イケボな宰相と逃げる女騎士

ほのじー

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未来へ

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「ジュリア殿、お待たせいたしました。今から少し階段を昇りますが、大丈夫ですか?」
「は、はい」


上着を羽織ったジュリアはサイラスにより東の棟に導びかれていた。東の棟は現在ほとんど使われておらず侵入禁止なのであるが、サイラスはガチャリと鍵を開けた。


「ここには国王が小さい頃訪れていた隠れ家みたいな場所だったそうです。まだ第三王子で肩身が狭く王城に慣れなかった頃よくここに来ていたそうですよ。今日は特別に鍵を貸していただきました」
「そうなんですか・・・」


ジュリアは一歩一歩螺旋状の階段をのぼり、とうとう頂上の部屋へとたどり着いた。


「わぁぁぁ、綺麗!!」


その部屋のベランダに出ると、王都全体が見渡せる壮大な景色がジュリアの目の前に広がった。ところどころ街灯がキラキラと光っており、星も輝いている。


「凄い、こんな景色見たのはじめてです」
「喜んでいただけて良かったです」
「あの街灯は、サイラス様がご提案されたものですよね。あれで夜道を歩くのが大分安全になり夜中の犯罪も減少しましたよね、あっ、あそこは王都美術館ですね」

ジュリアはベランダの柵に手をのせ、キョロキョロと辺りを見渡す。


「ご、ごめんなさい。素敵な場所すぎて少し興奮してしまいました」
「いえ、こちらこそここを選んで良かったです」


サイラスはジュリアの横にすっと立つ。サイラスの真剣な眼差しに空気がピリリと引き締まった。ジュリアも畏まる。


「・・・ジュリア殿に出会い、私も人を愛することができるのだと気づくことができました。あなたが心から信頼するフィンやウルフ、ローズ様にでさえ嫉妬してしまう小さい男です・・・」
「サイラス様・・・」


サイラスはごそごそと胸ポケットから小さな箱を取り出した。それをパカリと開けると、サイラスが以前ジュリアにプレゼントしてくれたネックレスと同じダイヤが大きくあしらわれた指輪が現れた。


「ジュリア殿、私はあなたを愛しています。一生あなたと添い遂げたい」


サイラスはジュリアの前に床の汚れも気にせず膝まずいた。サイラスの焦がれるような瞳に胸が高鳴る。


「結婚してください、ジュリア殿」



ジュリアの瞳からポロリと一筋の涙が零れた。



(忙しいはずなのに、私のためにこんなに素敵な場所手配してくれたんだ・・・)


最高にロマンチックなプロポーズにジュリアは
サイラスに再び胸がときめいた。


(でも、私なんかとサイラス様が結婚するなんて常識的に無理・・・)


「・・・私、体にまだ少し傷が残っていて、消えないかもしれません」
「そんな傷でさえジュリア殿の一部であれば慈しみましょう」
「私、平民で・・・」
「数年前より貴族と平民の結婚も認められるように法改正済みです」
「それでも、まだ反対する人はたくさん・・・」
「私が全て黙らせましょう」


(うっ・・・すごく魅力的なお願いだけど・・・私なんかで本当に良いのかしら)


「ジュリア殿、お願いです、YES と言ってください」
「・・・っ」


サイラスの嘆願する甘い声がジュリアの心に響く。


(でも、サイラス様とならなんでも乗り越えられる気がする・・・)



「・・・は、はい。こちらこそ宜しくお願いしますっ・・・」


サイラスはガバッとジュリアに抱きついた。ジュリアもサイラスにしがみつく。


「サイラス様、愛してます」


ジュリアは背伸びをしてサイラスの唇にキスをした。あどけないキスにサイラスはキスを返した。


キラキラと輝く王都は、まるでジュリアとサイラスを祝福しているようだった。淡い光は、いつまでも寄り添う二人を映し出していた。






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