【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第1章

1-15(第1章 最終話)私のしている事

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 卒業祝いのディナーを終えて、ゆっくり歩きながら帰りの駅に向かった。

 突然、明里が私の左手を繋いだ。
 私の指の間に、明里が指を入れてきた。
 ……そうだ、今、私の左にいるのは明里だ。5年前の裕子じゃない。
 裕子と歩いた時は、私の左腕を掴むようにして歩いた。

 その時、明里が繋いでいる私の左手を力強く握った。
「……明里さん?」
 明里は握った手を上向きに返し、私の正面を向いた。

 そして、ゆっくりと私の胸に頭を押し付けて言った。
「私、おじさんの元フィアンセさんに、嫉妬しています」
「……」

・・・・・・

 マンションへ戻り、自分の部屋へ向かおうとした時、明里に呼び止められた。
「おじさん!」
 明里は、真剣な眼差しを私に向けている。
「……はい」
「……」

「……何でしょう」
「以前、おじさんから貰った『お願いを1つ叶えてくれる券』、高校を卒業した今、使っていいですか」

 ……なんだろう、あらたまって。
「はい。そのカードを渡した時に言ったように、私の出来る事なら」
 明里は、私を真っ直ぐ見て言った。

「私は、おじさんのフィアンセに、なれるでしょうか」
 明里からの突然の話に、私はたじろいだ。

・・・・・・

 しばしの沈黙の後、私はそれに答えた。
「それは……今の明里に対して、私の出来る事ではない」
「どうしてですか!」
 すかさず明里は言葉を返した。

「……」
 私と明里は立ったまま、沈黙が続いた。

・・・・・・

 しばらくして、私は答えた。
「わかった。明里が大学を卒業したら……考える」
「……はい」

「それまで、そのカードは明里が預かっていてくれ」
「はい。それまではこのカード、私のお守りとして預からせて頂きます」

・・・・・・

 それから私は入浴を済ませ、ベッドで一人、横になった。

 明里との同居が始まって10ヶ月になる。
 布団の中で添い寝する事はあっても、その先へ踏み出す事は出来ない。

 先ほど明里は、自分の心を私に預けてきた。
 私も明里に惹かれている。

 しかし、明里はまだ若い。
 若い頃は、将来を見通せない。
 本当に私と生涯を、共に過ごせるのか?

 そして、明里は大学生になる。
 この先、良い人との出会い、普通にあるだろう。
 明里が私の前から立ち去る日が、来るような気がする。

 その時、私は自分を支えられるだろうか。
 その後、私は、立ち直れるだろうか。
 溺れているのは、私の方だ。
 年を重ねると、臆病になる。

 そして明里自身にとっても……このような生活、続けて良いのだろうか。

 その一方で、私は明里に大学受験を勧めた。
 心の何処かで、明里を繋ぎ止めたいという気持ちがあったのだろう。

 私のしている事……裏腹である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 本話までが、第1章となります。
 ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
 次回、第2章から、明里さんは大学生になります。
 女子中学、女子高校で育った明里さんです。
 そして、大学では、モテモテの明里さんです。
 これから、どうなっちゃうのでしょう。
 是非、お付き合い下さい m(_ _)m
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