43 / 88
第4章
4-10 やっちまったか!
しおりを挟む
いつものように、出社した。
相変わらずの寝不足である。
会社は午後3時になると、ちょっと休憩しましょうといった事で、フロアーに音楽が流れる。
その時間、コーヒーを飲んだり、雑談したりといった空気に変わる。
その時、私の上司〇〇部長が、神妙な面持ちで私の所へ来た。
「ちょっと話があるんだが、E会議室へ、いいかな」
「……はい、解りました」
……何だろう。
私が、E会議室へ行くと、第3研の所長も席に付いていた。
……嫌な予感しかしない。
部長が話し始めた。
「実はねえ、第1研の水瀬碧さんが、君の下へ正式に異動願いを出されて、第1研で大騒ぎになっている」
私は衝撃を受けた。
やっちまったか!
「その件、君は了解済なの?」
「……はい。ただ、来年度と聞いていました」
「うん、ただ、今、仕事の切りがいいのと、この事は少しでも早くお伝えした方が良いと判断して、との水瀬さんからの話だそうだ」
「……はい」
「基本、本人の希望と受け入れ先……まあ、ここでは君を指す訳だが、お互いが合意すれば、その申請は受理されるのだが、ちょっと彼女は特別でねぇ、第1研の所長から君に対して、受け入れを拒否してくれないかとの打診があって……どうだろうか?」
「……その場合、彼女は退職しますが、それでもよろしいのでしょうか?」
「そうか……やはり」
「……」
「いや、水瀬さんが上司に異動願いを出した時、温厚な上司の彼が珍しく声をあげたらしい。そしたら『それでは退職願いを出します』と言い出したようで、『ちょっと待ってくれ』って、第1研では大騒ぎになっている」
私は、ため息をついて話をした。
「第1研の皆さんがいけないのですよ、彼女を孤立させて」
「孤立?」
「今回の件、ご存じと思います」
所長が挿んだ。
「ああ……やはり、その事か」
部長が訊ねた。
「私の知らない事ですか?」
「……ああ、ちょっとデリケートな問題で……第1研で進めていた大きなプロジェクト、幾つかの問題が解決出来ないで暗礁に乗り上げていた時、水瀬さんが入社して問題を解決した事は知っていると思うが、実は水瀬さんが解決する直前、担当部長がこの問題は解決出来ないので、プロジェクトを白紙に戻したいと言った報告書を上に提出していた」
「……」
「まあ、それが原因で、担当部長及び担当研究員の立場を結果的に彼女が潰してしまったようだ」
「ええ、ですので、水瀬さんの退職願い、本気です」
「わかった。この後17時からこの件で、第1研で打ち合わせが予定されている。君にも出席してほしい」
「わかりました」
とりあえず解散し、私は席に戻った。
ストロベリーのメンバーが、心配そうに私を見ている。
場所は第1研のA会議室との事で、私は少し早めに向かった。
予定の5分前、会議室に入ると、私以外、すでに席に着いていた。
私が来る前に、少し話し合っていたようだ。
出席者は、第1研の所長と部長と碧の上司、そして、第3研の所長と部長。
そして、常務取締役まで出席されていた。
水瀬碧、十年後は所長との噂、伊達ではないようだ。
「失礼します」
と言って私が会議室に入るなり、第1研の部長が私を睨み付けて言った。
「君か?うちの水瀬を、かどわかしたのは」
うわ~いきなり来たよ。
「やめましょうよ」
第1研の所長が、部長を止めた。
私を擁護してくれたように見える。が、私の直感は、むしろ所長の方が曲者である。
……この席に碧が呼ばれていない。
ここでの言い争いを、碧には見せたくないのだろう。
賢明な判断だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:水面下で動いている?
相変わらずの寝不足である。
会社は午後3時になると、ちょっと休憩しましょうといった事で、フロアーに音楽が流れる。
その時間、コーヒーを飲んだり、雑談したりといった空気に変わる。
その時、私の上司〇〇部長が、神妙な面持ちで私の所へ来た。
「ちょっと話があるんだが、E会議室へ、いいかな」
「……はい、解りました」
……何だろう。
私が、E会議室へ行くと、第3研の所長も席に付いていた。
……嫌な予感しかしない。
部長が話し始めた。
「実はねえ、第1研の水瀬碧さんが、君の下へ正式に異動願いを出されて、第1研で大騒ぎになっている」
私は衝撃を受けた。
やっちまったか!
「その件、君は了解済なの?」
「……はい。ただ、来年度と聞いていました」
「うん、ただ、今、仕事の切りがいいのと、この事は少しでも早くお伝えした方が良いと判断して、との水瀬さんからの話だそうだ」
「……はい」
「基本、本人の希望と受け入れ先……まあ、ここでは君を指す訳だが、お互いが合意すれば、その申請は受理されるのだが、ちょっと彼女は特別でねぇ、第1研の所長から君に対して、受け入れを拒否してくれないかとの打診があって……どうだろうか?」
「……その場合、彼女は退職しますが、それでもよろしいのでしょうか?」
「そうか……やはり」
「……」
「いや、水瀬さんが上司に異動願いを出した時、温厚な上司の彼が珍しく声をあげたらしい。そしたら『それでは退職願いを出します』と言い出したようで、『ちょっと待ってくれ』って、第1研では大騒ぎになっている」
私は、ため息をついて話をした。
「第1研の皆さんがいけないのですよ、彼女を孤立させて」
「孤立?」
「今回の件、ご存じと思います」
所長が挿んだ。
「ああ……やはり、その事か」
部長が訊ねた。
「私の知らない事ですか?」
「……ああ、ちょっとデリケートな問題で……第1研で進めていた大きなプロジェクト、幾つかの問題が解決出来ないで暗礁に乗り上げていた時、水瀬さんが入社して問題を解決した事は知っていると思うが、実は水瀬さんが解決する直前、担当部長がこの問題は解決出来ないので、プロジェクトを白紙に戻したいと言った報告書を上に提出していた」
「……」
「まあ、それが原因で、担当部長及び担当研究員の立場を結果的に彼女が潰してしまったようだ」
「ええ、ですので、水瀬さんの退職願い、本気です」
「わかった。この後17時からこの件で、第1研で打ち合わせが予定されている。君にも出席してほしい」
「わかりました」
とりあえず解散し、私は席に戻った。
ストロベリーのメンバーが、心配そうに私を見ている。
場所は第1研のA会議室との事で、私は少し早めに向かった。
予定の5分前、会議室に入ると、私以外、すでに席に着いていた。
私が来る前に、少し話し合っていたようだ。
出席者は、第1研の所長と部長と碧の上司、そして、第3研の所長と部長。
そして、常務取締役まで出席されていた。
水瀬碧、十年後は所長との噂、伊達ではないようだ。
「失礼します」
と言って私が会議室に入るなり、第1研の部長が私を睨み付けて言った。
「君か?うちの水瀬を、かどわかしたのは」
うわ~いきなり来たよ。
「やめましょうよ」
第1研の所長が、部長を止めた。
私を擁護してくれたように見える。が、私の直感は、むしろ所長の方が曲者である。
……この席に碧が呼ばれていない。
ここでの言い争いを、碧には見せたくないのだろう。
賢明な判断だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:水面下で動いている?
1
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる