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第4章
4-03 さて、なんででしょう
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以前、各主任に対して、チームネームとチームカラーを決めて、提出してほしいとの話があり、その提出期限が迫ってきた。
こういった事は、大方非難の対象となる為、私の部下は、誰もやりたがらない。
しょうがないので、私が適当に決める事にした。
第3研究棟から外に出ると、社内の敷地の中で芝生の敷かれたエリアがある。
その芝生の中に歩道が作られ、幾つかベンチが用意されている。
私は、そのベンチに腰掛けて、一息ついていた。
ちょうどその時、碧が歩いてきた。
「あれ、主任、どうしたんですか?」
そう、ここは私の第3研と碧の第1研の中間地点だった。
「いやあ、天気がいいので日向ぼっこです」
「いいですね~では私も」
碧が隣に座った。
「なんか~ チームネームとチームカラー作ってくれって」
「ああ、うちの主任も言ってました。私に振ってきたので、チーム・スコッチってどうでしょうって適当に言ったら、ん~と言って、どっか行っちゃいました」
「スコッチウイスキーから、スコッチですか?」
「ああ、やっぱり解っちゃいますね」
「『お酒好き』って言ってましたよね」
「昨日、水割りを飲んでいたもので」
「1人でですか?」
「はい。独りで寂しく飲んでいました」
私は慌てて話題を変えた。
「碧さんの好きな食べ物は?」
「私は、果物でしたらイチゴです」
「苺ですか?」
「私、母がいないもので祖母に育てられたのですが、小さい頃、私が熱を出すと、祖母がミルクの中でイチゴを潰して食べさせてくれたんです」
「ほう……」
「あれ、こんな可愛い果物、私には似つかわしくないですか?」
「いえ、碧さんに似合ってますよ、苺って薔薇科の植物ですよね」
「薔薇ですか……って、私にはトゲがあるのですか?」
「苺かぁ」
「……主任?」
私は碧に挨拶して、職場へ戻った。
私は、チームネームとチームカラーを書いて提出した。
チームネームとチームカラーが他と重ならなければ、私の申請が受理される。
・・・・・・
それから数日後、社員証の新しいフォルダーが作られてきた。
私の申請が受理され、チームネームとチームカラーが登録されたようだ。
紺色(第3研究所)のネックストラップの真ん中に真紅のラインが入っている。
ネックストラップの帯には、白文字で会社名と会社のロゴが入っていた。
3人の部下から、チームネームを問うメールが届いた。
私は3人に向けてメールを送った。
「チーム・ストロベリー、チームカラーは真紅(真紅の薔薇の色)、赤に紫の色調を加えた混合色」
……少し待ったが、返事が来ない。
やっちまったか。
しばらくすると、綾乃から返事が届いた。
「チーム・ストロベリー、なんかカッコいいです」
続いてインテリ君からメールが届いた。
「チーム・ストロベリー、アメリカ空軍のチームにありそうな名前ですね。気に入りました」
最後にリーダー君から
「そーかっ!最初見た時、なんだ~?と思いましたが、チーム・ストロベリー、おー確かに、カッコいいです!!」
3人からのメールを読んで、本心で言ってくれているのか心配だが、まあ、嫌われてないようだ……と、思いたい。
・・・・・・
その日の昼食時、いつものように碧を含めてテーブルを囲んだ。
碧も新しいネックストラップを付けていた。
我々の第3研究所の紺色ストラップに対して、碧の第1研究所のストラップは青色だった。
私は碧に話しかけた。
「水瀬さんも、新しいネックストラップになったんですね」
「ええ、なんだかよそ者がいるって、目立ってしまいますね」
リーダー君は言った。
「いゃあ、そんなストラップの色以前に、水瀬さんは注目の的ですよ」
インテリ君は尋ねた。
「中心線のチームカラーは、何色でしょう?オレンジですか?」
「そうですね、私のチームカラーは、琥珀色です」
私はそれを聞いた時、いやな予感がした。
綾乃が質問した。
「水瀬先輩のチームネームは、何ていうんですか?」
「それがね~チーム・スコッチっていうの」
嫌な予感が的中した。
あの時、碧は上司から、チームネーム、何にしようかと相談され、適当に言ったチーム・スコッチという名前を付けた。
この事から、碧の上司は、碧に執着している事が伺える。
この先、碧を引き抜く際、ひと悶着ありそうだ。
碧が尋ねた。
「みなさんの中心線、チームカラーは何色ですか?」
綾乃が答えた。
「真紅色です」
「帯の紺色と合いますね~皆さんのチームネームは?」
綾乃が嬉しそうに答えた。
「チーム・ストロベリーです」
碧の箸が止まった。
リーダー君が言った。
「チーム・ストロベリー、カッコいいでしょう」
綾乃が私に尋ねた。
「でも、なんでストロベリーという名前にしたんですか」
私は碧の目をみて答えた。
「さて、なんででしょう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:明里 VS 碧
こういった事は、大方非難の対象となる為、私の部下は、誰もやりたがらない。
しょうがないので、私が適当に決める事にした。
第3研究棟から外に出ると、社内の敷地の中で芝生の敷かれたエリアがある。
その芝生の中に歩道が作られ、幾つかベンチが用意されている。
私は、そのベンチに腰掛けて、一息ついていた。
ちょうどその時、碧が歩いてきた。
「あれ、主任、どうしたんですか?」
そう、ここは私の第3研と碧の第1研の中間地点だった。
「いやあ、天気がいいので日向ぼっこです」
「いいですね~では私も」
碧が隣に座った。
「なんか~ チームネームとチームカラー作ってくれって」
「ああ、うちの主任も言ってました。私に振ってきたので、チーム・スコッチってどうでしょうって適当に言ったら、ん~と言って、どっか行っちゃいました」
「スコッチウイスキーから、スコッチですか?」
「ああ、やっぱり解っちゃいますね」
「『お酒好き』って言ってましたよね」
「昨日、水割りを飲んでいたもので」
「1人でですか?」
「はい。独りで寂しく飲んでいました」
私は慌てて話題を変えた。
「碧さんの好きな食べ物は?」
「私は、果物でしたらイチゴです」
「苺ですか?」
「私、母がいないもので祖母に育てられたのですが、小さい頃、私が熱を出すと、祖母がミルクの中でイチゴを潰して食べさせてくれたんです」
「ほう……」
「あれ、こんな可愛い果物、私には似つかわしくないですか?」
「いえ、碧さんに似合ってますよ、苺って薔薇科の植物ですよね」
「薔薇ですか……って、私にはトゲがあるのですか?」
「苺かぁ」
「……主任?」
私は碧に挨拶して、職場へ戻った。
私は、チームネームとチームカラーを書いて提出した。
チームネームとチームカラーが他と重ならなければ、私の申請が受理される。
・・・・・・
それから数日後、社員証の新しいフォルダーが作られてきた。
私の申請が受理され、チームネームとチームカラーが登録されたようだ。
紺色(第3研究所)のネックストラップの真ん中に真紅のラインが入っている。
ネックストラップの帯には、白文字で会社名と会社のロゴが入っていた。
3人の部下から、チームネームを問うメールが届いた。
私は3人に向けてメールを送った。
「チーム・ストロベリー、チームカラーは真紅(真紅の薔薇の色)、赤に紫の色調を加えた混合色」
……少し待ったが、返事が来ない。
やっちまったか。
しばらくすると、綾乃から返事が届いた。
「チーム・ストロベリー、なんかカッコいいです」
続いてインテリ君からメールが届いた。
「チーム・ストロベリー、アメリカ空軍のチームにありそうな名前ですね。気に入りました」
最後にリーダー君から
「そーかっ!最初見た時、なんだ~?と思いましたが、チーム・ストロベリー、おー確かに、カッコいいです!!」
3人からのメールを読んで、本心で言ってくれているのか心配だが、まあ、嫌われてないようだ……と、思いたい。
・・・・・・
その日の昼食時、いつものように碧を含めてテーブルを囲んだ。
碧も新しいネックストラップを付けていた。
我々の第3研究所の紺色ストラップに対して、碧の第1研究所のストラップは青色だった。
私は碧に話しかけた。
「水瀬さんも、新しいネックストラップになったんですね」
「ええ、なんだかよそ者がいるって、目立ってしまいますね」
リーダー君は言った。
「いゃあ、そんなストラップの色以前に、水瀬さんは注目の的ですよ」
インテリ君は尋ねた。
「中心線のチームカラーは、何色でしょう?オレンジですか?」
「そうですね、私のチームカラーは、琥珀色です」
私はそれを聞いた時、いやな予感がした。
綾乃が質問した。
「水瀬先輩のチームネームは、何ていうんですか?」
「それがね~チーム・スコッチっていうの」
嫌な予感が的中した。
あの時、碧は上司から、チームネーム、何にしようかと相談され、適当に言ったチーム・スコッチという名前を付けた。
この事から、碧の上司は、碧に執着している事が伺える。
この先、碧を引き抜く際、ひと悶着ありそうだ。
碧が尋ねた。
「みなさんの中心線、チームカラーは何色ですか?」
綾乃が答えた。
「真紅色です」
「帯の紺色と合いますね~皆さんのチームネームは?」
綾乃が嬉しそうに答えた。
「チーム・ストロベリーです」
碧の箸が止まった。
リーダー君が言った。
「チーム・ストロベリー、カッコいいでしょう」
綾乃が私に尋ねた。
「でも、なんでストロベリーという名前にしたんですか」
私は碧の目をみて答えた。
「さて、なんででしょう」
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次回:明里 VS 碧
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