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遠距離

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『メアリーさん、昨日は何をしましたか』
『昨日は、言葉のお勉強をしたあと、おばあさまとオチヤを飲みました』
『お茶ですね』
『はい、お茶を飲みました』


花嫁修業と共に、東国語の授業が加わり忙しい日々が続いており、時が一日一日と過ぎていく。東国語の先生は厳しく、毎日百語覚えなさいと言うので寝る暇もない。勉強が終わり、予習をしているとターニャが部屋にやってくる。


「メアリー、リチャードさんからお手紙が届いたわよ」
「本当に!?」


東国は高速船技術が栄えており、東国との国交が活発化されてからその船も提供され、手紙も一週間で届くようになった。(リチャードが郵送会社に割安で高速船を貸す契約を取り付けたのだ)


なので一ヶ月に二回程リチャードと手紙の交換をしている。メアリーは前回手紙は全て東国語で書いたので、ちゃんと読めてくれているかと心配になっていた。


『愛するメアリーへ


東国語がとても上手になっていて、驚いたよ。本当にメアリーが一人で書いたのかと一瞬疑った。でもまあ、あんな文章は人に見せれないだろうから、信じるしかなかったけれどね』


メアリーはリチャードに『忙しいけどリチャードを思っていつも体を触っています』と書いていた。誰かに見られるかもしれないと思ったが、夫婦になるのだし問題ないだろう。


『それを読んだとき、メアリーのあの日見せてくれた自分で弄っているメアリーを思い出して、何回も出しちゃったよ。今は少し冷静になってこの手紙を書いています』


(パパ・・・パパも我慢してくれてるんだね)


『こちらも毎日忙しい日々を過ごしています。皇帝に領地を無理やり押し付けられた・・・って言ったら怒られるね。結構大きな領地を統治するように言われているので大変です。メアリーとの新居がやっとできて、先に入居しています。今までより賑やかになりそうだよ。私は二人きりの生活が一番好きだったけど、しょうがないね。あ、少し言葉が難しかったかな。』


メアリーは分からなかった単語を調べながら読み進めていった。


『メアリー、愛してるよ。早く会いたいです。もうあと一ヶ月くらいで会えると思うと楽しみだ。それまで元気にしているんだよ───リチャードより

P.S.二人の寝室はとても広くて今一人で寂しいです。早くメアリーを抱きしめながら寝たいな』



メアリーは手紙を胸に抱え、机にそれを閉まっては再び取り出し何度も読んだ。東国語や花嫁修業も断然やる気が出てメアリーは明日も頑張れると思った。



(私も、早く、早く会いたいな・・・)
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