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第四章 新生活は足りないものが多すぎる
プロローグ
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「部屋を交換して欲しい」
休日の朝。
前職の激務の影響からか平日はとにかく必要最小限のことだけを行い、基本的にはゴロゴロしている事が多く、やるべき事は休日に回して一気に片付けるのが最近の俺の行動パターンだった。
つまり、今日は普段やりたくても出来ない事をやる為の特別な日であり、どうしようもない事に関わっている暇などなかった。
「うん。結構旨いな。なんかこう……和食とかパンとかじゃないものが食卓に並んでるとあまり朝食って感じがしなくて最初は戸惑ったけど、悪くないもんだ」
「ありがと。あ、おかわりいる? 私もおかわりするからするなら持ってくるけど……」
「いらん。流石に旨くても朝からそんなに入らねえよ。俺はお前じゃないんだ」
「ええい無視するな! 妾の話を聞け!」
で、あるというのに、目の前に座っていた金髪は華麗にスルーした俺の態度がお気に召さなかったようで、テーブルを両手でバンバンと叩いた。
「妾と、お主達の部屋を交換して欲しい。と、言っておるのじゃ」
「だから何でだよ。あ、おいリリ。お前また下着姿じゃないか。下を穿け下を。服はちゃんと買ってやってるだろう?」
朝飯を腹に入れた事でようやくボーッとした頭がすっきりしたのか、立ち上がったリリがトランクスとTシャツ姿だった事にようやく気が付いて苦言を呈する。
そんな俺の言葉に、リリは「えー?」と、不満の声を上げた。
「旦那様と姫様しかいないのに? 別に見られても何とも思わないよ?」
「俺が思うんだよ。目のやり場に困る」
唯一の救いなのは女性物の下着ではなくてトランクスという点だが、女性物の下着が家にないのだから仕方がない。
毎度仕事が終わる度に「買いに行かなくちゃなぁ……」とは思っているのだが、中々買いに行く勇気がでないのである。
流石に独身の中年男が一人で女性用の下着をレジに持っていくのはレベルが高すぎた。
ちなみに、リリの年齢だが19歳との事だった。こちらでは成人前のギリギリ少女という年齢だが、あちらでは既に成人している年齢らしい。だが、それならば相応の恥じらいは身につけておいて欲しかった所だが。
「だから! 無視するでないわ!」
いつの間にか思考がそれてしまった俺に対して、再び金髪が癇癪を起こす。
なんかこいついつも怒ってるような気がするな。
もっとカルシウムの多い料理を増やすようにリリに言っておくか。
「何だよ。ああ、部屋を交換して欲しいんだっけ? ダメに決まってんだろ」
「何故じゃ!?」
「お前は一人部屋で俺達は二人部屋だからだ」
俺は湯呑に手を伸ばしてお茶をすすると簡潔に告げる。
そもそも、リリとの二人部屋を嫌がったこいつにどうして譲歩しなければいけないのか。
「別にお主らを離れ離れにするつもりは無いというのに。単純に部屋を入れ替えてくれたら良いのじゃ」
「何で二人で部屋使ってる俺達が狭い方の部屋に行かなきゃならないんだよ。頭腐ってんじゃねぇのか?」
「く、腐ってなどおらぬわ!」
思い当たる節でもあるのか自らの頭を両手で押さえた金髪に呆れた視線を向ける俺の隣に、戻ってきたリリが腰を下ろす。
「何? 何の話?」
「ああ。なんかこの馬鹿が部屋交換してくれって」
テーブルに茶碗を置いて金髪を見つめた後、俺に視線を戻すとリリはコテンと首を傾げた。
「何で?」
「知るか。どうせいつもの我が儘だよ」
「そっか。じゃー、しょうがないね」
「ああ。しょうがないんだ」
「何故今の説明で納得する!? 理不尽じゃ!」
土曜の朝っぱらからクソガキの我が儘を聞かされるこっちの方が余程理不尽だよ。
取り敢えず、不本意ながら三人で始まった生活の最初の休日はこうして始まった。
休日の朝。
前職の激務の影響からか平日はとにかく必要最小限のことだけを行い、基本的にはゴロゴロしている事が多く、やるべき事は休日に回して一気に片付けるのが最近の俺の行動パターンだった。
つまり、今日は普段やりたくても出来ない事をやる為の特別な日であり、どうしようもない事に関わっている暇などなかった。
「うん。結構旨いな。なんかこう……和食とかパンとかじゃないものが食卓に並んでるとあまり朝食って感じがしなくて最初は戸惑ったけど、悪くないもんだ」
「ありがと。あ、おかわりいる? 私もおかわりするからするなら持ってくるけど……」
「いらん。流石に旨くても朝からそんなに入らねえよ。俺はお前じゃないんだ」
「ええい無視するな! 妾の話を聞け!」
で、あるというのに、目の前に座っていた金髪は華麗にスルーした俺の態度がお気に召さなかったようで、テーブルを両手でバンバンと叩いた。
「妾と、お主達の部屋を交換して欲しい。と、言っておるのじゃ」
「だから何でだよ。あ、おいリリ。お前また下着姿じゃないか。下を穿け下を。服はちゃんと買ってやってるだろう?」
朝飯を腹に入れた事でようやくボーッとした頭がすっきりしたのか、立ち上がったリリがトランクスとTシャツ姿だった事にようやく気が付いて苦言を呈する。
そんな俺の言葉に、リリは「えー?」と、不満の声を上げた。
「旦那様と姫様しかいないのに? 別に見られても何とも思わないよ?」
「俺が思うんだよ。目のやり場に困る」
唯一の救いなのは女性物の下着ではなくてトランクスという点だが、女性物の下着が家にないのだから仕方がない。
毎度仕事が終わる度に「買いに行かなくちゃなぁ……」とは思っているのだが、中々買いに行く勇気がでないのである。
流石に独身の中年男が一人で女性用の下着をレジに持っていくのはレベルが高すぎた。
ちなみに、リリの年齢だが19歳との事だった。こちらでは成人前のギリギリ少女という年齢だが、あちらでは既に成人している年齢らしい。だが、それならば相応の恥じらいは身につけておいて欲しかった所だが。
「だから! 無視するでないわ!」
いつの間にか思考がそれてしまった俺に対して、再び金髪が癇癪を起こす。
なんかこいついつも怒ってるような気がするな。
もっとカルシウムの多い料理を増やすようにリリに言っておくか。
「何だよ。ああ、部屋を交換して欲しいんだっけ? ダメに決まってんだろ」
「何故じゃ!?」
「お前は一人部屋で俺達は二人部屋だからだ」
俺は湯呑に手を伸ばしてお茶をすすると簡潔に告げる。
そもそも、リリとの二人部屋を嫌がったこいつにどうして譲歩しなければいけないのか。
「別にお主らを離れ離れにするつもりは無いというのに。単純に部屋を入れ替えてくれたら良いのじゃ」
「何で二人で部屋使ってる俺達が狭い方の部屋に行かなきゃならないんだよ。頭腐ってんじゃねぇのか?」
「く、腐ってなどおらぬわ!」
思い当たる節でもあるのか自らの頭を両手で押さえた金髪に呆れた視線を向ける俺の隣に、戻ってきたリリが腰を下ろす。
「何? 何の話?」
「ああ。なんかこの馬鹿が部屋交換してくれって」
テーブルに茶碗を置いて金髪を見つめた後、俺に視線を戻すとリリはコテンと首を傾げた。
「何で?」
「知るか。どうせいつもの我が儘だよ」
「そっか。じゃー、しょうがないね」
「ああ。しょうがないんだ」
「何故今の説明で納得する!? 理不尽じゃ!」
土曜の朝っぱらからクソガキの我が儘を聞かされるこっちの方が余程理不尽だよ。
取り敢えず、不本意ながら三人で始まった生活の最初の休日はこうして始まった。
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