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グアテル国の王女さま②

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(もう見てられない・・・)


今フランソワが劇場観賞に行くとなり護衛をしているのだが、フランソワがサイラスと行きたいと言い出したのでサイラスも同行することになった。そのせいでジュリアの目の前でイチャつかれるというなんともジュリアにとって拷問のような時間が過ぎていた。


「あ、りんご飴だわ。ねえサイラス覚えてる?私が泣いているときあなたがりんご飴を買ってなだめてくれたの」
「ええ、そんなこともありましたね」
「ふふふ、お礼に私がキスをしたときはあなたびっくりしてたわよね」


サイラスの横で腕を組んで歩いているフランソワはレースで隠れてはいるものの、マシュマロのように柔らかそうな胸をサイラスの腕に押し付けていた。


(ぐぅっ・・・)


ジュリアも胸は十分あるのだが、筋肉でマシュマロというよりかはゴムボールのようだと感じている。ジュリアは自分の体をチラリと見てさらに気を落とした。



(どこから観てもお似合いだなぁ)



大人な男性で威厳のあるサイラスに連れ添う色香があり自信たっぷりのフランソワはどこから見ても仲睦まじいカップルに見えた。ジュリアはできるだけ早くローズ付きの騎士に戻りたい。優しいローズである、戻ったときローズはジュリアの失恋を癒やしてくれるだろうとジュリアは考えた。



「今日はありがとう、サイラス。楽しかったわ」
「ええ、楽しんでいただけて何よりですフランソワ王女」


フランソワが部屋に戻るのにサイラスは見届けた。フランソワはぎゅっとサイラスの体に抱きついた。


──ツキン──


「フランソワ王女、軽率な行為はお慎みください」
「いいじゃない、どうせ結婚したらするんだから」


フランソワはふふんとジュリアの方を見た気がしたが、気のせいであろうか。地獄のような一日が終わり、ジュリアは部屋に戻っていった。




「ジュリアちゃ~ん、最近会わないからジュリアちゃん不足だよ」
「フィン副団長」


フランソワの護衛は第一騎士団の管轄ではなく、第二騎士団の仕事なので、ジュリアも最近は第一騎士団の事務室を訪れていない。ジュリアも第一騎士団が恋しくなってきた頃だった。ジュリアが廊下を歩いていると、フィンが向こう側から走ってきた。



『ふふふ、本当にこの国は薔薇が綺麗ね、サイラス』



耳のよいジュリアは遠くからフランソワの声を聞いた。


「っ・・・」


薔薇園からサイラスとフランソワが出てくる様子が見えた。薔薇園は、サイラスがジュリアに告白してくれた場所でもあり初キスをした場所でもあった。まだ開花していなかった薔薇も感傷に浸るジュリアのことは知らぬといったように目一杯咲き誇っている。


「あ・・・」


フィンもその二人の姿に気づいたようだ。夕陽が落ちてきていて日が逆行しているのだが、フランソワとサイラスの影がキスをしているように写った。


「ジュリア、ちゃん?」



ジュリアの目からホロリと涙が伝った。





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