【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

文字の大きさ
上 下
11 / 88
第1章

1-11 しかし、まあ、なんだねぇ

しおりを挟む
 明里が受験した大学で、最初の合格発表の日を迎えた。

 目標の大学を5校。合格圏に入っている大学を2校受験した。
 今日はその中でも、目標としている大学の発表である。

 合否の結果はインターネットで確認する。
 受験番号を入力する事で合否の結果が表示される。

 しかし私には受験番号を教えてくれない。
 発表は午前10時から。
 明里は、いつものように朝6時に起きて、落ち着かない様子。

 突然、玄関で履物を履いている。
「……どうしたぁ?」
「夕食の食材、買いに行ってきます」

「まだ9時だよ」
「近くのスーパーは9時から開店」
「今いかなくても」
「落ちてたら、買い物に行く元気なくなりそう」

「結果発表は今日が最後って訳じゃないんだから」
「行ってきま~す」
 明里は飛び出して行った。
 ……やれやれ。

 しかし、落ち着かないのは私も同様である。
 今、この部屋は、私一人となってしまった。
 静寂の中、秒針の音だけが鳴り響いている。

 ……この時計の秒針って、こんなに大きな音だっけ。
「ピンポ~ン」
 玄関チャイムにビクッとした。

 こんな時に……誰だぁ?
 もし、ここに明里が居たら、笑われてしまうではないか。
 明里が買い物に行っていて……良かった~

・・・・・・

 9時55分、明里は夕食の買い物を終えて、息を切らして帰ってきた。
「ただいま~」
「おかえり」
「まにあったぁ~」
「ん?」

「発表は、おじさんと一緒にみたいの」
「……そう」
「あ~あと3分」

 明里はリビングテーブルの椅子に座り、両手を合わせて祈りながら、足はバタバタさせている。
 10時と共に、合否結果サイトにアクセス。

 画面には、『現在アクセスが集中しており、つながりにくい状況となっております。しばらく時間をおいてから再度お試しください』
「……」
「……」

 5分後、再びアクセス。
 『現在アクセスが集中しており……』

 私は独り言のように言った。
「しかし、まあ、なんだねぇ」
「……おじさん……ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「……はい、何でしょう」

「何か……楽しんでいませんか?」
「……なんで?」
「……なんか……楽しそうだから」
「いや……そんな事はない」
「……」

「いや~もし残念な結果であっても、明里が落ち込まないように、明るく振舞わないと……と思いまして」
「お気遣い頂き、痛み入ります」

「……すみません」
 私は無神経な発言に謝罪した。
「……ごめんなさい」
 明里も心無い返しに謝ってきた。

 私は、明里の落ち着かない様子をみていると、なんだか申し訳ない気分になってきた。
「あ~本当は明里と一緒に合否の結果を見たかったんだが……」
 明里は意味不明の表情を私に向けた。

「実は明里がさっきスーパーに行っている間、明里宛てに書留が届きました」
 私は隠していた封筒を明里に渡した。
 明里が受験した大学からである。

 もちろん開封していないが、何か色々入っている。
「開けてみて」
 明里は手を震わせながら開封した。

 中に入っていたのは入学手続き書類一式と合格通知。
「おめでとう」
 明里は合格通知を握り締めながら、泣きそうな声で言った。
「……ありがとう……おじさん」
「はい。よくがんばりました」

 私は、明里の頭を髪がくしゃくしゃになるまで、なでまわした。
 明里が合格通知を見た時、『大喜び』といった表情ではなかった。
 ギュッと眼をつぶって下を向いて……「良かった」と言葉を漏らした。
 必死に応えたかった……そんな表情だった。

 その日、明里の買ってきた食材で、ゆっくりと食事しながら合格祝いをした。

・・・・・・

 結果として、7校受けて合格したのは、目標としていた大学1校と、合格圏として受けた1校だけだった。

「目標大学、受かってよかったね」
「運が味方してくれました」
「私が渡した、お守りカイロのお陰かな」
「そのお守りじゃ……ないよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 明里さん、目標大学合格おめでとう。
 たぶん、おじさんのほうが喜んでる。
 次回:ひさしぶりの1人生活
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...