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第4章
4-13(第4章 最終話)チーム・ストロベリー
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次の日、会社に出社すると、3人は既に出社していて、運ぶ為の荷物を台車に乗せていた。
私は、第3研の部長に挨拶をしに行った。
「行ってきます」
「ああ、今までどおり、何も変わらない。ただ場所が変わるだけだ」
「はい、今後とも、よろしくお願いします」
……なんだろう、部長は私を手放したく無いように見受けられる。
私が退室しようとした時、部長に呼び止められた。
「あ、それと……」
「はい?」
「実は、正式な辞令はまだなんだが、第1研から1人、君のチームに常駐させたいといった意向を第1研の部長から受けていて……」
……なるほど……いわゆる監視役か。
「はい、私と致しましては、一向にかまいません」
「そうか、わかった。よろしく頼む」
「了解しました」
……さて、どんな人が、来るのやら。
部長への挨拶を終え、皆の所へ向かった。
「では、敵陣にのりこみますか」とリーダー君が言った。
「いや~同じ会社ですから、敵陣だなんて……」とインテリ君が言うと、
「いえ、敵陣ですよ。碧姫を助けに行きましょう」と、綾乃が言った。
私達は、荷物を載せた台車を押しながら移動を始めた。
フロアーを移動する際、同期の人間が「行ってらっしゃい」と声をかけてくれた。
私は「ちょくちょく戻って来ます」と返した。
第3研の研究棟から、第1研の研究棟まで、徒歩5分程度の距離である。
その中を、台車を押しながらゴロゴロと移動する。
第1研の研究棟に着いた。
我々に用意された場所は、最上階の7階。
荷物をエレベーターに乗せて移動する。
7階に着いてエレベーターの扉が開いた時、扉の先に碧が立っていた。
「お待ちしていました」
碧の社員証のネック・ストラップは、我々と同じ紺の帯に真紅のラインに替わっていた。
「あ、お疲れ様です」綾乃が挨拶した。
「丁度皆さんが、台車と一緒にこちらへ来られるの、窓から見えましたもので」
私は碧に言った。
「では、私達の新しい研究室、案内して下さい」
「はい、どうぞこちらへ」
台車を押しながら、このフロアーを移動する。
周りの社員からの視線を感じる。
既に色々と噂になっているようだ。
案内された私の研究室は、広い個室だった。
「すごい」綾乃が声をあげた。
広さを尋ねると120㎡との事。
大きな設備を利用する実験や測定等は、こことは別の実験棟で行うが、簡易的な実験や確認等は、各研究室でおこなう。
いままでの第3研は、研究室の外に事務机があった。
しかしここでは、1人1人の実験机と事務机が研究室の中に用意されている。
その他、大きな作業台、それと上下水道と流し台。
第3研の専用スペースの2倍以上ありそうだ。
実験機材や測定器等の精密機器は、既に到着していた。
持ってきた荷物を台車から降ろした所で、私は第1研の部長へ挨拶しに行った。
「今後とも、よろしくお願い致します」
「ああ……、よろしく頼む」
「はい、お世話になります」
第1研の部長に深く頭を下げて、私は私の研究室へ戻った。
そして機材のセッティングをしている皆に声を掛けた。
「ちょっと手を止めて、この作業台に集まってくれる」
皆が集まって来た所で、話しを始めた。
「この研究室で欲しい物を、ガンガン買う」
不思議そうな顔をして、綾乃が訊ねた。
「ガンガンって、何をですか?」
「冷蔵庫でしょ~、電子レンジでしょ~、コーヒーメーカーでしょ~」
「え~」一同、声をあげた。
「マジですか」リーダー君が訊ねた。
「欲しくない?」私が言った。
「このフロアーにも、給湯室ありますよね」綾乃が言った。
「我々専用の」私が言った。
「叱られませんか?」インテリ君が言った。
私は碧に訊ねた。
「第1研の研究室に持ち込み不可のものってある?」
「危険物に関しては、申請が必要になります」
「じゃあ、いいんじゃない」
「いや~」綾乃が心配そうな顔を浮かべた。
すると碧が「ガンガン行きましょう」と言い出した。
「叱られたら、私が責任取るから」と私が言った。
「じゃー」と言って、リーダー君が腰を上げた。
それからはもう、みんな大はしゃぎである。
「やっぱ電子レンジはターンテーブル無しのがいい」とか
「オーブンレンジより、オーブントースターの方がいい」とか
この部屋の間取りや高さ等、計り出した。
「冷蔵庫は、冷凍庫が大きいのがいい」とか。
「IHクッキングヒーターは、測定器が誤動作する可能性があるから、電熱線コンロにしよう」とか。
「いや、それなら、マルチホットプレートの方がいい」とか。
……おいおい、何がはじまるんだぁ?
「コーヒーメーカーは、絶対ミル付き」とか
「電気ポットも欲しい」とか
「だったら、棚も必要」とか
・・・・・・
だいたい 欲しい物が整理出来たところで、みんなで大型家電量販店へ繰り出した。
ネットでの情報から、ある程度決めていたが、実際に見ると、色々悩むようである。
綾乃とリーダー君は、いつも衝突する。
綾乃は機能を重視し、リーダー君は大きさを重視する。
購入を決めた物を確認していたら、碧が上目遣いで私に訊ねた。
「炊飯器、買っちゃダメ?」
「……あなたは研究室で、何をするつもりですかぁ?」
「だって、ごはん炊いて皆で食べたら、おいしくない?」
「そ、それは、絶対に、おいしいです!」
碧の案を泣く泣く却下して、会計に向かった。
大型の物は配送手続きをして、持てる物は持って会社へ戻った。
今、出来るセッティングを完了させて、今日は解散とした。
「では、明日から、よろしく!」
「よろしくお願いします」
碧を含めたチーム・ストロベリーが、いよいよ動きだす。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本話までが、第4章となります。
ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
次回、第5章から、チーム・ストロベリーに、新メンバー(監視役)が加わります。
おじさん達、どうなっちゃうのでしょう。
次回:うわぁ~睨んでる
これからも、是非、お付き合い下さい m(_ _)m
私は、第3研の部長に挨拶をしに行った。
「行ってきます」
「ああ、今までどおり、何も変わらない。ただ場所が変わるだけだ」
「はい、今後とも、よろしくお願いします」
……なんだろう、部長は私を手放したく無いように見受けられる。
私が退室しようとした時、部長に呼び止められた。
「あ、それと……」
「はい?」
「実は、正式な辞令はまだなんだが、第1研から1人、君のチームに常駐させたいといった意向を第1研の部長から受けていて……」
……なるほど……いわゆる監視役か。
「はい、私と致しましては、一向にかまいません」
「そうか、わかった。よろしく頼む」
「了解しました」
……さて、どんな人が、来るのやら。
部長への挨拶を終え、皆の所へ向かった。
「では、敵陣にのりこみますか」とリーダー君が言った。
「いや~同じ会社ですから、敵陣だなんて……」とインテリ君が言うと、
「いえ、敵陣ですよ。碧姫を助けに行きましょう」と、綾乃が言った。
私達は、荷物を載せた台車を押しながら移動を始めた。
フロアーを移動する際、同期の人間が「行ってらっしゃい」と声をかけてくれた。
私は「ちょくちょく戻って来ます」と返した。
第3研の研究棟から、第1研の研究棟まで、徒歩5分程度の距離である。
その中を、台車を押しながらゴロゴロと移動する。
第1研の研究棟に着いた。
我々に用意された場所は、最上階の7階。
荷物をエレベーターに乗せて移動する。
7階に着いてエレベーターの扉が開いた時、扉の先に碧が立っていた。
「お待ちしていました」
碧の社員証のネック・ストラップは、我々と同じ紺の帯に真紅のラインに替わっていた。
「あ、お疲れ様です」綾乃が挨拶した。
「丁度皆さんが、台車と一緒にこちらへ来られるの、窓から見えましたもので」
私は碧に言った。
「では、私達の新しい研究室、案内して下さい」
「はい、どうぞこちらへ」
台車を押しながら、このフロアーを移動する。
周りの社員からの視線を感じる。
既に色々と噂になっているようだ。
案内された私の研究室は、広い個室だった。
「すごい」綾乃が声をあげた。
広さを尋ねると120㎡との事。
大きな設備を利用する実験や測定等は、こことは別の実験棟で行うが、簡易的な実験や確認等は、各研究室でおこなう。
いままでの第3研は、研究室の外に事務机があった。
しかしここでは、1人1人の実験机と事務机が研究室の中に用意されている。
その他、大きな作業台、それと上下水道と流し台。
第3研の専用スペースの2倍以上ありそうだ。
実験機材や測定器等の精密機器は、既に到着していた。
持ってきた荷物を台車から降ろした所で、私は第1研の部長へ挨拶しに行った。
「今後とも、よろしくお願い致します」
「ああ……、よろしく頼む」
「はい、お世話になります」
第1研の部長に深く頭を下げて、私は私の研究室へ戻った。
そして機材のセッティングをしている皆に声を掛けた。
「ちょっと手を止めて、この作業台に集まってくれる」
皆が集まって来た所で、話しを始めた。
「この研究室で欲しい物を、ガンガン買う」
不思議そうな顔をして、綾乃が訊ねた。
「ガンガンって、何をですか?」
「冷蔵庫でしょ~、電子レンジでしょ~、コーヒーメーカーでしょ~」
「え~」一同、声をあげた。
「マジですか」リーダー君が訊ねた。
「欲しくない?」私が言った。
「このフロアーにも、給湯室ありますよね」綾乃が言った。
「我々専用の」私が言った。
「叱られませんか?」インテリ君が言った。
私は碧に訊ねた。
「第1研の研究室に持ち込み不可のものってある?」
「危険物に関しては、申請が必要になります」
「じゃあ、いいんじゃない」
「いや~」綾乃が心配そうな顔を浮かべた。
すると碧が「ガンガン行きましょう」と言い出した。
「叱られたら、私が責任取るから」と私が言った。
「じゃー」と言って、リーダー君が腰を上げた。
それからはもう、みんな大はしゃぎである。
「やっぱ電子レンジはターンテーブル無しのがいい」とか
「オーブンレンジより、オーブントースターの方がいい」とか
この部屋の間取りや高さ等、計り出した。
「冷蔵庫は、冷凍庫が大きいのがいい」とか。
「IHクッキングヒーターは、測定器が誤動作する可能性があるから、電熱線コンロにしよう」とか。
「いや、それなら、マルチホットプレートの方がいい」とか。
……おいおい、何がはじまるんだぁ?
「コーヒーメーカーは、絶対ミル付き」とか
「電気ポットも欲しい」とか
「だったら、棚も必要」とか
・・・・・・
だいたい 欲しい物が整理出来たところで、みんなで大型家電量販店へ繰り出した。
ネットでの情報から、ある程度決めていたが、実際に見ると、色々悩むようである。
綾乃とリーダー君は、いつも衝突する。
綾乃は機能を重視し、リーダー君は大きさを重視する。
購入を決めた物を確認していたら、碧が上目遣いで私に訊ねた。
「炊飯器、買っちゃダメ?」
「……あなたは研究室で、何をするつもりですかぁ?」
「だって、ごはん炊いて皆で食べたら、おいしくない?」
「そ、それは、絶対に、おいしいです!」
碧の案を泣く泣く却下して、会計に向かった。
大型の物は配送手続きをして、持てる物は持って会社へ戻った。
今、出来るセッティングを完了させて、今日は解散とした。
「では、明日から、よろしく!」
「よろしくお願いします」
碧を含めたチーム・ストロベリーが、いよいよ動きだす。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本話までが、第4章となります。
ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
次回、第5章から、チーム・ストロベリーに、新メンバー(監視役)が加わります。
おじさん達、どうなっちゃうのでしょう。
次回:うわぁ~睨んでる
これからも、是非、お付き合い下さい m(_ _)m
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