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迎え
しおりを挟む「パ、パパ・・・?」
目の前にはメアリーが毎日毎日求めて止まなかったリチャードが拳を握ってランディ侯爵に馬乗りになっていた。リチャードがランディ侯爵を殴ったのであろう。リチャードは更にもう一発殴りかっている。
「グフッ、お前、誰だ・・・」
音楽が消え、ザワザワと騒動を聞き付けた来賓たちが庭にやってきた。
「まぁ!!リチャード・・・あなたまだメアリーを諦めずに!!」
ターニャが急いで駆けつけた。他の者もリチャードの存在に気がつき視線が集中する。
『あの人、男爵位を捨てて、逃げたんじゃなかったっけ』
『私は何か犯罪を犯して国王に弾圧されたって聞いたわ』
ランディ侯爵は立ちあがり、リチャードに向かった。
「ああ、あなたがメアリーの養父ですか・・・聞きましたよ、平民の賤しい男だとね」
二人は殴り合いをしようと構えていた。二人ともとことんやり合う気だ。
──ザッ
『やめないか・・・』
年のいった、威厳のある男が二人の間に入った。彼の凄まじいオーラに皆圧倒されており、ランディ侯爵も固まっている。
「なんだ、この騒ぎは・・・皇帝も、どうされたんですか」
国王も騒ぎを聞き付けこちらに向かってくる。多くの警備員たちがピリピリと警戒をしている。
「国王陛下・・・この男が、私の婚約者となる娘を連れ去ろうとしていて、私がそれを止めに入ったのです!!」
ランディ侯爵はいけしゃあしゃあと嘘を並べ立てた。
「それは本当か?メアリー」
「ち、ちがいます・・・」
「陛下、この平民の男に脅されているんですよ、彼女は・・・先ほども彼女に暴行を加えていましたから」
ランディ侯爵はどうしても罪をリチャードに擦り付けたいようだ。
「こんな平民の男より、歴史のある侯爵家
のこの私の方が断然信憑性はあるでしょう、陛下!!」
すると東国の皇帝が怒りの表情で前に出た。
『くだらない・・・東国の歴史と比べれば、他の国は赤子と同じである。それに私はこの男が彼女を蹴り上げるところを見たぞ』
皇帝の通訳が彼の言葉を訳していく。ランディ侯爵の顔がみるみるうちに青くなっていく。皇帝はリチャードの肩を持ち、衝撃の一言を加えた。
『そうだ、紹介しておこう。こちらリチャード・セイレン。私の孫である』
──ザワザワ──
「なっ・・・」
「お久しぶりです、皆さん。私に関して何かと噂が回っていたようですが・・・皇族として認めてもらいに行ってたんです。これからはリチャード・セイレンとしてお見知りおきを」
(パ、パパが・・・皇族・・・!?)
東国はこの世界で一番の歴史を持ち、巨大な土地や財力を持っている。他の国全てが集まって東国に戦争を持ちかけても負けてしまう軍事力も持っているのだ。
「メアリー・・・ごめん。待たせたね」
「パ、パ・・・本当に・・・パパなの?」
「ああ、本当だよ。ああ、可哀想に・・・こんなに痩せてしまって・・・」
メアリーはリチャードの胸元にしがみついた。リチャードも優しくメアリーを抱き締める。
「リチャード・・・久しぶりだな」
「お久しぶりです、陛下」
国王は全て見透かしていたかのように頷いた。もしかすると国王だけはリチャードのことを全て知っていたのかもしれないとメアリーは想像する。
「ターニャさん・・・」
「ひっ・・・な、なんですか」
リチャードはターニャに向き合った。リチャードの顔は真剣だ。
「メアリーと・・・結婚するお許しをください・・・」
「っ・・・」
ターニャは突然のことに驚いているようだ。何と言えばよいのか口をハクハクとさせている。
「ターニャ叔母さん、あなたの基準で言えば、彼はかなりの優良物件ですよ」
国王が一言添える。すると横から皇帝も進言する。
『私の孫では、何か不足かな、ミス』
ターニャは皇帝からの言葉に恐れ入り、「メアリーが、それで良いのであれば許します」と言って腰を抜かして会場を去った。
「メアリー・・・結婚してくれるかい?」
「・・・はい、パ・・・リチャード。します。結婚・・・」
リチャードが懐から指輪を取り出した。その指輪はメアリーの指輪にピッタリと填まる。メアリーから一粒涙がこぼれた。
「すごい・・・ぴったり」
「メアリーのことは何でも分かるからね」
リチャードはメアリーにキスをした。パチパチと国王が拍手を送り、一人、また一人と拍手が増えていく。割れるような拍手が巻き起こり、その拍手はなり止まなかった。
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