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第2章
2-05 私、怒ってます!
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私は、いつものように8時に帰宅した。
既に夕食の準備は整っていた。
明里と一緒に夕食を頂く。
しかし、まったく会話が無い。
そう、昨日明里を怒らせてしまった。
私が明里の気持ちを軽く捉えていた事に、怒っている。
夕食を終え、明里はキッチンに向かって後片付けをしている。
私はリビングの椅子に座り、明里の後ろ姿を見ていた。
……私の方を振り向かない。
私は明里の後ろに移動して、明里の両腕を掴んだ。
すると明里は、私に背を向けたまま言った。
「私、怒ってます!」
……なんだろう。
怒った明里って、めちゃくちゃかわいい。
私は後ろから、明里に言った。
「本当はあの男と、付き合いたかったんじゃないの?」
明里は、両手を握りしめている。
私は、明里をそのまま引き寄せた。
明里は下を向き、逃げるように自分の部屋へ入って行った。
私は自分の部屋のベッドで横になりながら、色々な事を考えていた。
先ほどの明里の表情が思い出される。
ビールでも飲みたいと思い、リビングの冷蔵庫に向かった。
すると、明里の部屋から、すすり泣く声が漏れてくる。
私は、明里の部屋をノックした。
「明里?」
「……」
「明里……入ってもいい?」
「……」
「あかり?」
「……どうぞ」
明里の部屋に入ると、明里はベッドの上に座り、枕を抱いて泣いていた。
「どうした?」
明里は抱いた枕で顔を隠し、枕の上からそっと目だけをのぞかせている。
私は明里のベッドに腰を下ろした。
「さっきは悪かった」
「うっ……ごめんなさい」
「ごめんなさい? 明里にとっては怒る事であって、謝る事じゃないだろう」
「違うんです」
「何が違うんだい? 私に解かるように話をしてくれないか」
「……」
「……」
「さっきまでの私は、本当に怒っていました。おじさんが私を信じてくれていなかった事にです」
「そうだね」
「でも、本当はあの男と、付き合いたかったんじゃないの……って言われた時、私に原因があるって気付きました」
「ちょっと……何を言ってるんだ」
「最初の、おじさんとの出会いです。私がおじさんから、いいかげんな娘だと思われてる事、当然です」
「え~明里?」
「最初におじさんと会った時の私、やり直したくても、やり直す事が出来ない……」
明里は枕で声を抑えるように、震えながら泣きだしてしまった。
私は、頭の中を整理した。
「明里、聞いて、話は3つある」
「……」
「1つめは、最初に明里と会った時だが……見ず知らずの私に、帰るところ無いから泊めて欲しい……と言ってきた時は、正直、なんて娘だろうと思った。でも、明里が独立する為に用意してくれたお金を、お母さんの為に使って家を出て……そして本当は、これからの事が怖くて死にそうだったって言ってたよね。そう、あの時の明里は、ぎりぎりの所を歩いていたと思う。私は明里がいいかげんな娘だとは、思っていないよ」
明里は、怯えるような目を枕の上から覗かせて言った。
「……本当?」
「ああ。次に2つめだけど、最初に明里と会った時、明里が追い詰められていなければ、私との出会いは無かったと思う。明里は私との最初の出会いを後悔しているようだが、私はむしろ感謝している」
「……おじさん」
「そして、最後の3つめだけど、私が明里を信用していない事で、明里は怒ったよね。その明里の怒った表情が可愛くて、ついもう少し怒らせてみたくなって……」
「ううう……おじさん……ひどい」
「ああ、その表情……いい」
・・・・・・
その日、明里は私を許さなかった。
「私、怒ってます!」
明里が向ける怒った表情。
私にとって、ご褒美だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
明里さん。
これからも時々、変態おじさんにご褒美をあげて下さい。
次回:(第2章最終話)明里さんとデート
既に夕食の準備は整っていた。
明里と一緒に夕食を頂く。
しかし、まったく会話が無い。
そう、昨日明里を怒らせてしまった。
私が明里の気持ちを軽く捉えていた事に、怒っている。
夕食を終え、明里はキッチンに向かって後片付けをしている。
私はリビングの椅子に座り、明里の後ろ姿を見ていた。
……私の方を振り向かない。
私は明里の後ろに移動して、明里の両腕を掴んだ。
すると明里は、私に背を向けたまま言った。
「私、怒ってます!」
……なんだろう。
怒った明里って、めちゃくちゃかわいい。
私は後ろから、明里に言った。
「本当はあの男と、付き合いたかったんじゃないの?」
明里は、両手を握りしめている。
私は、明里をそのまま引き寄せた。
明里は下を向き、逃げるように自分の部屋へ入って行った。
私は自分の部屋のベッドで横になりながら、色々な事を考えていた。
先ほどの明里の表情が思い出される。
ビールでも飲みたいと思い、リビングの冷蔵庫に向かった。
すると、明里の部屋から、すすり泣く声が漏れてくる。
私は、明里の部屋をノックした。
「明里?」
「……」
「明里……入ってもいい?」
「……」
「あかり?」
「……どうぞ」
明里の部屋に入ると、明里はベッドの上に座り、枕を抱いて泣いていた。
「どうした?」
明里は抱いた枕で顔を隠し、枕の上からそっと目だけをのぞかせている。
私は明里のベッドに腰を下ろした。
「さっきは悪かった」
「うっ……ごめんなさい」
「ごめんなさい? 明里にとっては怒る事であって、謝る事じゃないだろう」
「違うんです」
「何が違うんだい? 私に解かるように話をしてくれないか」
「……」
「……」
「さっきまでの私は、本当に怒っていました。おじさんが私を信じてくれていなかった事にです」
「そうだね」
「でも、本当はあの男と、付き合いたかったんじゃないの……って言われた時、私に原因があるって気付きました」
「ちょっと……何を言ってるんだ」
「最初の、おじさんとの出会いです。私がおじさんから、いいかげんな娘だと思われてる事、当然です」
「え~明里?」
「最初におじさんと会った時の私、やり直したくても、やり直す事が出来ない……」
明里は枕で声を抑えるように、震えながら泣きだしてしまった。
私は、頭の中を整理した。
「明里、聞いて、話は3つある」
「……」
「1つめは、最初に明里と会った時だが……見ず知らずの私に、帰るところ無いから泊めて欲しい……と言ってきた時は、正直、なんて娘だろうと思った。でも、明里が独立する為に用意してくれたお金を、お母さんの為に使って家を出て……そして本当は、これからの事が怖くて死にそうだったって言ってたよね。そう、あの時の明里は、ぎりぎりの所を歩いていたと思う。私は明里がいいかげんな娘だとは、思っていないよ」
明里は、怯えるような目を枕の上から覗かせて言った。
「……本当?」
「ああ。次に2つめだけど、最初に明里と会った時、明里が追い詰められていなければ、私との出会いは無かったと思う。明里は私との最初の出会いを後悔しているようだが、私はむしろ感謝している」
「……おじさん」
「そして、最後の3つめだけど、私が明里を信用していない事で、明里は怒ったよね。その明里の怒った表情が可愛くて、ついもう少し怒らせてみたくなって……」
「ううう……おじさん……ひどい」
「ああ、その表情……いい」
・・・・・・
その日、明里は私を許さなかった。
「私、怒ってます!」
明里が向ける怒った表情。
私にとって、ご褒美だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
明里さん。
これからも時々、変態おじさんにご褒美をあげて下さい。
次回:(第2章最終話)明里さんとデート
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