上 下
41 / 51

休暇のおわり

しおりを挟む
サイラスが夜早く帰ってくるようになり、ジュリアの傷も日に日に消えていった。皮膚が引きつったような感覚が残るも、運動しても痛みはない。毎晩サイラスにキスを浴びせらて幸せな時間を過ごしていたが(なぜか毎日食器が割れるようになった)、もうすぐそれも終わる。


「明日から頑張ってきます」
「くれぐれも無理してはいけませんよ」


ジュリアの復帰が決まった。体が本調子に戻るまで事務仕事を一ヶ月間して、現場に戻る予定だ。


「セバスチャンさん、マーサさん、リリアちゃん。今まで本当にありがとうございました。他の使用人の方たちにもお伝えください」
「もっといてくださって良かったのに・・・一同またいつでも歓迎致しますからね」
「はい・・・またお邪魔させてもらいます」


ジュリアはサイラスにも引き留められたもののこれ以上お世話になるのは心苦しかったのでお断りした。


(なんだか寂しいけれど・・・)


サイラスは思った程寂しそうにはしてくれなかった。こう思う存分のはジュリアだけであろうか。ジュリアは後ろ髪を引かれながら、屋敷を後にした。


+++


「おおジュリア、元気そうで良かった」
「ジュリアちゃん、おかえりー!!」
「ただいま戻りました。ご心配おかけしてすみませんでした」


騎士団の皆が「おかえり」と言ってくれてジュリアも嬉しく思った。


「今日からまたお願いします!!」
「あー、意気込んでるとこ申し訳ないけど、事務作業は新人のマリオにやらせてるから人手が足りてるんだ。ジュリアには他の部署に手伝いってほしい」
「え?」


+++


「サイラス様、おっしゃられていた書類まとめ終わりました」
「ありがとう、ジュリア殿」


(うーん、なんだこの展開)


ジュリアが手伝いとして連れてこられたのはサイラスの事務室であった。そこでサイラスのアシスタント、イヴァンの下で一ヶ月間働くそうだ。イヴァンは今年二十歳のそばかすが特徴的な男爵家の三男坊だそうで、学生時代サイラスの次に優秀な成績を叩きだし卒業後すぐにサイラスの部下として働き二年になるそうだ。


「いやぁ、ジュリアさん助かります!物覚えも早いですしこちらの部署に引き抜きたいくらいです」
「いえ、イヴァンさんの指導が分かりやすくやり易かったので。ありがとうございます」


ジュリアは一日仕事を終え、サイラスに帰ることを伝えた。


「どうでしたか、体に負担になってませんか」
「ええ、少し疲れましたが大丈夫です」
「不調を感じたらすぐに仰ってくださいね」


サイラスはジュリアのことをとても優しく気遣った。イヴァンはいつの間にか部屋から出ているようだ。


「家に帰ってもあなたがいないなんて寂しいです・・・」
「私もです・・・」


サイラスはジュリアを抱きしめ額にキスをした。物足りなさを感じるも、ジュリアは一ヶ月お世話になる職場を後にした。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

おばさんですが何か?

しゃもん
恋愛
前世はおばさん。今世はなんと黒髪黒目のかわいいイヤイヤ普通顔のお姫様。これだけ聞くとちょっぴりいいなと思うけど実際は”呪いの腕輪”が外れなくてそこから逃げ出そうとしても逃げ出せない囚われの姫なんです。なんとしても自由を手にするためにこれを外して見せる。腕輪を外すために奮闘するおばさんのお話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈 
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

最後の女

蒲公英
恋愛
若すぎる妻を娶ったおっさんと、おっさんに嫁いだ若すぎる妻。夫婦らしくなるまでを、あれこれと。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...