29 / 51
身代わり②
しおりを挟む
※肌に関する差別表現があります。架空の病気です。気分を害される方はバックをお願いします。
時は今に戻る。
つかまえに来た黒装束の男たちはジュリアをフランソワと勘違いしているようだった。男たちはやっと捕まえることができたと安心したのかホッと息をついていた。それからジュリアは薬を嗅がされ眠ってしまったのだ。
(いったいどれくらい寝ていたんだろう)
そんなに多くは薬を嗅いでいないはずだ。数時間、もしくは半日・・・
「ほら、少しは食べないとこれから体が持たんぞ。この国の次期国王にお相手してもらえるんだからな」
(次期・・・国王?どういうこと?)
「ヴィクター様、こちらがフランソワ王女です」
「ああ、ご苦労だったな。俺が国王になった曉には褒美をたっぷりやろう」
「へぇ、ありがとうございます」
(ヴィクター・・・?)
顔上部を仮面で隠した男がジュリアの前に現れた。隠せていない口元や首が赤く焼けただれたようになっているので、全身がその状態になっているのだろう。
(ヴィクターって、まさか・・・)
「ああ、十代だって聞いたからガキかと思ったが、体は十分大人だなぁ。良かった」
「っ・・・」
男は仮面の下からジュリアの体を舐めるように見ている。
「なぜこんなこと・・・あなたは、現国王の兄でしょう?」
ヴィクターは元国王が亡くなる前、この国の第二王子であった。そして元国王や第一王子が亡くなった原因の流行病の被害者でもあったのだ。その病の原因は王都など高級街で流行っていたザシュールという食用肉で、それが突然変異を起こし、食べると皮膚が爛れ、免疫力を弱めた。ほとんどの人がそれにより死に至ってしまったのだ。
「俺は病に打ち勝ちやっと闘病生活を終えた。でももうあのシルベスターの野郎が国王になっていて俺の居場所はなかったんだ。順番的に俺が国王の筈なのにな。しかもシルベスターは侍女が産んだ子で純粋な血が入っていないくせに、だ」
ヴィクターはニヤリと笑った。
「あいつの時代ももうすぐ終わりだ。お前を犯して傷物にすればグアテル国の王妃が俺が国王になるのをバックアップしてくれると約束してくれた。そしたらグアテルの暗殺者がシルベスターの野郎も始末してくれるそうだ」
(グアテル国の王妃が・・・?)
確かグアテル国は一夫多妻制で、今の正妃はフランソワの母ではない。国の中でなにかいざこざがあったのだろうか。ジュリアはグアテル国についてもう少し勉強しとけばよかったと後悔した。
(幸いこの男はフランソワ様に会ったことがない)
「噂ではあの俺を地方に追いやった宰相と婚約するとか言ってたなぁ、もうあいつには抱かれたのか」
「っ・・・」
「存分に楽しませてくれよ、お姫様」
仮面の下で光るギラギラとした瞳をジュリアに向け、ジュリアにゆっくりと近づいた。
時は今に戻る。
つかまえに来た黒装束の男たちはジュリアをフランソワと勘違いしているようだった。男たちはやっと捕まえることができたと安心したのかホッと息をついていた。それからジュリアは薬を嗅がされ眠ってしまったのだ。
(いったいどれくらい寝ていたんだろう)
そんなに多くは薬を嗅いでいないはずだ。数時間、もしくは半日・・・
「ほら、少しは食べないとこれから体が持たんぞ。この国の次期国王にお相手してもらえるんだからな」
(次期・・・国王?どういうこと?)
「ヴィクター様、こちらがフランソワ王女です」
「ああ、ご苦労だったな。俺が国王になった曉には褒美をたっぷりやろう」
「へぇ、ありがとうございます」
(ヴィクター・・・?)
顔上部を仮面で隠した男がジュリアの前に現れた。隠せていない口元や首が赤く焼けただれたようになっているので、全身がその状態になっているのだろう。
(ヴィクターって、まさか・・・)
「ああ、十代だって聞いたからガキかと思ったが、体は十分大人だなぁ。良かった」
「っ・・・」
男は仮面の下からジュリアの体を舐めるように見ている。
「なぜこんなこと・・・あなたは、現国王の兄でしょう?」
ヴィクターは元国王が亡くなる前、この国の第二王子であった。そして元国王や第一王子が亡くなった原因の流行病の被害者でもあったのだ。その病の原因は王都など高級街で流行っていたザシュールという食用肉で、それが突然変異を起こし、食べると皮膚が爛れ、免疫力を弱めた。ほとんどの人がそれにより死に至ってしまったのだ。
「俺は病に打ち勝ちやっと闘病生活を終えた。でももうあのシルベスターの野郎が国王になっていて俺の居場所はなかったんだ。順番的に俺が国王の筈なのにな。しかもシルベスターは侍女が産んだ子で純粋な血が入っていないくせに、だ」
ヴィクターはニヤリと笑った。
「あいつの時代ももうすぐ終わりだ。お前を犯して傷物にすればグアテル国の王妃が俺が国王になるのをバックアップしてくれると約束してくれた。そしたらグアテルの暗殺者がシルベスターの野郎も始末してくれるそうだ」
(グアテル国の王妃が・・・?)
確かグアテル国は一夫多妻制で、今の正妃はフランソワの母ではない。国の中でなにかいざこざがあったのだろうか。ジュリアはグアテル国についてもう少し勉強しとけばよかったと後悔した。
(幸いこの男はフランソワ様に会ったことがない)
「噂ではあの俺を地方に追いやった宰相と婚約するとか言ってたなぁ、もうあいつには抱かれたのか」
「っ・・・」
「存分に楽しませてくれよ、お姫様」
仮面の下で光るギラギラとした瞳をジュリアに向け、ジュリアにゆっくりと近づいた。
13
お気に入りに追加
2,695
あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
年下騎士は生意気で
乙女田スミレ
恋愛
──ずっと、こうしたかった──
女騎士のアイリーネが半年の静養を経て隊に復帰すると、負けん気は人一倍だが子供っぽさの残る後輩だったフィンは精悍な若者へと変貌し、同等の立場である小隊長に昇進していた。
フィンはかつての上官であるアイリーネを「おまえ」呼ばわりし、二人は事あるごとにぶつかり合う。そんなある日、小隊長たちに密命が下され、アイリーネとフィンは一緒に旅することになり……。
☆毎週火曜日か金曜日、もしくはその両日に更新予定です。(※PC交換作業のため、四月第二週はお休みします。第三週中には再開予定ですので、よろしくお願いいたします。(2020年4月6日))
☆表紙は庭嶋アオイさん(お城めぐり大好き)ご提供です。
☆エブリスタにも掲載を始めました。(2021年9月21日)

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる