イケボな宰相と逃げる女騎士

ほのじー

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身代わり②

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※肌に関する差別表現があります。架空の病気です。気分を害される方はバックをお願いします。


時は今に戻る。



つかまえに来た黒装束の男たちはジュリアをフランソワと勘違いしているようだった。男たちはやっと捕まえることができたと安心したのかホッと息をついていた。それからジュリアは薬を嗅がされ眠ってしまったのだ。



(いったいどれくらい寝ていたんだろう)



そんなに多くは薬を嗅いでいないはずだ。数時間、もしくは半日・・・



「ほら、少しは食べないとこれから体が持たんぞ。この国の次期国王にお相手してもらえるんだからな」



(次期・・・国王?どういうこと?)



「ヴィクター様、こちらがフランソワ王女です」
「ああ、ご苦労だったな。俺が国王になった曉には褒美をたっぷりやろう」
「へぇ、ありがとうございます」



(ヴィクター・・・?)



顔上部を仮面で隠した男がジュリアの前に現れた。隠せていない口元や首が赤く焼けただれたようになっているので、全身がその状態になっているのだろう。


(ヴィクターって、まさか・・・)



「ああ、十代だって聞いたからガキかと思ったが、体は十分大人だなぁ。良かった」
「っ・・・」


男は仮面の下からジュリアの体を舐めるように見ている。


「なぜこんなこと・・・あなたは、現国王の兄でしょう?」


ヴィクターは元国王が亡くなる前、この国の第二王子であった。そして元国王や第一王子が亡くなった原因の流行病の被害者でもあったのだ。その病の原因は王都など高級街で流行っていたザシュールという食用肉で、それが突然変異を起こし、食べると皮膚が爛れ、免疫力を弱めた。ほとんどの人がそれにより死に至ってしまったのだ。


「俺は病に打ち勝ちやっと闘病生活を終えた。でももうあのシルベスターの野郎が国王になっていて俺の居場所はなかったんだ。順番的に俺が国王の筈なのにな。しかもシルベスターは侍女が産んだ子で純粋な血が入っていないくせに、だ」


ヴィクターはニヤリと笑った。


「あいつの時代ももうすぐ終わりだ。お前を犯して傷物にすればグアテル国の王妃が俺が国王になるのをバックアップしてくれると約束してくれた。そしたらグアテルの暗殺者がシルベスターの野郎も始末してくれるそうだ」



(グアテル国の王妃が・・・?)



確かグアテル国は一夫多妻制で、今の正妃はフランソワの母ではない。国の中でなにかいざこざがあったのだろうか。ジュリアはグアテル国についてもう少し勉強しとけばよかったと後悔した。


(幸いこの男はフランソワ様に会ったことがない)


「噂ではあの俺を地方に追いやった宰相と婚約するとか言ってたなぁ、もうあいつには抱かれたのか」
「っ・・・」
「存分に楽しませてくれよ、お姫様」



仮面の下で光るギラギラとした瞳をジュリアに向け、ジュリアにゆっくりと近づいた。



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