上 下
7 / 51

悩み

しおりを挟む

「あれ、ジュリアちゃんも今日は非番?」
「あれ、フィン副団長。偶然ですね」


非番であるジュリアは王都に生活用品を買いに行っていた。そこで歩いていたジュリアは副団長のフィン・クラークとばったり出会ったのだ。少し着崩した白のシャツに黒のパンツ姿のフィンは相変わらず無駄に格好がよく道を通る女性がチラチラと彼を見ているようだ。


「副団長は王都で何してるんですか?」
「新しい剣仕入れたって鍛冶屋のおじちゃんからを連絡来たから見に行こうと思って。そうだ、ジュリアちゃんも一緒にくる?」
「うーん、それは魅力的ですけど、少し買い物があるんですよねぇ」
「じゃあ僕待ってるから先に終わらしてきちゃいなよ」

ジュリアは待たすことに多少罪悪感があったが、そんなに大きな買い物ではなかったのでお言葉に甘えて少し待ってもらった。



+++


「荷物まで持っていただくなんて、本当にありがとうございます」
「いいのいいの、外でレディに物を持たす方が僕の評判を下げるからね」


フィンは胡散臭いウインクをジュリアに投げかける。彼のナルシスト発言は今に始まった訳ではない。


「おじちゃん、来たよ~」
「おお、フィンの小僧か。お嬢ちゃんもいらっしゃい」

この義足をつけた老人は元国王の剣の師だったそうだ。彼は戦時中に右足を亡くしたのだが鍛冶屋として人生やり直すと言って王都に立派な鍛冶屋を作ったそうだ。評判は良く、今も騎士らしい体つきの人たちが何人も店内をうろついている。


(ん、なんだ?)


何やら外が騒がしい。ジュリアは外に出てみると可愛らしいジュリアと同年代くらいの女性が数人の男に絡まれていた。


「ねえちゃん、今ぶつかってきたよなぁ」
「す、すみません」
「肩の骨が折れちゃったかもなぁ。慰謝料、その体で払ってもらってもいいんだぜ」


その男が女性を路地裏に連れ込もうとしている。ジュリアは考える間もなく体がとっさに動いた。


──ガシッ──


ジュリアは男の肩を掴んだ。他の男たちもジュリアに気づいたようで男たちはジュリアを取り囲む。


「なんだぁ姉ちゃん、何か用か?」
「その女性、嫌がっているように見えますが」
「こいつが俺の肩にぶつかって来てよぉ、もう折れちまって慰謝料代わりにお相手してもらおうと思ってただけだよ」

女性はカラダを抱えプルプルと恐怖に怯えているようだ。

「私が見てあげましょう」
「はぁ?」


──グキィィ──


「いてぇぇぇええ!!!!」


ジュリアは男の肩を掴み、思い切り捻りあげた。

「うーん、肩は折れていないようですね」
「このアマ!!」


他の男たちがジュリアに飛びかかる。ジュリアは殴りかかる男たちを全て避け、叩きのめす。


「くそっ」


最後に残った男は小型ナイフを取り出し先ほどの女性の喉元に当てた。男は女性を人質のように抱え込み後退った。ジュリアは何もすることができない。他の倒れていた男たちも起き上がる。

「けっ、正義感の強いお嬢さんだなぁ。もう手もだせないか」
「その女性を離しなさい」


男がジュリアの腕を掴み紐でジュリアの手を縛る。


「よく見たらあんたも綺麗な顔してるじゃねえか、一緒に犯してやるよ」
「っ・・・」

女性を人質にとられてはジュリアも動くことはできない。縛られた紐をほどくのは容易いが、この人数を相手にする自信はない。


(どうすれば・・・)











しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈 
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

最後の女

蒲公英
恋愛
若すぎる妻を娶ったおっさんと、おっさんに嫁いだ若すぎる妻。夫婦らしくなるまでを、あれこれと。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

処理中です...