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第6章
6-09 こんなんでいいの?
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私は出社して、最初のミーティングでみんなに伝えた。
デモは10月7日に予定している事。
そしてこのデモは、今までと違い、重要な意味を持つ事。
みんなの表情は暗かった。
綾乃が言った。
「この問題、だいぶ改善されましたが解決には至っていません。こんなんで、いいんでしょうか?」
碧が言った。
「そうですね。現在、どのくらいの頻度でヘッド洗浄が必要になりますか?」
ヘッド洗浄とは、ヘッド噴射口の目詰まりを解消させる操作の事で、相手の試薬によって作られた結晶を溶かす作業である。
この試薬は相手の試薬との比が合った時に結晶化する。
つまり、結晶化しても、自分の大量の試薬に漬ける事で液体に戻る。
それを拭きとる操作であるが、結晶を溶かすのに、時間がかかる。
つまり、このヘッド洗浄、1回の操作で多くの時間が必要となる。
インテリ君が答えた。
「そうですね、だいたい20ラインから30ラインに1回、ヘッド洗浄が必要となります。つまり1体の造形物を作るのに、約3日といった所でしょうか」
みんなから、大きな溜息が漏れた。
リーダー君が言った。
「こんなの、使い物になるの?」
私は答えた。
「いや、ただ、ほっとけばいいだけだから」
今の私の発言、実はみんなに対する焚き付けである事、気付いているのは碧ぐらいだろうか。
リーダー君が言った。
「いや~ 3日待って、出来たかな~って見に行ったら失敗作だったっていったら、ぶっ壊されますよ~」
乱暴な言い方だが、その通りである。
千広が言った。
「なんか~もっと、根本的な解決策、ないでしょうかね~」
おーいいぞー千広さん。
そこで私は発言した。
「問題は、付着した試薬が空中に巻き上げられる事でしょう。 もっと粘性があってターゲットに引っ付いてくれれば……」
千広は言った。
「いえ、この試薬に粘性を求めるの、無理です」
私は言った。
「何か……ターゲットに対して磁石のように、ひっついてくれれば……」
千広は言った。
「この試薬、磁性体じゃないですから」
「ちょっとまってください」
リーダー君が割り込んだ。
「自分、車が好きで、良く運転して横腹こするのですが」
「はぁ……」
綾乃が残念な溜息をついた。
「コントやってんじゃねぇよ」
どっと笑いが出た。
「で、車のこすった横腹、今までは吹き付け塗装していたのですが、この前、器具のレンタルで静電塗装というものを試しまして、塗料が相手にす~っと引き付けられるように付着するんです」
リーダー君の話に、一同沈黙した。
碧が発言した。
「ヘッド側に負の電荷をかけてイオン化して、ターゲット側を正極アースする訳ですね」
インテリ君が発言した。
「試薬AとBによって固体化したターゲット、カーボン系ですので可能かもしれません」
綾乃が言った
「やってみましょうよ」
千広が言った。
「でも時間ないですよ、デモまで後2週間」
私が発言した。
「わかった、2班に別れよう。 静電実験班とデモ準備班。 静電実験班はリーダー君が担当」
「了解しました」
「助手として、綾乃さん、おねがいする」
「わかりました、おもしろそうです」
「もし、うまく行きそうなら、デモの日程を延期するよう、私が折衝する」
一同、緊張が走った。
「静電実験がうまくいかなければ予定どおり10/7に向けてデモを行う為、デモ準備班として、インテリ君と、水瀬さんと、佐伯さんで、班長はインテリ君にお願いする」
「わかりました……ええ?」
インテリ君は、班長は水瀬女史だろうと言いたげの困った表情を見せた。
「少しでもブラシュアップして見せられるように。 そして静電実験班の結果がいけそうなら、デモ班でブラシュアップした内容を水瀬さんが静電班のシステムに組み込んで、それでデモしたい」
「了解しました」
インテリ君も納得したようだ。
という事で、デモに向けて、走り出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:ラスボス降臨
デモは10月7日に予定している事。
そしてこのデモは、今までと違い、重要な意味を持つ事。
みんなの表情は暗かった。
綾乃が言った。
「この問題、だいぶ改善されましたが解決には至っていません。こんなんで、いいんでしょうか?」
碧が言った。
「そうですね。現在、どのくらいの頻度でヘッド洗浄が必要になりますか?」
ヘッド洗浄とは、ヘッド噴射口の目詰まりを解消させる操作の事で、相手の試薬によって作られた結晶を溶かす作業である。
この試薬は相手の試薬との比が合った時に結晶化する。
つまり、結晶化しても、自分の大量の試薬に漬ける事で液体に戻る。
それを拭きとる操作であるが、結晶を溶かすのに、時間がかかる。
つまり、このヘッド洗浄、1回の操作で多くの時間が必要となる。
インテリ君が答えた。
「そうですね、だいたい20ラインから30ラインに1回、ヘッド洗浄が必要となります。つまり1体の造形物を作るのに、約3日といった所でしょうか」
みんなから、大きな溜息が漏れた。
リーダー君が言った。
「こんなの、使い物になるの?」
私は答えた。
「いや、ただ、ほっとけばいいだけだから」
今の私の発言、実はみんなに対する焚き付けである事、気付いているのは碧ぐらいだろうか。
リーダー君が言った。
「いや~ 3日待って、出来たかな~って見に行ったら失敗作だったっていったら、ぶっ壊されますよ~」
乱暴な言い方だが、その通りである。
千広が言った。
「なんか~もっと、根本的な解決策、ないでしょうかね~」
おーいいぞー千広さん。
そこで私は発言した。
「問題は、付着した試薬が空中に巻き上げられる事でしょう。 もっと粘性があってターゲットに引っ付いてくれれば……」
千広は言った。
「いえ、この試薬に粘性を求めるの、無理です」
私は言った。
「何か……ターゲットに対して磁石のように、ひっついてくれれば……」
千広は言った。
「この試薬、磁性体じゃないですから」
「ちょっとまってください」
リーダー君が割り込んだ。
「自分、車が好きで、良く運転して横腹こするのですが」
「はぁ……」
綾乃が残念な溜息をついた。
「コントやってんじゃねぇよ」
どっと笑いが出た。
「で、車のこすった横腹、今までは吹き付け塗装していたのですが、この前、器具のレンタルで静電塗装というものを試しまして、塗料が相手にす~っと引き付けられるように付着するんです」
リーダー君の話に、一同沈黙した。
碧が発言した。
「ヘッド側に負の電荷をかけてイオン化して、ターゲット側を正極アースする訳ですね」
インテリ君が発言した。
「試薬AとBによって固体化したターゲット、カーボン系ですので可能かもしれません」
綾乃が言った
「やってみましょうよ」
千広が言った。
「でも時間ないですよ、デモまで後2週間」
私が発言した。
「わかった、2班に別れよう。 静電実験班とデモ準備班。 静電実験班はリーダー君が担当」
「了解しました」
「助手として、綾乃さん、おねがいする」
「わかりました、おもしろそうです」
「もし、うまく行きそうなら、デモの日程を延期するよう、私が折衝する」
一同、緊張が走った。
「静電実験がうまくいかなければ予定どおり10/7に向けてデモを行う為、デモ準備班として、インテリ君と、水瀬さんと、佐伯さんで、班長はインテリ君にお願いする」
「わかりました……ええ?」
インテリ君は、班長は水瀬女史だろうと言いたげの困った表情を見せた。
「少しでもブラシュアップして見せられるように。 そして静電実験班の結果がいけそうなら、デモ班でブラシュアップした内容を水瀬さんが静電班のシステムに組み込んで、それでデモしたい」
「了解しました」
インテリ君も納得したようだ。
という事で、デモに向けて、走り出した。
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次回:ラスボス降臨
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