【完結】家出少女に生活支援

第６章

6-07 さすがは女性陣

　出社して、いつものように現状の報告と検討会議を始めた。

　最初にリーダー君の、3Dプリンターそのものを容器に入れて気圧を下げるというアイディアを千広に確認してもらったところ、噴射させる試薬を1plの霧上の状態で測定した結果、0.6気圧で気化が始まり、マージンを持たせると下げられる気圧は0.8気圧との事。

　空気によって巻き上げられる問題がどの程度改善されるか、装置が大がかりになる事を考慮すると、疑問の声があがった。

　次にインテリ君のヘッドからの噴射速度を上げる実験だが、今の試薬の粘性から、これ以上噴射速度を上げると横に広がってしまい、うまくいかない事がわかった。

　次に碧が疑問を投げたAヘッドとBヘッド、どちらがA試薬を空中に巻き上げているのか？
　綾乃がハイスピードカメラで確認した結果、A試薬を巻き上げているのは、Aヘッドが約0.1%、Bヘッドが約0.4%、両方で約0.5%との事だ。

　この、空中に巻き上げられたA試薬が、Bヘッドに付着して目詰まりを起こしてしまうのが、今回の問題である。

　だとしたら、ヘッドを縦に並べる事で、Aヘッドが巻き上げた試薬がBヘッドに付着する事は防げる。

　そして、そのメカは、リーダー君がメカの発注先に張り付いてもらったお陰で、早々に完成した。

　それとヘッドを縦に並べる事には、もう1つメリットがあった。
　試薬の投下順序は、Aの3plが最初で、次にBの1plを投下する方が、固体化が安定する。

　ちょうど目玉焼きみたいに、3plの白身の中心に1plの黄身が投下される感じだ。
　つまり、順番がある。

　レールに従ってAヘッドとBヘッドが走り、試薬を落すのだが、それは片道になり、帰りは試薬を落さずに戻る仕様となる。

　しかしヘッドを縦に並べるのであれば、往復投下が可能である。
　つまり、造形物の作成時間が半分となる。
　これは、すばらしい。
　さすがは碧だ。

　そして最後に綾乃のアイディア、ヘッドの形状を、空気抵抗を考慮した新幹線型にしましょう。
　流力シミュレーションで出した形状でのヘッドを作成した結果、A試薬が2つのヘッドによって巻き上げられる0.5%が、0.2%となった。

　碧の縦型ヘッドのアイディアと合わせると、更に改善される事が見込まれる。
　さすがは女性陣。

　私は伝えた。
「よし、この内容でブラシュアップして、見せられるデモにしていきましょう」

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　次回：なんで気付かなかった