか」
「事の発端は、水瀬君だ」
「……はあ?」
「第1研で、大きなプロジェクトの準備が進められている。これは、水瀬君が第1研に籍を置いていた時から、水面下で進められていた」
「……だから第1研は、何が何でも水瀬さんを手放したくなかったのですね」
「このプロジェクトは、彼女の参加が大前提と考えているらしい」
「……」
「それで、今の君の3Dプリンターの開発を終了させて、君達のチームはこの新しいプロジェクトに本腰いれてほしいとの事だ」
「……いや~カラー化に向けて、みんな喜ぶと思っていたのですが」
「実はこの3Dプリンター、今回のデモを終えて、第3研の開発部から事業部へ移管させる方向で話は進んでいた。しかし丁度その時、3色試薬が完成した。 そうなると、3Dカラープリンターが可能になる。 そこで、もう一度見直しが入った。 この3Dプリンターを引き継げそうな所、という事で、さっきの第2研の彼のチームが選ばれた」
私は、大きく息を吐いた。
「そうですか」
「ただ、彼は難色を示していた。 解決困難な問題を、いくつも想定していたようだ。 そこで、今回のデモを見て、受けるかどうか決めさせてほしいとの申し出があった。 そして先ほど、正式に快諾の旨を伝えに来てくれた」
「……そうですか」
「という訳で、今週中に、彼のチームへの引き継ぎ作業を終わらせてほしい。 来週から新しいプロジェクトが正式に動き出す」
「……はぁ~……私には……選択の余地……ないのですね」
「君が水瀬君を受け入れると言った時点で、それはもう、無い」
「……はぁ~」
「いいか、君にとって部下は戦力だ。 君は今、莫大な戦力を収めている。 この事を忘れてはいけない」
「……はぁ~」
「……」
「……失礼します」
私は、うな垂れたポーズを部長に見せつけながら、部長の部屋を出た。
スマホを見ると、打ち上げ開始時刻と場所のメールが届いていた。
「早く来て下さい! みんな待ってま~す!」
よし!
この事をみんなに伝えるのは明日にして、今日はみんなで、ぱ~っと飲もう。
そう決めた。
打ち上げのお店に着くと、みんな既に始まっていた。
リーダー君が仕切っている。
「え~では、デモ成功を祝って、主任からひと言頂きましょう」
みんな静まり返った。
「みなさん、お疲れ様でした。 優秀な皆さんが集まると、大抵の事はなんとかなるんだな~という事を、改めて思いました。 これからもよろしくお願いします。 という事で、みなさん、乾杯しましょう。……今日の成功を祝って、カンバーイ」
「カンパーイ」
パチパチパチと拍手を頂いた。
第1研所属の千広も、今ではすっかりなじんでいる。
良かった。
リーダー君は、相変わらず綾乃に絡んでいる。
インテリ君は……あれ? 千広さんねらい?
その時、碧が私の横に来て、お酌しながら小声で話しをしてきた。
「お疲れ様です」
「碧さんこそ、お疲れ様です」
「主任」
「はい」
「何かありましたね」
「……いや」
「……私が原因ですね」
なるほど、碧はだいたい、情報を掴んでいるようだ。
私は、小さく息を吐いて言った。
「貴女を第1研から奪い取ろうと決めた時、その覚悟は出来ています」
……
碧は上目遣いで私を睨み、大きな声で私に言った。
「しゅにん、またわたしをくどこうとしているー」
一斉にみんな、こっちを向いた。
「「え゛ーーーっ!」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本話までが、第6章となります。
ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
第6章は、おじさんの仕事の具体的な内容に、多くの読者さまが離れてしまいました。〔←面白くないぞー!〕
そこで次回からは、おじさんの仕事も、ふわっとした内容にとどめました。
どうか、これからも、お付き合い下さい m(_ _)m
明里さんの学祭が始まりました。
おじさんは、明里さんのネコ耳メイドさんの装いを見に行きたいようです。
しかし、おじさんが1人で見に行く……これは恥しい。
チキンおじさんには、その開き直りが無いようです。
次回:明里の学祭
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