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可愛い娘③~sideリチャード~
しおりを挟む「パパ、大丈夫?」
「ああ、メアリー。メアリーさえいればパパはとっても幸せだよ」
「メアリーも、パパがいてくれたら幸せだよ」
メアリーはあまり母から愛情を受けていなかったのだろう、シスリーは家に殆どおらず、夜のパーティーに毎日のように参加していた。彼女は昼間は家庭教師より勉強を受けていたのだが、午後はいつも一人きりであるのに文句一つも言わない。
「メアリー、ママが夜いなくて寂しくないのかい?」
「ううん、メアリーは良い子だから一人で大丈夫」
母から毎晩「あなた良い子だから一人でも平気ね」と言い聞かせて出掛けているようで、彼女の年齢にしては従順すぎる子供であった。
(こんな小さな子供が、一人で良い訳ないだろう・・・)
リチャードはどれだけ忙しくとも彼女と朝食と晩餐は必ず一緒に取るようにした。シスリーは昼に起きて夜出掛ける生活が続いているので週に一、二度一緒に食事を取るくらいである。
「明日の勉強の予習してるのかい?偉いね、メアリー」
「へへ、ありがと」
リチャードが少しメアリーを褒めるだけで、「褒められたの始めて」と恥ずかしそうに頬を染めていた。彼女の様々な人生での始めてをリチャード自ら与えたいがために、休日は彼女に時間を使うことが増えた。
「パパ、トマトの実ができてる」
「本当だね、メアリーが大事に育ててあげたからだね」
リチャードはメアリーに貴族が習わないようなことも教えてあげた。今から貴族と平民が平等に生きる時代へと移っていくであろう。彼女には何でも教えてあげたかった。そんな中、シスリーは愛人が出来たのか家に戻らない日が増えた。メアリーは思春期を迎え、まるで薔薇の蕾のように美しくなっていく。そんな彼女の成長をしっかりと見守ってあげないシスリーに不満を持ち、何度も話し合おうとするもかわされてしまい、今日も彼女は出掛けてしまった。
「旦那様!!奥様がっ・・・!!」
シスリーは愛人との旅行先へ向かう道中であっけなく死んでしまった。彼女と結婚して愛そうと努力をしていたのだが、無駄に終わってしまったようだ。
「私、パパと一緒がいい。どこも行きたくない」
彼女は娘とはいえ血は全く繋がっていない。彼女の親族に預けることも考えたが、メアリーがそれを望まなかった。
「リチャード・・・まさかうちの従姉妹が君にそこまで迷惑をかけていたとは知らなかった・・・本当にすまなかった。何をして償えばよいか・・・」
「顔を上げてください、陛下・・・」
平民であったリチャードに、血縁者であり、美しい従姉妹を宛がった国王の気持ちを無下にできず何も言わなかったリチャードも悪かったのである。国王を責める気には一切なれなかった。
「では是非ともメアリーの親権を私に・・・それで私は満足でございますので」
「わかった・・・君には、感謝しかない・・・メアリーも宜しく頼んだぞ」
「はい、陛下」
国王の支援を断り、リチャードは借金を返していった。シスリーの夜遊びや無駄遣いを制御できなかったのはリチャードが強く彼女に言えなかったからだ。リチャードは文句ひとつ言わず、借金を返していった。
(メアリーは私が守らなければ・・・)
リチャードにはメアリーしかいない。そしてメアリーにもリチャードしかいないのだ。
(彼女のためなら何だってしよう)
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