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第3章
3-10 今日は……
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リーダー君のお陰で綾乃へのパワハラ疑惑の噂は収束した。
綾乃は、宴会で飲みすぎてしまって体調が悪った。
しかし、せっかく誘って頂いている先輩方に対して、申し訳ない気持ちだった。
そこに主任が通りかかったので、この後、主任と約束がありますのでと言って誘ってくれた先輩方に謝罪した。
といった事を、噂している人に説明した。
また、2週間後、水瀬碧が出社すれば、彼女によって、はっきりする。
という事も、付け加えてくれた。
ただ1つ、心配な事がある。
再来週の月曜日、碧は本当に出社してくれるだろうか?
このまま、退職という事もある。
そうなると……
時計を見ると、9時を回っていた。
いかん、明里にメールする事を忘れていた。
帰宅が遅くなる場合は、メールする約束だった。
私は、謝罪と先に夕食を取るようメールを入れて帰路についた。
私がマンションに着いた時、私の腕時計は10時を回っていた。
遅くなってしまった。
玄関を開けると部屋は真っ暗だった。
あれ?まだ寝る時間でもないし、明里はどこかへ出かけているのだろうか?
照明を付けようとスイッチに手を伸ばした時、
「カチッ」
リビングの方でライターの音と、炎の光を感じた。
その光は、ろうそくの炎のように、ゆらゆらと揺れている。
薄暗い中、その光をたよりに、私はリビングへ向かった。
明里はリビングテーブルの後ろで、両手を胸にライターを持って立っていた。
「おじさん、お疲れ様です」
明里は優しい笑顔で声を掛けてくれた。
テーブルの真ん中に、小さな丸いケーキ。
その上に1本のローソクが立てられ、その炎のみがこの部屋を照らしている。
ケーキのまわりには、夕食の準備がされていた。
「ああ、先に夕食を取るよう、メール送ったんだが」
「はい、ちょっと心配になって、私からメールしようとした時、丁度メールが届きました」
「ああ、すまない。すっかり失念してしまった」
「いえ、私はおじさんの負担にならない事を、何よりも望んでいますので、気にしないでください」
「申し訳ない……で、これは何のサプライズだろう?」
「今日は5月12日です」
「ん~何だろう?ロウソクが1本……」
「……」
「……そうか!」
「はい、私にとって、誕生日よりも大切な日です」
「そ~か~、あれから1年経つのか~」
「はい、この日、私はおじさんに拾って頂きました」
「拾っただなんて~」
「この1年、色々とありました」
「そうだね~」
「この1年、本当にありがとうございました」
「い~え、こちらこそ、ありがとう」
明里は眼を潤ませている。
ロウソクの光で、明里の瞳がキラキラしていた。
その日は、ロウソクの光に包まれながら、2人で少し遅い夕食を行い、コーヒーとケーキを頂いた。
その日、明里は枕を抱いて私のベッドに来てくれた。
私は明里を抱き寄せながら、これ以上の事って何だろう……等と考えていた。
会社に対する不満……。
なんか、もう、どうでもいい。
ただ、こうして、明里と生活出来れば……。
私をそんな気持ちにさせてくれる。
明里は、そんな娘のようだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回:光合成です
綾乃は、宴会で飲みすぎてしまって体調が悪った。
しかし、せっかく誘って頂いている先輩方に対して、申し訳ない気持ちだった。
そこに主任が通りかかったので、この後、主任と約束がありますのでと言って誘ってくれた先輩方に謝罪した。
といった事を、噂している人に説明した。
また、2週間後、水瀬碧が出社すれば、彼女によって、はっきりする。
という事も、付け加えてくれた。
ただ1つ、心配な事がある。
再来週の月曜日、碧は本当に出社してくれるだろうか?
このまま、退職という事もある。
そうなると……
時計を見ると、9時を回っていた。
いかん、明里にメールする事を忘れていた。
帰宅が遅くなる場合は、メールする約束だった。
私は、謝罪と先に夕食を取るようメールを入れて帰路についた。
私がマンションに着いた時、私の腕時計は10時を回っていた。
遅くなってしまった。
玄関を開けると部屋は真っ暗だった。
あれ?まだ寝る時間でもないし、明里はどこかへ出かけているのだろうか?
照明を付けようとスイッチに手を伸ばした時、
「カチッ」
リビングの方でライターの音と、炎の光を感じた。
その光は、ろうそくの炎のように、ゆらゆらと揺れている。
薄暗い中、その光をたよりに、私はリビングへ向かった。
明里はリビングテーブルの後ろで、両手を胸にライターを持って立っていた。
「おじさん、お疲れ様です」
明里は優しい笑顔で声を掛けてくれた。
テーブルの真ん中に、小さな丸いケーキ。
その上に1本のローソクが立てられ、その炎のみがこの部屋を照らしている。
ケーキのまわりには、夕食の準備がされていた。
「ああ、先に夕食を取るよう、メール送ったんだが」
「はい、ちょっと心配になって、私からメールしようとした時、丁度メールが届きました」
「ああ、すまない。すっかり失念してしまった」
「いえ、私はおじさんの負担にならない事を、何よりも望んでいますので、気にしないでください」
「申し訳ない……で、これは何のサプライズだろう?」
「今日は5月12日です」
「ん~何だろう?ロウソクが1本……」
「……」
「……そうか!」
「はい、私にとって、誕生日よりも大切な日です」
「そ~か~、あれから1年経つのか~」
「はい、この日、私はおじさんに拾って頂きました」
「拾っただなんて~」
「この1年、色々とありました」
「そうだね~」
「この1年、本当にありがとうございました」
「い~え、こちらこそ、ありがとう」
明里は眼を潤ませている。
ロウソクの光で、明里の瞳がキラキラしていた。
その日は、ロウソクの光に包まれながら、2人で少し遅い夕食を行い、コーヒーとケーキを頂いた。
その日、明里は枕を抱いて私のベッドに来てくれた。
私は明里を抱き寄せながら、これ以上の事って何だろう……等と考えていた。
会社に対する不満……。
なんか、もう、どうでもいい。
ただ、こうして、明里と生活出来れば……。
私をそんな気持ちにさせてくれる。
明里は、そんな娘のようだ。
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次回:光合成です
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