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婚約
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「お待ちしておりました。どうぞ、こちらに」
サイラスは彼の屋敷にヴァルモントとジュリアを招いた。ここで三人の話し合いが行われることになった。ヴァルモントはセバスチャンに上着を預け、ズンズンと中に入っていった。
「本日はジュリア殿との結婚をお許しいただきたく思っております」
「・・・そのようだな」
ヴァルモントはあれから少し冷静になったようでまだ物は壊れていないようだ。
「お前のようなひよっこに、こいつが守れるのか」
「確かにヴァルモント様程の拳はありませんが、この命を賭けて守る覚悟はあります」
ヴァルモントはサイラスに睨みをきかせたままだ。殺気ともとれる覇気にサイラスは怯まずその目を反らさなかった。
「ジュリアは平民だ。反対する奴は必ず出てくるぞ」
「時間がかかっても戦う覚悟はあります」
ビリビリと緊張感漂う空気が続いていたのだが、思ってもいなかった誰かの声でフッと空気が変わる。
「あらあら、そんなことをしなくても大丈夫だってあなたも、分かっているでしょ。そんな威圧して苛めないであげてちょうだいな。そこに覇気にやられて失神してる使用人の方もおりますわよ」
「お母様・・・??」
そこに立っているのはジュリアの母であるエウドラであった。その後ろからフランソワが現れる。
「ジュリアお姉さま、お久しぶりですわー!!先ほど王城の前でお姉さまの母とおっしゃる方にお会いしたのでここに連れてきてあげましたわよ、ってあれ?あなた、怪力のヴァルにそっくりね・・・」
(??)
フランソワはヴァルモントを見て驚いている様子だ。
「怪力のヴァルと言いますと、グアテル国の英雄で、伯爵のあのヴァルですよ・・・ね」
サイラスはその名に聞き覚えがあった。海に面しているグアテル国に海の魔物と呼ばれるカリュブディスが現れ、市民に襲いかかった。大勢の人が恐怖に怯えたのだが、通りすがりの大男がそのカリュブディスを金棒で殴り飛ばし、その魔物は逃げていってしまったそうだ。国王はその大男を称え、爵位も与えたのだが、その後彼は行方不明となり消息が途絶えている。
「その男が、ヴァルモント様だということですか」
「ええ、だって私、この方の写真を何度も見ているのだもの。大きな体に額の傷。こんな特徴的な男性いないでしょ?」
サイラスは信じられないといった様子だ。
「その身分はグアテル国を出たときには捨てちまったよ。今はただの農家ヴァルモントだ」
「ってことは、本物!?グアテル国も必死にあなたを探していましたのよ!!まさかこの国で農家をしてるなんて予想外ですわ」
フランソワは感激した様子だ。怒涛の展開にジュリアは頭痛がした。
「そんなことはよくってよ。それよりジュリア、あなたにも素敵な方が現れたようね。私にも紹介してちょうだい」
エウドラがジュリアとサイラスを見て微笑んだ。
サイラスは彼の屋敷にヴァルモントとジュリアを招いた。ここで三人の話し合いが行われることになった。ヴァルモントはセバスチャンに上着を預け、ズンズンと中に入っていった。
「本日はジュリア殿との結婚をお許しいただきたく思っております」
「・・・そのようだな」
ヴァルモントはあれから少し冷静になったようでまだ物は壊れていないようだ。
「お前のようなひよっこに、こいつが守れるのか」
「確かにヴァルモント様程の拳はありませんが、この命を賭けて守る覚悟はあります」
ヴァルモントはサイラスに睨みをきかせたままだ。殺気ともとれる覇気にサイラスは怯まずその目を反らさなかった。
「ジュリアは平民だ。反対する奴は必ず出てくるぞ」
「時間がかかっても戦う覚悟はあります」
ビリビリと緊張感漂う空気が続いていたのだが、思ってもいなかった誰かの声でフッと空気が変わる。
「あらあら、そんなことをしなくても大丈夫だってあなたも、分かっているでしょ。そんな威圧して苛めないであげてちょうだいな。そこに覇気にやられて失神してる使用人の方もおりますわよ」
「お母様・・・??」
そこに立っているのはジュリアの母であるエウドラであった。その後ろからフランソワが現れる。
「ジュリアお姉さま、お久しぶりですわー!!先ほど王城の前でお姉さまの母とおっしゃる方にお会いしたのでここに連れてきてあげましたわよ、ってあれ?あなた、怪力のヴァルにそっくりね・・・」
(??)
フランソワはヴァルモントを見て驚いている様子だ。
「怪力のヴァルと言いますと、グアテル国の英雄で、伯爵のあのヴァルですよ・・・ね」
サイラスはその名に聞き覚えがあった。海に面しているグアテル国に海の魔物と呼ばれるカリュブディスが現れ、市民に襲いかかった。大勢の人が恐怖に怯えたのだが、通りすがりの大男がそのカリュブディスを金棒で殴り飛ばし、その魔物は逃げていってしまったそうだ。国王はその大男を称え、爵位も与えたのだが、その後彼は行方不明となり消息が途絶えている。
「その男が、ヴァルモント様だということですか」
「ええ、だって私、この方の写真を何度も見ているのだもの。大きな体に額の傷。こんな特徴的な男性いないでしょ?」
サイラスは信じられないといった様子だ。
「その身分はグアテル国を出たときには捨てちまったよ。今はただの農家ヴァルモントだ」
「ってことは、本物!?グアテル国も必死にあなたを探していましたのよ!!まさかこの国で農家をしてるなんて予想外ですわ」
フランソワは感激した様子だ。怒涛の展開にジュリアは頭痛がした。
「そんなことはよくってよ。それよりジュリア、あなたにも素敵な方が現れたようね。私にも紹介してちょうだい」
エウドラがジュリアとサイラスを見て微笑んだ。
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