上 下
42 / 88
第4章

4-09 明里の試験勉強

しおりを挟む
 昨日、私の勝手な妄想が、一晩中1人歩きしていた。
 おかげで今日は、寝不足である。

 会社から帰宅して、いつものように明里と夕食を頂いた。
 明里が「見て~」と言って、紙袋を渡してくれた。
 中に入っていたのは、過去の問題のコピーだった。

「今日、さっそく、天文研の先輩に連絡して、『あの~過去の問題ってありますか?』って尋ねたら『あるよ~』って」
「良かったね~」

「先輩から、『来週のミーティングで、あげようと思って、でも、いま部室にいるけど、来な~い?』って言われて、早く欲しかったから『行きます』って言ってもらってきちゃいました」
「それにしても……すごい量だね」

「部室に行ったら、各部の部長さんが集まっていて、今年の学祭の打ち合わせしていて、そこで私を紹介されちゃいました」
「うわ~各部長さんとの繋がりを頂いたんだ」

「先輩が過去問取りに行ったら、『じゃあ、うちの部が集めている過去問もあげるよ』って各部長さんから言われて、沢山の過去問が集まっちゃいました」
「それは良かった」

「今年の学祭で、うちの天文部からはプラネタリウム喫茶を行うからプラネタリウムの作成、手伝ってって頼まれちゃいました」
「お~楽しそうだね」

「前期試験が終わるの9月末で、学祭は10月末だから、1ヵ月しかありません」
「まあ、その期間で作れるものでしょう……って、プラネタリウム喫茶といいました?」
「はい」

「あの、喫茶というと、誰か給仕するのですよね」
「ええ、部員の男性は執事の装いで、女性はメイドさんの装いで」
「な、なんですかぁ、高校生ですかぁ、高校の文化祭ですかぁ」

「ええ、私も同じ事言ったんですが、うちの学生、勉強三昧の高校時代を送って来た人が多いようで、失った青春を大学の学祭に求めているようで……」
 ……まあ、学祭の模擬店で居酒屋を出して、給仕する人が作務衣や着物で和を演出しているのは見た事があるが。
「……そうですか」

「で、女性はネコ耳カチューシャを付けるかどうかで騒いでいて……」
「け、けしからん!」

「まあ、うちの部長、女性だから、どうなるかな~」
「……」
 ……明里のネコ耳メイドコスプレ~??? 見に行きたい!

「で」
「はい」
「過去問は手に入ったんだけど、模範解答が無くって」
「そりゃそうだ」

 もらって来た過去問のコピーを見ると、その中に何枚か鉛筆書きで式と答えが書いてある。
 この過去問を提供した学生が書いた回答なのだろう。

 私は、明里に伝えた。
「どうも、この回答、怪しい」
「そうなんです。それで友達と一緒に回答作りをする事にしました」
「おお、大学でいい友達、出来た?」

「はい。私は最初、教室の1番前の席に座って1人で授業受けていたのですが、そのうち女子が2人来て、今では、いつもその3人で、1番前の席で授業受けています」
「すばらしいです」

「友達の2人に過去問の話しをしたら欲しいって言われて、今日、この過去問を3人で分けてコピー。大変でした」
「だよね」

「で、3人別々に問題解いて、答え合わせしましょうって話になりました」
「いいですね~」

「で、3人とも解らない問題は、質問日に聞きましょうって」
「まあ、これだけの量の問題こなせば、勉強になりますよ」
「そう思います」

 夕食後、明里はテーブルの上を片付け、早速ノートを広げて過去問に取り組み始めた。
 私は熱燗を用意して、明里が一生懸命勉強している脇で、ゆっくりと飲み始めた。

 寝不足の状態で飲むお酒。
 後は寝るだけ。
 至福のひと時だった。

 ……しかし、私はまだ知らなかった。
 明里が、この先に向けて動き始めた時、
 既に碧も、この先に向けて動いていた事を。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:やっちまったか!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...