【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第5章

5-03 ここで素数は顔ださんだろ~

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 出社して研究室に入ると、私の研究室は相変わらずだった。

 壁側に白いテーブルクロスを敷いたバイキングテーブルが置かれ、その上にホットプレートが置かれている。
 エプロンを付けた綾乃が、お好み焼きを作っている。

 綾乃の後ろにはリーダー君が立ち、大きなマグカップを持って綾乃が作るお好み焼きの完成を待っている。
 ホットプレートの隣には、大きなトレーが置かれ、完成したフライドポテトやオーブントースターで焼いたピザ等が置かれている。

 その隣は飲み物コーナーで、コーヒーメーカーやポッドが置かれ、紅茶セットが置かれている。
 まさに、ホテルのバイキング会場の一角を思わせる光景である。
 実に素晴らしい。

 それらを無視して千広が実験を進めていた。
 ここの研究所が開発した2つの試薬AとBがあり、この2つの液体を混ぜると、ある割合で固体化(結晶化)する。
 結晶化する割合と結晶化しない割合があり、結晶化した時の各割合に対する物理特性を解析する事が目的である。

 現在、結晶化する割合を求めているのだが、再現性はあるが規則性が掴めない。
 千広は試験管の中で混合し、どの割合で結晶化が起きるか、顕微鏡で確認している。

 千広は私に報告した。
「試薬Bを1とした時に、結晶化する試薬Aの割合なのですが、2, 3, 5, 13, 21,と、規則性が掴めないんです」

 すると、後ろの方で
「ジュ~」という音が聞こえてきた。
 綾乃がホットプレートで作っているお好み焼きにソースを投入した音だ。
 千広はペンを握り締め、憤りを隠せないようだ。

 後ろから、マグカップにフライドポテトを入れて、それを箸で食べながらリーダー君が言った。
「素数だ!」
 するとインテリ君が、優雅にコーヒーを飲みながら言った。
「いや、21は素数じゃないから」

 リーダー君が返した。
「測定ミスかもしれない」
 私が割り込んだ。
「いや~さすがにここで素数は顔出さんだろ~。しかしリーダー君の言う測定ミスについてだが……」

 私は千広に尋ねた。
「どのレベルでの精度で実験しています?」
 千広が答えた。
「傾向を見ている段階ですので、見落としがあるかもしれません」

 すると、エプロン付けて、フライ返しを持った綾乃が割り込んできた。
「あの、5倍の次に8倍では、結晶化、起きませんでしたか?」
 碧が言った。
「さすが綾乃さん」

「えっ、確認出来ませんでしたが……。もう一度確認します」
 千広が8倍での実験を再度行った。
 顕微鏡を覗きながら、
「あっ、本当です。結晶化、起こってますね」

 碧が言った。
「そうね、だから次に結晶化が起こるのは34倍の時」
 私が言った。
「固体化した時の結晶構造を解析すれば、説明が付くかもしれない」

 リーダー君が訊ねた。
「なんですか?」
 インテリ君が答えた。
「フィボナッチ数列ですよ」

 綾乃が言った。
「そう、この宇宙の、ミクロからマクロまでを支配する数のならび」

 その日以来、千広は綾乃を『綾乃さん』と呼ぶようになった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私には見える。
 一週間後、佐伯さんが率先してお好み焼きを焼いてる未来が。

 次回:今日一番の目的
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