【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第4章

4-06 何か思う所があるようで

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 あれから1週間が経った。
 会社での昼食時、碧はあれから姿を見せない。
 何も無ければ良いのだが……
 そんな事を思いながら、出勤前の朝食を頂いていた。

 明里が話かけてきた。
「私の大学、今日で前期授業終了です」
「そうなんだ」
「だから、明日から夏休み」

「お~大学の夏休みって長いよね~」
「はい。でも、私の大学、夏休み後に前期の試験があるから……」
「ああ、本当に遊んでられないよね~」
「……そうなんです」

「でも、前期終了かぁ、はやいねぇ」
「はい」
 そんな話をして、私は出勤した。

・・・・・・

 昼食時、1週間ぶりに碧が姿を現した。
 久しぶりに、5人でテーブルを囲んだ。

「最近、忙しくて」
 そう言っていたが、何か思う所があるように感じてしまう。
 最後に喫茶店で言っていた碧の言葉が気になる。

 しかし碧は私に対して、何事も無かったかのように振舞っている。
 それはそれで……どうしたものか。

・・・・・・

 その日、仕事を終えて帰宅の途中、スーパーへ寄ってケーキを買った。
 明里は今日で前期終了との事。
 お疲れ様っていってあげよう。

 帰宅して、ケーキを見せると、明里は抱き付いてきた。
 夕食を終えた後、明里はコーヒーを入れてくれた。

「前期終了お疲れ様」
「ありがとうございます」

 2人でケーキを食べながら、私は明里に訊ねた。
「明日からの夏休みの予定は?」
「アルバイトしようと思って、今探しています」
「……」

「おじさん?」
「……今のお小遣いでは足りない?」
「いえ」

「……何か欲しい物がある?」
「いえ……」

「では……何でアルバイト?」
「アルバイトしちゃ、ダメですか?」
「……私は反対だな」
 明里は驚いた顔をした。

「理由を教えて下さい」

 私は、小さく息を吐いて言った。
「何か学生は、アルバイトするのが当たり前のような風潮があるけど、お金に困っている学生ならともかく、遊ぶお金欲しくてアルバイトするというのは、どうなんでしょう」

「それって、いけない事ですか?」

 私は、少し残念な顔をして言った。
「学校を卒業したら、いくらでも働けます。だから、経済的に許されるのであれば、せめて学生のうちは、学業に専念して欲しい」

「……そういう意味ですか」

「受験勉強をして大学に入った。でも、本当に一生懸命勉強しなければならないのは、大学に入ってからです」
「おっしゃるとおりです」

「また、アルバイトを社会勉強と捉えている人もいますが、明里の場合は、それよりも先に大学で学ばなければならない事が沢山あります。……まあ、学生のすべてが専門職に就く訳ではないから、明里にとって大学とは、『卒業しました』という位置付けであるなら、アルバイトするのもいいが……」
「……」

「……」
「わたし、お金を貯めたいんです」
「それは、何を買う為でしょう?」

「……」
「ああ、ごめん。干渉しすぎだよね」

「私、おじさんと同じように、大学院へ行きたい」
「えっ」
「そして、おじさんと同じ職場に就職したい」

「いや~なんだ、なんだ、なんだ~、そんなら言ってよぉ~解った、私に任せなさい。お金の事も、進学の事も」
「……」
 明里は下を向いてしまった。

「……どうした?」
「私、どこまでおじさんのお世話になっていいのでしょう?」
「……イヤか?」
「……」

「しかしな~それなら、なおさらアルバイトは反対です。私の世話になる事に抵抗あるなら、奨学金を利用するなり、そう成績優秀者には返済免除の奨学金もある。研究室に入ったら、泊まり込んで研究に向き合うぐらいでなければ。アルバイトなんかしてる時間等無い」
「……そうですか」

「そもそも明里はこの大学へギリギリの成績で入れたと思うし、アルバイトしてお金貯めても、大学院へ進めなければ意味ないでしょう」
「……おっしゃる通りです」

「そうそう、私に支援してもらう事に抵抗あるなら、後できっちり返してくれればいい」
「わかりました。でしたら、きっちりと利子付けて、お返しさせて下さい」

 ……まあ、結婚しちゃえばチャラなんだが、今は言わない事にしよう。

「では、これから明里の今後に向けての検討会議を開きましょう」
「?……ありがとうございます」

「で、何で私の会社なの?」
「この前、おじさんと会社の発表会を見に行った時、いいな~と思いました」

「……そう。就職先を具体的に決めるのは、まだ早いようにも思えるけど、まあ、とりあえずの目標としては、いいのかな」

「私の大学から、おじさんの会社に就職出来ます?」
「ああ、事業部なら毎年数人入ってる。研究所勤務だと2~3年に1人かな、院卒で入ってる」

「うわ~、狭き門」
「いや、単にエントリーしないだけだよ」
「そうなんですか?」

「明里の大学だったら、大学院でそこそこ活躍すれば、入れるんじゃないかなぁ」
「活躍?」

「まぁ……査読付きの国際会議で口述発表1本。国内学会で3本ぐらい、研究発表すれば」
「……そうですか」

「質疑応答が大変」
「質疑応答?」
「いや、学生のうちは、先生が付いてきてくれるから、助けてくれますよ」
「そ……そうですか」

「まあ、私の会社の研究所勤務なら、院卒でないと難しい」
「はい。ですので大学院まで行きたいです」

「わかった。で、次に大学院へ進学する方法だが、たいていの大学は、主に2通りあると思う」
「はい。大学院入学試験に合格して入るか、学内推薦で入るか、ですよね」

「そう。明里は、どちらを考えている?」
「……」
「決めるのは明里だが、私は学内推薦で入れるように勉強する事を勧めます」

「そのココロは?」
「まあ、これは、色々な考え方があると思うけど、院試で入る場合、3年から4年にかけて受験勉強必要です。でも研究室に入ったら研究に専念したい。受験勉強どころじゃない」
「なるほどです」

「それに対して、学内推薦の場合、大学の成績と面接の審査で進学出来る。ただ、学内推薦進学の場合、他大学は受けられない。でも、明里の大学の大学院なら、そのまま進んでいいんじゃないかな~」
「はい」

「問題は、学内推薦をもらう為には、どのぐらいの成績が必要か?これは、大学の教務課にでも行って聞いた方がいい。ちゃんと教えてくれますよ」
「わかりました。私も学内推薦を考えていました。大学の事務関係は夏休み期間中もやってるみたいだから、明日 色々 聞いてきます」

「じゃあ、その情報を元に、この続きは、また明日という事で」
「はい。色々とアドバイス頂き、ありがとうございました」
「いいえ、どういたしまして」

・・・・・・

 その日の夜、明里はネットで色々調べているようだ。

 その時の私は、まだ何も気付いていなかった。
 何故、明里がそのような事を言い出したのか。

 明里が、碧と同じステージに立とうとしている事を……。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 明里さんは、やる気だ。
 おじさんは、渡さない!

 次回:熾烈な競争が、既に始まっている。

 ……おいおい、楽しい学生生活を捨てて、いいのかい?
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