43 / 51
未来へ
しおりを挟む
「ジュリア殿、お待たせいたしました。今から少し階段を昇りますが、大丈夫ですか?」
「は、はい」
上着を羽織ったジュリアはサイラスにより東の棟に導びかれていた。東の棟は現在ほとんど使われておらず侵入禁止なのであるが、サイラスはガチャリと鍵を開けた。
「ここには国王が小さい頃訪れていた隠れ家みたいな場所だったそうです。まだ第三王子で肩身が狭く王城に慣れなかった頃よくここに来ていたそうですよ。今日は特別に鍵を貸していただきました」
「そうなんですか・・・」
ジュリアは一歩一歩螺旋状の階段をのぼり、とうとう頂上の部屋へとたどり着いた。
「わぁぁぁ、綺麗!!」
その部屋のベランダに出ると、王都全体が見渡せる壮大な景色がジュリアの目の前に広がった。ところどころ街灯がキラキラと光っており、星も輝いている。
「凄い、こんな景色見たのはじめてです」
「喜んでいただけて良かったです」
「あの街灯は、サイラス様がご提案されたものですよね。あれで夜道を歩くのが大分安全になり夜中の犯罪も減少しましたよね、あっ、あそこは王都美術館ですね」
ジュリアはベランダの柵に手をのせ、キョロキョロと辺りを見渡す。
「ご、ごめんなさい。素敵な場所すぎて少し興奮してしまいました」
「いえ、こちらこそここを選んで良かったです」
サイラスはジュリアの横にすっと立つ。サイラスの真剣な眼差しに空気がピリリと引き締まった。ジュリアも畏まる。
「・・・ジュリア殿に出会い、私も人を愛することができるのだと気づくことができました。あなたが心から信頼するフィンやウルフ、ローズ様にでさえ嫉妬してしまう小さい男です・・・」
「サイラス様・・・」
サイラスはごそごそと胸ポケットから小さな箱を取り出した。それをパカリと開けると、サイラスが以前ジュリアにプレゼントしてくれたネックレスと同じダイヤが大きくあしらわれた指輪が現れた。
「ジュリア殿、私はあなたを愛しています。一生あなたと添い遂げたい」
サイラスはジュリアの前に床の汚れも気にせず膝まずいた。サイラスの焦がれるような瞳に胸が高鳴る。
「結婚してください、ジュリア殿」
ジュリアの瞳からポロリと一筋の涙が零れた。
(忙しいはずなのに、私のためにこんなに素敵な場所手配してくれたんだ・・・)
最高にロマンチックなプロポーズにジュリアは
サイラスに再び胸がときめいた。
(でも、私なんかとサイラス様が結婚するなんて常識的に無理・・・)
「・・・私、体にまだ少し傷が残っていて、消えないかもしれません」
「そんな傷でさえジュリア殿の一部であれば慈しみましょう」
「私、平民で・・・」
「数年前より貴族と平民の結婚も認められるように法改正済みです」
「それでも、まだ反対する人はたくさん・・・」
「私が全て黙らせましょう」
(うっ・・・すごく魅力的なお願いだけど・・・私なんかで本当に良いのかしら)
「ジュリア殿、お願いです、YES と言ってください」
「・・・っ」
サイラスの嘆願する甘い声がジュリアの心に響く。
(でも、サイラス様とならなんでも乗り越えられる気がする・・・)
「・・・は、はい。こちらこそ宜しくお願いしますっ・・・」
サイラスはガバッとジュリアに抱きついた。ジュリアもサイラスにしがみつく。
「サイラス様、愛してます」
ジュリアは背伸びをしてサイラスの唇にキスをした。あどけないキスにサイラスはキスを返した。
キラキラと輝く王都は、まるでジュリアとサイラスを祝福しているようだった。淡い光は、いつまでも寄り添う二人を映し出していた。
「は、はい」
上着を羽織ったジュリアはサイラスにより東の棟に導びかれていた。東の棟は現在ほとんど使われておらず侵入禁止なのであるが、サイラスはガチャリと鍵を開けた。
「ここには国王が小さい頃訪れていた隠れ家みたいな場所だったそうです。まだ第三王子で肩身が狭く王城に慣れなかった頃よくここに来ていたそうですよ。今日は特別に鍵を貸していただきました」
「そうなんですか・・・」
ジュリアは一歩一歩螺旋状の階段をのぼり、とうとう頂上の部屋へとたどり着いた。
「わぁぁぁ、綺麗!!」
その部屋のベランダに出ると、王都全体が見渡せる壮大な景色がジュリアの目の前に広がった。ところどころ街灯がキラキラと光っており、星も輝いている。
「凄い、こんな景色見たのはじめてです」
「喜んでいただけて良かったです」
「あの街灯は、サイラス様がご提案されたものですよね。あれで夜道を歩くのが大分安全になり夜中の犯罪も減少しましたよね、あっ、あそこは王都美術館ですね」
ジュリアはベランダの柵に手をのせ、キョロキョロと辺りを見渡す。
「ご、ごめんなさい。素敵な場所すぎて少し興奮してしまいました」
「いえ、こちらこそここを選んで良かったです」
サイラスはジュリアの横にすっと立つ。サイラスの真剣な眼差しに空気がピリリと引き締まった。ジュリアも畏まる。
「・・・ジュリア殿に出会い、私も人を愛することができるのだと気づくことができました。あなたが心から信頼するフィンやウルフ、ローズ様にでさえ嫉妬してしまう小さい男です・・・」
「サイラス様・・・」
サイラスはごそごそと胸ポケットから小さな箱を取り出した。それをパカリと開けると、サイラスが以前ジュリアにプレゼントしてくれたネックレスと同じダイヤが大きくあしらわれた指輪が現れた。
「ジュリア殿、私はあなたを愛しています。一生あなたと添い遂げたい」
サイラスはジュリアの前に床の汚れも気にせず膝まずいた。サイラスの焦がれるような瞳に胸が高鳴る。
「結婚してください、ジュリア殿」
ジュリアの瞳からポロリと一筋の涙が零れた。
(忙しいはずなのに、私のためにこんなに素敵な場所手配してくれたんだ・・・)
最高にロマンチックなプロポーズにジュリアは
サイラスに再び胸がときめいた。
(でも、私なんかとサイラス様が結婚するなんて常識的に無理・・・)
「・・・私、体にまだ少し傷が残っていて、消えないかもしれません」
「そんな傷でさえジュリア殿の一部であれば慈しみましょう」
「私、平民で・・・」
「数年前より貴族と平民の結婚も認められるように法改正済みです」
「それでも、まだ反対する人はたくさん・・・」
「私が全て黙らせましょう」
(うっ・・・すごく魅力的なお願いだけど・・・私なんかで本当に良いのかしら)
「ジュリア殿、お願いです、YES と言ってください」
「・・・っ」
サイラスの嘆願する甘い声がジュリアの心に響く。
(でも、サイラス様とならなんでも乗り越えられる気がする・・・)
「・・・は、はい。こちらこそ宜しくお願いしますっ・・・」
サイラスはガバッとジュリアに抱きついた。ジュリアもサイラスにしがみつく。
「サイラス様、愛してます」
ジュリアは背伸びをしてサイラスの唇にキスをした。あどけないキスにサイラスはキスを返した。
キラキラと輝く王都は、まるでジュリアとサイラスを祝福しているようだった。淡い光は、いつまでも寄り添う二人を映し出していた。
14
お気に入りに追加
2,695
あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
年下騎士は生意気で
乙女田スミレ
恋愛
──ずっと、こうしたかった──
女騎士のアイリーネが半年の静養を経て隊に復帰すると、負けん気は人一倍だが子供っぽさの残る後輩だったフィンは精悍な若者へと変貌し、同等の立場である小隊長に昇進していた。
フィンはかつての上官であるアイリーネを「おまえ」呼ばわりし、二人は事あるごとにぶつかり合う。そんなある日、小隊長たちに密命が下され、アイリーネとフィンは一緒に旅することになり……。
☆毎週火曜日か金曜日、もしくはその両日に更新予定です。(※PC交換作業のため、四月第二週はお休みします。第三週中には再開予定ですので、よろしくお願いいたします。(2020年4月6日))
☆表紙は庭嶋アオイさん(お城めぐり大好き)ご提供です。
☆エブリスタにも掲載を始めました。(2021年9月21日)

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる