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第4章
4-10 やっちまったか!
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いつものように、出社した。
相変わらずの寝不足である。
会社は午後3時になると、ちょっと休憩しましょうといった事で、フロアーに音楽が流れる。
その時間、コーヒーを飲んだり、雑談したりといった空気に変わる。
その時、私の上司〇〇部長が、神妙な面持ちで私の所へ来た。
「ちょっと話があるんだが、E会議室へ、いいかな」
「……はい、解りました」
……何だろう。
私が、E会議室へ行くと、第3研の所長も席に付いていた。
……嫌な予感しかしない。
部長が話し始めた。
「実はねえ、第1研の水瀬碧さんが、君の下へ正式に異動願いを出されて、第1研で大騒ぎになっている」
私は衝撃を受けた。
やっちまったか!
「その件、君は了解済なの?」
「……はい。ただ、来年度と聞いていました」
「うん、ただ、今、仕事の切りがいいのと、この事は少しでも早くお伝えした方が良いと判断して、との水瀬さんからの話だそうだ」
「……はい」
「基本、本人の希望と受け入れ先……まあ、ここでは君を指す訳だが、お互いが合意すれば、その申請は受理されるのだが、ちょっと彼女は特別でねぇ、第1研の所長から君に対して、受け入れを拒否してくれないかとの打診があって……どうだろうか?」
「……その場合、彼女は退職しますが、それでもよろしいのでしょうか?」
「そうか……やはり」
「……」
「いや、水瀬さんが上司に異動願いを出した時、温厚な上司の彼が珍しく声をあげたらしい。そしたら『それでは退職願いを出します』と言い出したようで、『ちょっと待ってくれ』って、第1研では大騒ぎになっている」
私は、ため息をついて話をした。
「第1研の皆さんがいけないのですよ、彼女を孤立させて」
「孤立?」
「今回の件、ご存じと思います」
所長が挿んだ。
「ああ……やはり、その事か」
部長が訊ねた。
「私の知らない事ですか?」
「……ああ、ちょっとデリケートな問題で……第1研で進めていた大きなプロジェクト、幾つかの問題が解決出来ないで暗礁に乗り上げていた時、水瀬さんが入社して問題を解決した事は知っていると思うが、実は水瀬さんが解決する直前、担当部長がこの問題は解決出来ないので、プロジェクトを白紙に戻したいと言った報告書を上に提出していた」
「……」
「まあ、それが原因で、担当部長及び担当研究員の立場を結果的に彼女が潰してしまったようだ」
「ええ、ですので、水瀬さんの退職願い、本気です」
「わかった。この後17時からこの件で、第1研で打ち合わせが予定されている。君にも出席してほしい」
「わかりました」
とりあえず解散し、私は席に戻った。
ストロベリーのメンバーが、心配そうに私を見ている。
場所は第1研のA会議室との事で、私は少し早めに向かった。
予定の5分前、会議室に入ると、私以外、すでに席に着いていた。
私が来る前に、少し話し合っていたようだ。
出席者は、第1研の所長と部長と碧の上司、そして、第3研の所長と部長。
そして、常務取締役まで出席されていた。
水瀬碧、十年後は所長との噂、伊達ではないようだ。
「失礼します」
と言って私が会議室に入るなり、第1研の部長が私を睨み付けて言った。
「君か?うちの水瀬を、かどわかしたのは」
うわ~いきなり来たよ。
「やめましょうよ」
第1研の所長が、部長を止めた。
私を擁護してくれたように見える。が、私の直感は、むしろ所長の方が曲者である。
……この席に碧が呼ばれていない。
ここでの言い争いを、碧には見せたくないのだろう。
賢明な判断だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:水面下で動いている?
相変わらずの寝不足である。
会社は午後3時になると、ちょっと休憩しましょうといった事で、フロアーに音楽が流れる。
その時間、コーヒーを飲んだり、雑談したりといった空気に変わる。
その時、私の上司〇〇部長が、神妙な面持ちで私の所へ来た。
「ちょっと話があるんだが、E会議室へ、いいかな」
「……はい、解りました」
……何だろう。
私が、E会議室へ行くと、第3研の所長も席に付いていた。
……嫌な予感しかしない。
部長が話し始めた。
「実はねえ、第1研の水瀬碧さんが、君の下へ正式に異動願いを出されて、第1研で大騒ぎになっている」
私は衝撃を受けた。
やっちまったか!
「その件、君は了解済なの?」
「……はい。ただ、来年度と聞いていました」
「うん、ただ、今、仕事の切りがいいのと、この事は少しでも早くお伝えした方が良いと判断して、との水瀬さんからの話だそうだ」
「……はい」
「基本、本人の希望と受け入れ先……まあ、ここでは君を指す訳だが、お互いが合意すれば、その申請は受理されるのだが、ちょっと彼女は特別でねぇ、第1研の所長から君に対して、受け入れを拒否してくれないかとの打診があって……どうだろうか?」
「……その場合、彼女は退職しますが、それでもよろしいのでしょうか?」
「そうか……やはり」
「……」
「いや、水瀬さんが上司に異動願いを出した時、温厚な上司の彼が珍しく声をあげたらしい。そしたら『それでは退職願いを出します』と言い出したようで、『ちょっと待ってくれ』って、第1研では大騒ぎになっている」
私は、ため息をついて話をした。
「第1研の皆さんがいけないのですよ、彼女を孤立させて」
「孤立?」
「今回の件、ご存じと思います」
所長が挿んだ。
「ああ……やはり、その事か」
部長が訊ねた。
「私の知らない事ですか?」
「……ああ、ちょっとデリケートな問題で……第1研で進めていた大きなプロジェクト、幾つかの問題が解決出来ないで暗礁に乗り上げていた時、水瀬さんが入社して問題を解決した事は知っていると思うが、実は水瀬さんが解決する直前、担当部長がこの問題は解決出来ないので、プロジェクトを白紙に戻したいと言った報告書を上に提出していた」
「……」
「まあ、それが原因で、担当部長及び担当研究員の立場を結果的に彼女が潰してしまったようだ」
「ええ、ですので、水瀬さんの退職願い、本気です」
「わかった。この後17時からこの件で、第1研で打ち合わせが予定されている。君にも出席してほしい」
「わかりました」
とりあえず解散し、私は席に戻った。
ストロベリーのメンバーが、心配そうに私を見ている。
場所は第1研のA会議室との事で、私は少し早めに向かった。
予定の5分前、会議室に入ると、私以外、すでに席に着いていた。
私が来る前に、少し話し合っていたようだ。
出席者は、第1研の所長と部長と碧の上司、そして、第3研の所長と部長。
そして、常務取締役まで出席されていた。
水瀬碧、十年後は所長との噂、伊達ではないようだ。
「失礼します」
と言って私が会議室に入るなり、第1研の部長が私を睨み付けて言った。
「君か?うちの水瀬を、かどわかしたのは」
うわ~いきなり来たよ。
「やめましょうよ」
第1研の所長が、部長を止めた。
私を擁護してくれたように見える。が、私の直感は、むしろ所長の方が曲者である。
……この席に碧が呼ばれていない。
ここでの言い争いを、碧には見せたくないのだろう。
賢明な判断だ。
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次回:水面下で動いている?
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