【完結】おじさんが家出少女を自宅で囲う

青村砂希

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第1章

1-08 約束のご褒美

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 受験勉強を始めて2週間目に入った。
 毎朝、明里の音読を聞いているが、だいぶ調子がいい。
 数学も、高校1年までは真面目に勉強していたというだけあって、思っていたより進みが良い。

 ・・・・・・

 そして、3週間目に入ってからは、CDを0.8倍速で再生し、音読トレーニングを行った。
 今月の6月中にCDを1倍速、ネイティブ速度で音読出来る事を目標とした。

 現在数学は、中学までの総復習を終わらせ、高校の数学を始めた。
 今月中に、数1の基礎を終わらせる。

 週末は、心と体と頭のリフレッシュとして適度な運動を行う。
 そして夕食後、私のベッドの上に座って物理の話をする。

 教育には、3つのタイプがあると思う。
 1つめは、学習の遅れている子を皆について行けるところまで引き上げる教育。
 2つめは、普通の成績の子を、優秀なレベルへ引き上げる教育。
 そして3つめは、凡人を天才に育て上げる教育。

 ただし、この3番目の教育は、大学受験に向いていない。
 よってこの教育は、この時間のみ行っている。

 私は、紙とエンピツを用意して、ここでは数式を使わず、絵を描いてイメージで伝える。

 最近は、熱いお茶とおにぎりを作ってワゴンに乗せて私の部屋へ運んでくる。
 食べながら、ベッドに座って話をする。
 明里にとって、この時間が一番楽しいらしい。

 ・・・・・・

 明里はご両親に、大学生の先輩とシェアハウスで生活していると伝えているようだ。
 そして、心配を掛けないよう、定期的に実家へ顔を出している。

 明里は先週、夏服を取りに実家へ行った。
 そして、高校の制服も、夏服になった。

 純白のワイシャツにネクタイ。
 そして濃紺のスカート。

 明里は毎朝、英語の音読、そして朝食を終えてから高校の制服に着替える。
 それから玄関を出る前の3分間、いつも慌ただしい。

 明里がくるっとまわった時、スカートの裾が広がる。
 しかしスカートの奥は……め~ない。
 ……わざとだ……わざとに違いない!
 ……実にけしからん!

 この受験が終わったら、お仕置きをしなければいけない!
 ……と、私は思った 〔←やめなさい!〕

 ・・・・・・

 夏休みに入った。
 朝、私が出社するまでの90分、基礎物理を教える時間に割り当てた。
 そして、私が出社しているあいだ、厳選英文の丸暗記。
 英文を読みながら、頭の一方で訳が出てくるように暗唱音読を繰り返させた。

 それと、数学の演習問題。
 こればかりは、数をこなさなければ結果に繋がらない。
 英語の暗唱音読と数学の演習問題を、交互に行うよう伝えた。

 私は明里に提案した。
「今後は模試を受けていきましょう。8月の模試で3科目の平均偏差値は50が目標。達成出来れば、何か1つご褒美をあげよう」

「〇〇大学の理系って、偏差値62前後でしょう。間に合うかなぁ」
「今は、基礎を固めている。
   8月の模試で、偏差値50
  10月の模試で、偏差値54
  12月の模試で、偏差値58
   2月の入試で、偏差値62」

「そんなにうまくいくかな~、偏差値って高いほど上がりにくいよね」
「明里の成長は2次曲線になっている。私を信じなさい」
「はい!信じます!」

 ・・・・・・

 9月に入った。
 8月におこなった模試の結果が返ってきた。
 平均偏差値は50.2。
 なんとか目標達成である。

「約束のご褒美、何がいい?」
 明里は、嬉しそうに答えた。
「お願いを1つ叶えてくれる券」

「なんだそれ……」
「おじさんからのご褒美、大切に取っておきたい。……いい?」
「……わかった。私の出来る事なら」
「おじさんの出来ない事なら、お願いしても意味ない」

 私は『お願いを1つ叶えてあげる券』と書いた紙を明里に渡した。
 明里は嬉しそうに、それを受け取った。

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 次回:願書受付が始まった
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